28.共闘することになりました
「あっ、ライク様!? ガネヤイはどうなったんです?」
しばらくゆっくりと飛んでいるとテルサムとハシクが追いついてきた。
「海の底に沈めておいたぞ」
「えっ!? まさか殺――」
「すわけねーだろ。呼吸はできるし、ある程度したら多分また追ってくるだろう」
所詮ガネヤイに重たい金属をまとわせただけなので、それを脱ぎ捨てれば普通に動けるようになるだろう。
多分。
「そうですか、それならいいんですけど」
「それよりも今のレースの展開はどうだ?」
「そうっすね。おいら達が一位から三位っす。順調っすね」
「そうか。後続との差はどうだ?」
「後続とは10キロ、いや5キロ……いや、0キロ!?」
その瞬間、びゅんと何かが横切っていく様子が見えた。
「ふふ、赤龍さん達、お先ですー!」
そう言ったのはミリナだ。
ミリナ達、緑龍の三人の周囲にだけ強烈な追い風が吹いているようで、みるみるうちに俺達との距離を離していく!
「うっ、これは不味いですよ!? このままでは緑龍達に先を越されてしまう!」
「させるかよ。負+(く)で”ふく”!」
「させません。絶対結界!」
その瞬間、ミリナ達の周囲を緑色の球体が囲い込み、中の様子が見えなくなってしまった。
中の様子が見えないんじゃ想像ができないから”苦”のワードは意味を成さないな。
やるな、ミリナ達。
「ライクさん、テルサム様、おいらの近くに集まって下さい! いくっすよ……炎熱暴風!」
ハシクの近くに俺とテルサムは集まる。
すると、突然強烈な追い風が俺達を包み込み、一気にミリナ達に追いつく事ができた!
やるな、ハシク。
ちょっと熱いのをなんとかしてくれれば完璧だったんだが……
まあ贅沢言っても仕方ないな。
「ふふ、やりますね。ですがこれならどうです!?」
そうミリナが言うと、突如俺達に強烈な逆風が襲いかかる!
だがそんな事で屈するもんか。
「”うなぎ”ー”う”で”なぎ”!」
俺の目の前の逆風、及び緑龍達周囲を対象にそう叫んだ。
すると俺達を阻む逆風が止み、そして……
「えっ、どうなっているんです!?」
追い風がぴたりと止んでしまい、バランスを崩し、急激にスピードダウンする緑龍達。
また風を発生させて体勢を立て直してくるが、そこはまた俺が凪を発生させて、緑龍達をリズムに乗せない。
俺がそうやって足止めしている間にテルサムとハシクには先に行ってもらった。
「ふふ、無様な姿ですね、ミリナさん。風にばかり頼るからそうなるのです」
「ムスレヌさん……くっ、だいぶ離したというのに」
「ふふ、黒龍さんには感謝ですわね。では黒龍さんと緑龍さん。私は先に行ってますので、ごきげんよう」
「させるかよ、”うなぎ”ー”う”で”なぎ”!」
俺はそう叫んだが、紫龍のムスレヌ達は全くペースを崩す様子がない。
「ふふ、残念ながら私には何も効きませんよ。私達紫龍は絶対不変の力を持っていますから、私達自身及びその周辺には変化を起こすことは出来ないのです!」
「くっ、そんなのアリかよ……」
「でしたら私達と協力しない、ムスレヌ? きっといい結果になりましてよ?」
「嫌よ。どうせそんな事したらあなたが抜け駆けするに決まっているわ。せいぜい黒龍さんと戯れてなさい」
「さあ、ラストスパートかけるわよ!」
そう言ったムスレヌ達は速度を上げて俺や緑龍達を置き去りにしていった。
このままではまずい……
何とかしなくては。
「こうなったら黒龍さん、私と協力しない? このままでは私達もあなたも共倒れよ?」
緑龍のミリナはそう誘ってくる。
確かにこのままではミリナの言う通りだ。
残る距離は半分を切った。
このまま緑龍の牽制ばかりしていたら紫龍に距離を離され、最悪テルサム達が紫龍にやられかねない。
それだけは避けなくては。
「ああ、そうだな。協力――」
「ふん、邪魔だお前達! 消えな!」
その声と同時に空中に突如一本の巨大な川が現れた!?
その川に弾き出される俺や緑龍達。
あまりの勢いに俺はしばらく体勢を崩してしまったが、何とか体勢を取り戻す。
緑龍の方はリーダーのミリナは辛うじて空中で体勢を取り戻せたようだが、他の二人の緑龍は海へと投げ出された!
そしてその空中に現れた強烈な川ははるか先へと向かっていった……
「くっ、ネメサルの奴、やってくれるわね……!」
「ネメサル――って事は、あれは青龍の仕業という事か!?」
「ええ。これは本気で不味いことになったわ。あれじゃ青龍達が上位を独占しそうな勢いよ」
青龍達が上位を独占……
それはつまり青龍が優勝するって事か。
それは絶対に避けなくては……!
「それだけは絶対に避けないとな」
「ええ、私も青龍だけには勝たせたくないの。あなたなら青龍の優勝を阻止できる?」
「……やってみないと分からないな。だが、やってみせるさ」
「分かったわ。ならこの風に乗って」
そう言うとミリナは周囲に風を発生させた。
「乗っていいって……仲間はいいのか?」
「あの子達なら大丈夫。あの程度でやられたりしないわ」
「だとしたって……まだ勝負中だろ?」
「確かにそうね。でも正直もう私達に優勝は望めないわ。決闘大会に強い子もいないし。だから、あなたに私の全力をかけて協力する!」
ミリナはそう言うと俺に早く乗れというような仕草をする。
そうだよな。
もたもたしていたら青龍達に勝てない。
頼れるなら頼ってやろうじゃねえか。
「ありがとな。この恩は必ず返す」
「ふふ、期待しているわよ。必ず青龍達に打ち勝ってね! それじゃ、行くわよ!」
ビューン!!!
吹き抜ける突風が俺達の飛行を強烈にサポートしてくれる。
こりゃ楽だわ。
「あっ、あれは……ムスレヌさん!?」
俺達が進むと、先の方にふらふらと力なく飛ぶ紫龍達の姿があった。
青龍にやられたのだろうか?
飛ぶスピードは明らかに遅い。
俺達はそんな紫龍達をあっという間に抜いていく。
「あいつら……青龍にやられたのか」
「そうでしょうね。それよりもまだ追いつけないんですか……。結構頑張っているんですけど。あと残りは1000キロもないというのに……」
「よし、じゃあもっと急がないとな。北風ひくきたでかぜ!」
俺がそう言うと、俺達をさらに強力な風が後押ししてくれるようになった!
「残りわずかならスパートかけようじゃないか!」
「そうですよね……絶対に諦めません! 全速力で、必ず追いついてみせます!」
さらに速度を上げて、俺とミリナは先を急いだ。




