39.精霊王の城に着きました
本日二話目。
「シラリィか。いつの間にここに来たんだ?」
「召喚主があの世界にいなくなれば、私達は自然とここに戻ることになりますから」
「そういえばそうだったな」
ゲームとか普通の召喚って、使用者の魔力が尽きるとできなくなるもんな。
召喚主が世界からいなくなれば、もちろん召喚獣もその世界にいられなくなるわけで。
俺の場合、召喚に魔力を使わないからその認識は薄かったけど。
「シラリィは精霊の王の居場所は分かるのか?」
「はい。ご案内致しましょうか?」
「ああ、よろしく頼む」
あまりよく分からない世界に長居したくもないからさっさと用件を済ませないとな。
俺はシラリィについて行って、精霊の王の元を目指す。
「ここが王のいる城です」
「うわっ、これは酷いな……」
シラリィに案内されてたどり着いた城(?)の近くまで到着した。
城というか廃墟だろ、これ。
この一帯はなぜか暗闇に包まれているし、肝心の建物は所々欠けている上、バラが建物の周囲に巻きつけている。
本当にこの中に王がいるとはとても思えないんだが……
「なあシラリィ。精霊王の城って昔からこうだったのか?」
「いえ、そんなはずは……ついこの間までは立派なものだったんですけど……」
「そうなのか。やはり何かありそうだな」
この荒れ具合、尋常じゃないし、精霊王の身に何かあったに違いないよな。
とりあえず、中に入ってみるか。
そう思った俺は城の入り口を探す。
だが、どこにもそれらしき所は見つからない。
「どこにも入口がないんだが?」
「確かに見当たらないですね。この辺りにあったはずなんですけど……」
「空から見渡してダメなら地上に降りてみるか?」
「そうですね、そうしましょうか」
そもそも薄暗くて視界が悪いから空からじゃよく見えないしな。
ただ扉を見落としているだけなのかもしれない。
ということで、地上に降り立った俺とシラリィ。
だが、その瞬間、周囲から物凄い殺気を感じ取る!
「ライク様、どうやら私達、ハメられたようです」
「ああ、俺達が地上に来る所を待ち伏せしていたみたいだな。もう一度空に戻るか?」
「いえ、やめておきましょう。そうはさせてくれそうにありませんから」
シラリィはそう言うと上を向く。
俺もその視線の先を追うと、空には蜘蛛型の魔物が覆い尽くしていて、蜘蛛の巣に覆われていた!
「俺達が降り立った一瞬の隙にこれだけ蜘蛛の巣を張ってしまうなんて大したもんだな」
「関心している場合じゃないです! ほら、魔物が来ますよ!?」
シラリィの言う通り、包囲網を作られた俺達はジリジリと距離を詰められていく。
果たしてどうしたものだろうか。
ビシャーン!!
突如鳴り響く雷鳴。
俺のすぐそばに起きた落雷によって、蜘蛛の巣ははち切れ、そして多くの蜘蛛が散っていった!
「待たせたな、ライク様!」
「その声は―――ライダス!?」
声がした方を振り向くと、そこには全身に雷をまとわせた虎、ライダスの姿があった!
本気を出しているのか、体長の数倍にもなる範囲で荒れ狂う電気を身にまとい、周囲の空気もピリピリと帯電しているように思える。
そこには以前のような貧弱なライダスの姿はなかった。
「ここは俺とファスに任せて先に行くといい!」
あれっ、ファスもいるのか?
どこにも見当たらないが。
そう思っていたら、相手の魔物が急にどこかに飛ばされたり、消滅したりした!
どうやら近くにいるらしいな。
目に見えないだけで。
とにかく、頼もしくなったライダスだけでなくファスまでもいるんだからここは任せて問題ないだろう。
こうして俺とシラリィは城がある方向へと進んでいった。
「えっと……ありました! でもツタが絡んでいて開きそうにないかも……」
確かに扉を見つけたのはいいのだが、扉にツタが絡まっていて開きそうにないな。
「ここは私に任せなさい! 浄化の風!」
どこからか優しくあたたかい風が吹いてきた。
すると扉に絡まっていたバラがみるみるうちに消滅していく!
「ウィンリー、お前も来ていたのか!」
「当たり前でしょ? この一大事に駆けつけなかったらどうかしてるわ。あと、シャイザも来ているわよ」
風の精霊ウィンリーの後ろからやってきたのは―――サメ顔の人?
あれ?
これがシャイザなのか?
何か見た目が全然違うんだが。
「お前はシャイザなのか?」
「ああ、そうだ。陸上じゃ、この形態でないと呼吸ができないからな」
シャイザって水陸両方いけるのか。
なかなか便利な体しているんだな。
「とにかくさっさと先へ進むわよ! もたもたしているとまたツタが絡んで進めなくなるわ!」
ツタが絡んで進めなくなる?
意味がよく分からなかった俺だが、扉の周囲を見て理解した。
なんと、ツタが目に見えるスピードで成長し、再び扉を覆い尽くそうとしているのだ!
「うわっ、なんていう成長スピードだよ、これ?」
「この城に絡みついている植物は本物の植物じゃないわ。だから普通の植物とは色々と違うの。だから早く進みましょう!」
「ああ、そうするか」
ツタが再び覆う前に扉を開け、俺達は城の中へと入っていった。




