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7.訪問者がやってきました

 別荘の中に入った俺は定番の家具を設置していく。

 今の体は大きいから山荘もちょっと大きめに作っておいた。

 そのおかげで狭くなくて快適だな。


 家具も少し大きめに作ることで使いやすくする。

 もちろん発電機なども作って文明の利器はしっかりと森の中でも使わせてもらう。


 こうしてソファーに寝っ転がりながらポテチやジュースを飲み食いして時間を潰すことにした。


 サタンが寝そべってダラダラしているなんて他の人からみたらさぞ異様な光景なんだろうな。

 でも俺は俺なんだからどんな姿になってもやる事は変わりないのだ。




 ……こうして特に何事もなく時間は過ぎ、夜になった。

 あれっ?

 ここって森の中じゃなかったっけ?

 魔物とか家の中に襲いかかってくるかもとか心の中で身構えていたんだが。

 どうも様子が変だな。



 トントントン。



 おっ、初めての訪問者か。

 それにしては礼儀正しいな。

 魔物とかだったら問答無用でぶち破ったりしてきそうなものなのに。

 こんな所にまさか人間がいるとも思えないしさ。


 俺はそっとドアを開けてみる、

 すると、そこには小さい鬼の女の子が立っていた。


 まさかの魔物の訪問者か。

 だとすると翻訳機が必要だな。

 翻訳機翻訳機っと。


 俺は翻訳機を取りに行こうとしたのだが。



「あっ、お待ち下さい、魔王様! お願いです。少しでもいいので、わたしのお話を聞いてくださいませんか?」



 あれ?

 言葉が普通に分かるぞ?

 もしかしてサタンになったことで今の俺って魔物の言葉も分かるようになっているのか?



「何なんだ、話って?」



 翻訳機が不要だと分かり、俺は鬼の方へと近付いていった。



「えっ、えっと……どうか私達の村を助けて欲しいのです。最近人間の冒険者に攻めこまれ気味で、このままでは……」



 人間の冒険者に攻め込まれる?

 別に人間と魔物が戦うなんて普通の事なんじゃないか?

 それに魔物の村のことなんだったらそこの管理者である魔王がするべき事だろう。



「そういう事なら魔王に頼め。俺は魔王じゃないから」

「どこからどう見ても魔王様なんですけど……あっ、無礼な事を失礼しました。えっと、では何とお呼びすれば?」



 鬼はもじもじしながらそう言った。

 意外と恥ずかしがり屋なのかな?



「そうだな、ライクと呼んでくれ。それが俺の名前だ」

「ライク様……魔王様の本名ってライク様と仰るのですね! これはスゴい事を聞きました」

「いや、だから俺は魔王じゃないっての。魔王じゃなくてただの人間だから。分かったか?」

「人間って……あなた様のどこが人間なんですか? 全身黒くて巨大な体をした人間なんて見た事がありませんよ?」



 そ、それは諸事情があってだな……

 って、この子にそんな事をいっても分かってくれる訳がないよな。

 果たしてどうしたものか。



「それより、どうして俺に頼みに来たんだ? 自分達で何とか出来ない程困っているのか?」

「はい。今までは何とか頑張ってやってきたのですが、ここ最近、異様に強い人間が現れまして……」

「異様に強い人間? どんな感じの奴なんだ?」

「何と言いますか……私達の攻撃が全く効かないのです。どんなに頑張って攻撃してもその者には傷一つつかなくて……そしてその者が剣を一振りしたら村は二つに割れました」



 剣を一振りしたら村が二つに割れるだと!?

 何だよそのチートな能力は。

 そんなの卑怯だろ。



「それで村のみんなはどうしたんだ?」

「みんな必死で逃げました。四方八方散り散りに。それでも人間の技によって命を落とした仲間も見かけました。それでもわたしは必死でひたすら逃げました……」



 まあそうなるか。

 その人間は恐らくただの魔物討伐目的で来ているんだろう。

 だけどそれって魔物視点で見るとなかなかえげつない事なのがよく分かるな。

 今まで魔物側で考えたことなかったけどさ。



「早くみんなに村に戻ってきてもらって一緒に暮らしたい。でもこのままじゃまたあの人間にやられてしまう。そこでライク様の出番という訳なんです」

「つまり、俺にその人間を倒せと言いたいのか?」

「そ、そうですね。そんなに強い人間に対抗できるのは魔王さ……ライク様位だと思うので」



 なるほどな。

 確かにサタンの力を持った俺ならばもしかしたらその人間に対抗できるかもしれない。

 だがな……



「すまない。やっぱり俺、力になれないわ、ゴメンな」

「ど、どうしてですか!? 魔王様なら必ずやあんな人間なんて……」

「いや、だって怖いじゃん? 剣一振りで村が真っ二つだぞ? そんな奴が相手じゃ命がいくつあっても足らないわ」



 命を大事にして生きないと。

 余計な事に首をつっこんで死ぬなんてなマネは嫌だからな。



「改めて言うが、俺は魔王じゃなくてただのビビリな人間なんだ。本当に村を助けたいなら本物の魔王様にお願いするといい」



 そう言って俺はゴロンと横になった。

 鬼がすすり泣く声が聞こえたが、聞かないように努める。


 だって死ぬのは怖いじゃん?

 俺、まだこの世界に来てそれほど経っていないんだぞ?

 せいぜい死ぬのはもっと世界を満喫してからにしたいわ。


 鬼が泣く声を聞いているとかわいそうになって助けようと思っちまうからな。

 そうしたら負けだ。

 俺はもっと長生きしたいのさ!







「本当ですか!? ありがとうございます!」



 朝が明けてもずっと粘り続ける鬼に俺は根負けした。

 まさか夜が明けるまでずっとお願いし続けられるなんて思わねえだろ、普通。



「助けにいくのはちょっと寝てからでもいいか? さすがに徹夜明けはちょっとな」

「はいっ! でも出来るだけ早くお願いしますね!」



 この鬼、演技してやがったな……?

 急に元気になった鬼の様子を恨めしげに見ながら俺は眠りについた。

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