35.風魔に怒られてしまいました
「飛ぶの疲れたわ。いや、マジで」
ライダスについていって風魔の場所を目指す俺達。
だがその先導役のライダスの移動スピードがあまりにも遅すぎる。
ライダスは陸路を進むから、どうしても飛ぶ事のできる俺やシラリィと比べて速度が遅いんだよな。
「シラリィ、お前って記憶の共有ができるんだろ? 風魔のいる場所がライダスから伝わったりしてないのか?」
「いえ、分からないです。どうやらライダスはその記憶を共有しようとはしていないようです。多分ライダスなりに意地があるのでしょう」
「そうなのか。全く、面倒だな」
シラリィに乗って移動するように、ライダスに乗って移動できればラクなんだが、そうもいかない。
その上雷雲が常に発生するからバハムート状態でないと危ないワケで。
うーん、疲れるよな。
「ライク様、この洞窟の中にいるようだぞ!」
地上からライダスがそう叫んでいる。
どうやらようやく目的地についたらしい。
俺とシラリィは地上に降りることにした。
「この中ですか……ちょっと私は入れそうにないですね……」
洞窟の高さは三メートルほど。
洞窟としてはかなり大きい入口ではあるが、それ以上に大きいシラリィ、及びバハムート状態の俺は入れそうにない。
となると、シラリィはいけそうにない。
俺もバハムート状態では入れない。
となると、どうしようか?
ライダスは連れて行った方が良さそうだしな。
……仕方ないからああするか。
「タン+(さ)で”サタン”!」
俺はそう言ってバハムートからサタンへと姿を変えた。
サタンのサイズなら洞窟に入れそうだし、ライダスの雷で即死することはないだろうからな。
「シラリィは一回ネフターヌに戻っていてくれ。連れていけなくてすまないな」
「いえ、こればかりは仕方ないです。また私が必要になったらお呼び下さい」
「ああ、またな」
そう言葉を交わし、シラリィは姿を消した。
「さて、さっさと風魔の所に行くか」
「ああ、一緒に頑張ろう、ライク様!」
今更だが、タメ口なのに様付けって変な感じだな。
まあ別にいいんだけど。
こうして俺とライダスは洞窟の中に入っていった。
「……洞窟の中でも雷雲を発生させるんだな、お前」
「迷惑かけてすまない。何しろ俺の生命線なもので……」
俺達の頭上には黒い雲が発生している。
どうやらライダスにとっては中も外も関係ないらしい。
雲をとっぱらった時のライダスの様子を見ているから、本当に生命に関わることなんだろうし、あまり口出しできないんだよな……
「一応全ての雷は俺に来るようにしているはずなので、ライク様はご心配なく!」
そうなのか?
さっきから雷が俺の数センチ先を通って行ったりしているんだが……
不安を抱きながらも先に進んでいくと、とある生物を見かけることになった。
「あれは……精霊?」
「ああ! あれこそが風魔こと風の精霊だ!」
大きさは多分50センチほどで、その小さい体には羽根がついている。
黄緑色の長い髪が印象的な可愛い少女のように見えるな。
スヤスヤ眠っているが、この子も暴走している……のか?
「さあライク様、今のうちに!」
「ええっ……寝込みを襲うって酷すぎるだろ……」
「そんな事言っている場合じゃないですから! って、あっ……」
ライダスと話しているうちに、風魔は起きてしまったようだ。
眠そうな目をこすりながらこちらを見てきている。
「やあ、風魔。ご機嫌はどうだ?」
気まずくなっていたであろうライダスはそう風魔に話しかける。
すると……
「邪魔」
風魔はそう一言つぶやくと同時に手をかざす。
すると次の瞬間には壁にめりこむライダスの姿があった!?
ライダスは立ち上がる気配がない。
ライダスの頭上に発生している雷雲もかなり小さくなっており、相当なダメージを負っていることが分かる。
おいおい、そりゃないだろ。
この容姿でその力は反則だって!
でもこの風魔も五獣魔の一人なんだもんな。
少なくとも召喚獣の中でベスト5に入る強さだという事だ。
そう考えると強いのは当たり前なのかもしれないな。
ちょっと油断し過ぎたかもしれない。
「あなたも……邪魔」
「”みまもり”ー”み”で”まもり”!」
風魔が手をかざすと同時にそう叫ぶ俺。
すると、俺の前に出現したバリアに何かがぶつかる音が聞こえた!
どうやら間一髪間に合ったようだ。
「防がれた……? あなた、何者?」
「何者か……そう聞かれても困るんだよな。とりあえずはそこに倒れている虎の保護者とでも言っておこうか」
「虎は敵。つまりその保護者も敵。ころす」
そう言って風魔は指をくねくね動かす。
すると、洞窟中のあらゆる所に切り傷が発生した!
もしかして、こいつ、手当たり次第に攻撃してきているのか……!?
乱暴すぎるだろ、いくらなんでも。
早く何とかしないとライダスが危ない。
ここはいつもの方法で……
「”フクロウ”ー”ろう”で”ふく”! ”ふく”ー”ふ”で”く”!」
俺は風魔に服を着せ、そしてその服を金属化させ、風魔を地に落とす!
「むっ……エアサポート」
風魔がそう唱えると、風魔は再び飛び上がった!
えっ、重たい金属をまとわせているのにまだ飛べるのかよ!?
常識外れすぎるだろ、コイツ。
とにかく、このまま戦いを長引かせると厄介そうだな。
ここはちょっと気がひけるけど、あれをやるとするか。
「”きんぞく”ー”きんぞ”で”く”!」
俺がそう言うと同時に、風魔は血の気を失い、倒れた。
風魔が倒れた理由。
それは風魔がまとっている金属を内側に槍状に変形させて串刺しにするという苦を与えたからだ。
うん、あまり想像したくないな。
さっさとやることを終わらせよう。
俺は精霊を思い浮かべて―――
「来たれ、精霊ウィンリー!」
すると血の気を失った精霊が姿を消し、そしてその代わり目の前には―――
「よくもやってくれたわね!? ライクのバカ!」
怒った様子の精霊が出現し、俺の体をポカポカ叩いていた。




