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36.召喚獣暴走の犯人が分かりました

「あっ、何か悪いことしたか?」

「自覚ないの? 寝起きを襲うなんてサイテーよ。戦うならもっと万全な状態な時に挑んで欲しかったわ」

「えっ? 寝起きって事が分かってるという事は、今までの記憶は残っているということか!?」

「当たり前でしょ? 何で記憶喪失呼ばわりされなきゃいけないわけ? 失礼にもほどがあるわよ!」



 そう言ってプンプンと怒るウィンリー。

 というか、ウィンリーにはシラリィやライダスと違って記憶があるんだな。

 なら聞けることも多いんじゃないか!?



「なあ。ウィンリーはどうしてこの世界に来ることになったか分かったりするのか?」

「知っていたとしても誰があなたなんかに教えるものですか! ふんっ!」

「……寝起きを襲ったのは悪かったよ」

「べ、別に謝られたって教える気なんてないんだから!」



 本当はウィンリーから襲ってきたんだけどな。

 なんか納得いかない展開だが、下手に刺激する訳にもいかないし、どうしようかな?



「ここにわざわざ呼び出してすまなかったな。ネフターヌに戻ってゆっくり休んでくれ」

「イヤ」

「え?」

「お腹すいた。何か食べさせて」



 えっ……なんでいきなりそうなるんだ?

 というか、精霊って腹がそもそも空くものなのか?



「精霊も腹が減るのか?」

「精霊も生き物だし、当たり前じゃない! えっと、あと付け加えるなら、ライクから匂う甘い食べ物がいい!」



 甘い匂いってことだから多分エクレアの事だろうな。

 とりあえず出してやるか。



「エア+句+(れ)で”エクレア”!」



 俺がエクレアを出現させると、その瞬間、エクレアは跡形もなくなっていた……



「ライク、もう一個!」

「えっ……もう食べたのか? えーと、エア+句+(れ)で”エクレア”!」



 こうしてウィンリーの気が済むまでエクレアを俺は出し続けることになったのだった……

 というか、同じ物食べ続けてよく飽きないな。

 まあ本人がそれでいいならいいんだけど。



「というか、魔王の名前ってライクっていうのね。知らなかったわ」

「いや、俺はただ魔王に変身しているだけで魔王じゃないから」

「あら、そうなの? まあ確かに魔王がこんなへんぴな所まで来るなんておかしいとは思ったわ」



 なるほどねという感じでうなづくウィンリー。



「で、あなたは何者なの?」

「何者って言われてもなぁ。さっきも言ったがライダスの保護者としか―――」

「違う、そうじゃない。ライクは魔王にも龍にも人間にもなれる。だからどの姿が本当のライクなのか聞いてるの」

「ああ、そういうことなら人間が本来の俺だ。ライダスがいて危ないから魔王というかサタンの姿をしているだけで」

「ふーん、そういう事なんだ」



 じーっとこちらをみつめてくるウィンリー。

 何か俺の顔についてるのか?



「あなたから邪悪なオーラは感じないわね。なら、私もあなたに協力するわ」

「本当か!?」

「ただし、条件が一つ」

「条件?」

「ええ。条件とは―――これからも私にさっきの甘いもの、エクレアというのかしら? それを私に提供すること! 分かった?」

「あ、ああ、別に構わないが……」



 コイツ、どんだけエクレア好きなんだよ。

 わざわざ条件にするなんてさ。

 まあこちらとしてはそこまで労力はかからないし、別にいいんだけど。



「決まりね。じゃあえっと……ライクはどうして私がここに来たのか知りたがっていたわよね?」

「ああ、そうだな」

「ならそれを教えるわ。心して聞いてね」



 こうしてウィンリーがこの場に来るようになった経緯を聞くことになった。



「―――つまり五大召喚獣を束ねる長が原因ということか?」

「ええ。何か急に変な事言い出したと思っていたら、いつの間にかここに飛ばされていたの。そのとき強烈な不安を感じたし、破壊衝動にも襲われたわ」



 不安と破壊衝動。

 それはシラリィやライダスと共通だな。



「つまり、召喚獣の長を何とかしないといけないわけだな?」

「ええ。そこでお願いなんだけど……ライクに長を止めてほしいの」

「長を止めるっていっても居場所は分かるのか?」

「うん。長は必ずネフターヌの王の間にいるはず。そこが最もネフターヌ、及び他の世界に干渉しやすい場所だから」



 他の世界に干渉ねぇ。

 世界が複数ある事も驚きだが、別の世界に影響を与えるなんて離れ技を平然とやってのけるなんて恐ろしすぎるだろ。



「というか、そういえばそんな長がいるネフターヌに戻ってシラリィ達は大丈夫なのか?」

「あっ、それは問題ないと思うわよ。五獣魔と長は互いに影響を与えられないようになっているもの」

「えっ? でもその割にはお前達に長が干渉したんじゃなかったのか?」

「そうなのよね。そこがちょっとひっかかるの。でも、もし干渉してくるとしても、多分私達なら逃げ切れるはずよ。今ならライクの加護もあるし。そんなに私達はヤワじゃないわ」



 ヤワじゃない……か。

 その割にはこの世界に来たヤツら全員おかしくなってる気がするが。

 とにかく、安心は出来ないってことだよな。

 早く何とかしなければ。



「長を何とかするにはどうしたらいいんだ? ネフターヌって別世界だし、行きようもないだろ?」

「いや、行く方法はあるわ。私達五獣魔を全員従属させるの。そうすればネフターヌに続くゲートを作り出す事が出来るわよ!」



 ふーん。

 異世界に続く道を作り出せるなんてさすがは召喚獣で力を持つ五人だという事か。



「となると、残る二人の五獣魔を探さないとだな」

「ええ。そこはライダスに任せましょう。ほら、ライダス、いつまでも寝ているんじゃないわよ!?」



 そう言ったウィンリーはライダスに蹴りを入れた。



「い、痛い! そんなきつくあたるなよ、風魔!?」

「今の私は風魔じゃなくて精霊ウィンリー! その名前でまた呼んだらぶっとばすわよ!? というか、そうやってグズグズしていてもぶっとばすけど」

「ひぇー!? それだけはやめろ! いや、やめてくださいー!?」



 そういえばライダスも五獣魔なんだよな。

 何かシラリィといい、ウィンリーといい、ライダスの扱い方が雑じゃないか?

 もしかしたら五獣魔の中にも格差があるんだろうか?



「ライク様、俺がご案内します! だから早くこのウィンリーを戻して―――アイタタタ!?」

「アンタ一人じゃ不安で仕方ないわよ! あっ、でもライク、魔力の方は大丈夫?」

「ああ、別に問題はないが?」

「なら大丈夫ね。さあライダス、覚悟しなさい……」

「ひぇー!? 誰かお助けをー!?」



 こうしてウィンリーに急かされながら、ライダスは次の目的地へと向かうのだった。


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