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私が天の川になれたなら。  作者: ぱなま
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語り≪ユリ≫

ウチの名前は将監ショウゲン ユリ17歳。身長161cm体重49kg。奈良県、明日香村に住む高校二年生。誕生日は8月29日。AB型。10歳の時に両親の事情で、神社の神主である遠い親戚のミチエおばあちゃんに引き取られ育てられたんよ。お父さんは転勤族やってん、福岡、熊本、広島、大阪、京都、奈良と、いろんなところに引っ越した。付いていくだけでもう大変大変!そのおかげでいろんなトコのしゃべり方に影響されちゃって自分でも何言ってるかわからんくなってしもて・・・ふふふ。子供の頃ってそういうのが揶揄からかわれるやん?転校した先々でいじめの対象よ。引き取られた後に通い始めた村の小学校でも同じ展開になりかけとった。けど、今度は違った。サオリちゃんとケンジがおってん。ウチがクラスの男子に囲まれて揶揄われてた時に、


「おまえらー!!初めてこの村に来た子にもっとやさしくできへんのかー!あたしにしばかれたいヤツはかかってこんかい!なんどいやー!」


ってサオリちゃんが。―――ケンジはどうしたって?ふふふ、隠れておったよ。サオリちゃんの後ろでね。でも小学生の中では人一倍大きい身体だったから、結構皆怖がってたんよ。いるだけで威圧感があるというか・・・。この頃って女の子のほうが成長早いからサオリちゃんもおっきく見えたんだけどケンジはもっとおっきかった。あの時の二人は頼もしかったなぁ。よー覚えとぉ。


「あなた、名前は?・・・・そう、ユリちゃんか!ええ名前やね!あたしはサオリ!後ろのでっかいのはケンジ!なぁなぁ、今日学校終わったら、あたしの家に来ぇへん?ユリちゃんいらっしゃいのお菓子パーティするんや!ケンジ?黙ってても来るからほっといてええねん。せやせや、じゃあ決まりやな!」


それからずーっと、一緒に遊んどった。いっつも三人で遊んどった。こうやって遊んでくれる友達は6、7歳の時。今住んでる神社に遊びに来てた兄妹だけやってん。そっちはそっちでちょっと恥ずかしい思い出なんやけど・・・。ふふふ。まぁ、それは置いといて、村はちっさい村かもしれんけど冒険するには時間が足りないくらい。飽きもせずに山や田んぼを駆け回った。中学校に入っても三人は一緒。まぁ、殆どの生徒は顔見知りみたいなもんなんやけどね。もちろんみんな少し大人になったのか、興味がなくなったのかはわからへんけど、ウチの事を揶揄ってくる人はおらんようになっとった。もしかしたらちっぽけな悩み事だったのかもしれん。けど、その悩み事があったおかげでウチは大切な出会いと思い出を貰ってん。今ではその辛かった思い出が全て心地のいい思い出に変換される。人間、本当に辛かった事でない限り楽しかった思い出しか残らないってたまに聞くんやけど、もしかしたらこれがそうなのかもしれんなぁ。そうそう、中学校と言えば、中学三年生になった年はウチの巫女さんデビューの年なんよ!ウチのおばあちゃんの神社で祀っている神様は織姫の星の神様。ベガって言う星なんやって。織姫って織物作っておったろ?だから毎年、着物を織って、それをウチの神様に見せて、今年も無事に他の神様にお届けする準備ができましたって、ウチがお願い事言いながら踊るんよ。シャンシャンシャン・・・って。だからこないだやったので三回目。ようやっと慣れてきたんよ!もちろん、サオリちゃんとケンジは毎回見に来てくれとーよ!他の友達に見られるのはちょっとまだ恥ずかしいから、ちょうどええんよ。


でも、こんな風に楽しく毎日過ごせればいいと思ってたんやけど、そうはいかなくなってしまった。ウチは昔からいろんなものが見えた。普通の説明ができないような事が出来た。なんていうんやろ、超能力?なんかなぁ。たぶん、今だから解かるんやけど、お父さんとお母さんがウチをここに預けた理由もその力がどんなものか、何のために使うのかを教えるためやったんやなって。あ、これはサオリちゃんにもケンジにも言ってへんよ?ここに来てからのおばあちゃんとの約束やったからね。誰にも力があるってことを話さないって。そしておばあちゃんは、八百万の神の話を教えてくれた。八百万の神って言うのはこの世界にあるもの全てに神様が宿るって考え方なんよね。なかなか途方もない話なんやけど。そんで、ウチの神社はもし神様同士が喧嘩したり、暴れ始めちゃったりしたときに止めに行かなきゃにけないって言い伝えがあるんやと。こーんな身勝手な言い伝えあると思う?笑ってしまうやん?ウチがいなかったらどうするんて話よ。でもそれをおばあちゃんに聞いたら、おばあちゃん昔はウチと同じような事が出来たんだって。うーん、それなら仕方ないよねって思ったんよ。ウチはきっとおばあちゃんから託された。大事なものを託された。そしてウチしかできないことがあるなら、ウチはそれをやるしかない。それがウチを迎えてくれたこの村への恩返しだから。


――――というわけでウチ、将監 閖はサオリちゃんとケンジ、おばあちゃんとタエコさんに見送られて、今、東京の渋谷にいる。




「行ってらっしゃい。ユリ。」



震えは止まった。



「早めに帰って来いよ。」



手は動く。



「お味噌汁作っておくわね。」



足も動く。



「ユリちゃん、・・・・行ってらっしゃい!気を付けてや!」



大事な約束がある。




「・・・・・こんにちは!今日はいい天気ね!ウチの名前は将監 閖。あなたを止めに来た!」



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