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9.勇者と戦うことになってしまいました

「今度はどこに隠れていやがるんだろうな、あのゴブリン達」

「本当、アイツら逃げ足早いし嫌らしいよな。ダージュさんの神技を避けてきやがるしさ」



 前に進んでいく人間達は何やら愚痴をこぼしているようだ。

 ダージュさんの神技とか言っているが、多分武闘家の勇者がダージュという名前なんだろうな。

 一応覚えておくか。



「そんな事言うなよ、二人とも。そのゴブリンさんのお陰で俺達は金稼ぎさせてもらってるんだからな」

「確かにそうなんですけど。ただ強いて言うならもうちょっと稼ぎ易いようにしてくれたらいいのにと思いまして」

「ゴブリンだって生き物だ。ゴブリンはゴブリンなりに生き延びる術を考えているのだろう」

「さすがはダージュさん! ゴブリン如きにも配慮する考え方、マジかっけぇッス!」



 三人の話を聞いている限り、メジナ達、つまりゴブリン達を三人が金稼ぎの道具として使っていることには間違いなさそうだ。

 三人ともなかなかゲスい事をやっているようだが、その中でもダージュという勇者はまだ良識はありそうか。

 ただ格好つけているだけかもしれないけど。



「もうそろそろゴブリン達がいる辺りですね。ダージュさん、そろそろ例の技、お願いするッス!」



 そう人間の一人が言うと、ダージュは何かブツブツと唱え始める。



「全てを我の前に示せ、千里眼!」



 その瞬間、俺はヒヤッと何かを感じた。

 見透かされているような、何か嫌な気分がする。



「そこにいるのは誰だ! 姿を現せ!」

「えっ、ダージュさん、そこに誰かいるんですか!?」

「誰もいないように見えますけど? でもダージュさんが言うなら間違いないでしょうし……」



 ダージュは俺とメジナがいる方向に向かってそう叫ぶ。

 やはり見透かされたか。

 千里眼という技名や、嫌な感覚がした事から何となくそうなるだろうとは思っていたが。


 勘違いであってくれないかなーと思いつつ、俺はそのまま動かずに待つのだが。



「言っても分からないか。ならば、力で分からせるまで! ふんっ!」



 ダージュは大剣を一振り。

 するとその剣が衝撃波となり、大地に亀裂を入れていく!

 って、これ、シャレになんねえぞ!?



「あうっ、これこそが村を二つに割った攻撃です! 不味いですよ!?」

「そんなのは分かってる! ”衝撃波”ー(うげきは)で”しょ”!」



 俺が衝撃波を対象にそう叫んだ瞬間、衝撃波は突如消え、代わりに一冊の本が現れて地面に落ちた。



「な、何をしたんですか、ライク様……?」



 その様子を見てポカーンとする人間三人とメジナ。


 しばし続く静寂。

 しかし、ちょっと時間が経つと、



「ハハハ、面白い。おい、そこの何者かは分からない奴、俺と正々堂々勝負しろ! 本当、なかなか面白いスキルを使ってくれる!」



 そう言って大剣をブンブン振り回すダージュ。

 大剣を振り回すたびにいくつも大地を割る衝撃波が発生する!


 ちょっ!?

 ふざけんじゃねーぞ!?

 このままじゃ大地が壊れるって!



 とりあえず大惨事にならないよう、俺は全ての衝撃波を本に変える。

 言葉を削る言葉魔法は使い放題なのが功を奏したな。


 全ての衝撃波を消した後、俺は意を決して透明箱をとり、ダージュの前に姿を現わした。



「フフフ、やはり大物がいたとは思っていたが、まさか魔王のおでましとはな! ふふっ、こんな所にいやがるとは。実に幸運な事だ」



 はいはい。

 こっちはとんでもない不運だよ。

 というかそもそも俺は魔王じゃないっつーの。

 俺を倒した所で何にもならないぞ?


 だがそんな心の叫びはダージュに届くはずもなく。



「手加減は無用だな。いくぞ!」



 猛スピードで襲いかかってくるダージュ。

 やる気満々だな、おい。

 そのテンションついていけないわー。

 ってなワケで。



「”店員”ー(ん)で”てんい”!」



 とりあえずおさらばさせていただきます、と。

 俺は遠くに転移してダージュの攻撃をかわす。

 遠くに転移しても尚、ダージュはすごい勢いで向かってくるので。



「”ストロー”ー(と)で”すろー”! ”ストロー”ー(と)で”すろー”! ”ストロー”ー(と)で”すろー”!」



 はい。

 動きを遅くする魔法を何度もダージュに当てました。

 そこから何度もスローを容赦なく当てていく俺。

 その結果……



「ライク様、この人、本当に生きているんですか?」

「ああ、よく見ろ。さっきよりもほんの少し素手が下がってるだろ?」

「なるほど。確かに少し位置が変わっているような……」



 ダージュは動いているのかよく分からないほど速度が遅くなってしまった。

 そんな哀れな姿になってしまったダージュを見た他の二人はどこかへ走り去ってしまう。

 仲間を見捨てるなんて酷い奴らだな。



「ふふっ、これまでの恨み、今こそ晴らすとき! とりゃ!」



 メジナは目一杯助走をつけてダージュに蹴りを入れた。

 だが微動だにしない。

 まあ遅くなったとはいえ、防御力とかは変わってないからメジナが敵う訳ないわな。



「ううっ、せっかくのチャンスなのに……悔しい! ささっ、ライク様! 私に変わって正義の鉄槌を!」



 いや、悪魔が正義の鉄槌を下すっておかしいだろ。

 そもそもこんな相手をいたぶる趣味はねえよ。


 それに下手にコイツと関わると王とかもう一人の勇者も出てきそうだし、あまり関わりたくないんだよな。

 とりあえずここから出ていってもらうとしよう。



「手+ポート+(れ)で”テレポート”!」



 俺はテレポートの魔法をダージュにかける。

 王の城をイメージしてテレポートの魔法を放ったから多分行き先は王の城になっていると思う。

 初心に帰れっていう意味も込めてそうしておいた。


 情けない勇者の姿を見れば、王や勇者達がより魔王を倒そうと努力するはずだ。

 その勢いで魔王を倒してもらわないとな。

 その間に俺は人間に戻ってのんびりしているからさ。

 魔王に勘違いされているのをうまく使わないと。


 言葉魔法自体で直接相手に作用出来ないけど、魔法として放つ分には問題ないからな。

 ちなみに魔法として放つ場合でも使っているのは言葉魔法に違いはないので魔力は消費しなさそうだ。

 精神的に疲れを感じることもないしな。


 とりあえず、これで危機は去っただろう。

 一件落着といったところだな。

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