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27.レースが始まりました

「スタート一分前……」



 レース開始時間を告げるガイダンスが流れている。

 間もなくレースは開始になりそうだ。



「なあ、テルサム? スタートはどういう作戦でいこうか?」

「そうですね……できればみんなかたまって動きたいです。一人だけが前に出ても撃ち落とされるだけですから……」

「なるほどな。つまり全員速く進めればいいんだな?」

「それが出来たら理想ですけど。でもそんな事が?」

「ちょっと俺に考えがあるんだ。耳を貸してくれ」



 俺は考えをテルサムとハシクにつたえた。

 そんな事がうまくいくのかと不安になるテルサムと、いい考えっすねと期待に胸を躍らせるハシク。

 ともかく反対はないようなので、その作戦を実行することにしよう。



「スタート5秒前……3、2、1、スタート!」



 その瞬間、俺はテルサムとハシクを抱えて全力で飛翔した!



「ちょっ、そんなのアリかよ!?」



 そんな声が観客から聞こえたが、気にせずに俺は二人を抱えて進む。

 別に速い人が他の人を連れて行ってはダメというルールはないからな。

 これもれっきとした作戦ってやつだ。



 とはいえ、やはり龍二人を抱えて飛び続けるのには限界がある。

 しばらく飛んだ所で俺はテルサムとハシクを放した。



「すごいです、ライク様! 後続をだいぶ引き離しましたよ!」

「ハハ、ありがとな。だけどこれ以上抱えて飛ぶのは厳しそうだわ」

「まだまだ先は長いっす。無理しない程度にとりあえずは飛ぶといいっすよ」

「ありがとな。さて、今の状況はっと」



 俺は腕についた機械を操作する。

 ちなみにこの機械、レーススタート前に配られた物だ。

 参加者の順位や距離が把握できる優れものらしい。



「えっと、俺達の順位は――二位から四位だと!? 俺達のよりも先にいっている奴がいるってのか!?」

「一位は――黄龍のガネヤイですね。確かに彼は前回のレースでも一位をとっていますし、レースは昔から得意としているんですよね」

「なるほど……だがどうする? 五位は紫龍のチームが占めていて、俺達はそいつらを100キロほど離してはいるようだが」

「もしぼく達がこのままゴールした場合、点数は80+60+40で180点。対して黄龍は100点とあと二人の点数を足したものになりますね」

「うーん、悪くはないということか……」



 テルサムから聞いた話によれば、ポイントが入るのは六位以上だけで、もし黄龍に五位、六位をとられても130点にしかならない。

 このままの展開ならば正直悪くはなかったりする。

 だが、あくまでもこのままの順位を維持できればの話にすぎない。

 そもそも俺達がこの順位のままゴールできるという保証もない。

 妨害が入って、さらに順位を落とす可能性すらある。

 いや、むしろ他の龍達が何もしてこないことの方が考えにくいか。

 そうなると攻めあぐねている間に他の龍に抜かれ、ガネヤイだけ独走なんてさせたら目も当てられないな。

 ここは攻めないとまずいか……



「テルサム、ハシク、俺はちょっとガネヤイを妨害しに行ってこようと思うんだが、二人置いていっても大丈夫か?」

「ライク様、疲れ切っているでしょうに、大丈夫なのですか?」

「まあ飛びながら栄養でも補給すれば何とかなるだろ。だけどさすがにお前らを抱えて飛ぶ余裕はねーんだわ」

「そうですか。であればぼく達の事は心配しないで下さい。むしろライク様についていけるように頑張りますから!」

「ふふ、頼もしい言葉だな。だが、無理はするなよ」



 そう言った俺は深呼吸をして、再び全速力で前へと飛んで行った!



「あっ、やっぱり追いつけないです……」



 そんなテルサム達を置いていって、俺は前をいくガネヤイを追って行った!






「うーん、まだ追いつけそうにねーな。どんだけ速いんだよ、あいつ。もぐもぐ……」



 俺は口の中にシュークリームを出現させ、飛びながらも至福の一時を過ごしていた。



「でもそろそろ追いつきそうだな。あと10キロ、5キロ、3キロ……おっ、いたいた、あそこか」



 俺は黄色の大きな龍の後ろ姿を捉えた。



「むっ、お前は……黒龍か!? この俺に追いつくなんてやるじゃねえか」

「お前こそ、いつの間にこんな前の方にいたんだよ? 全く気づかなかったぞ」

「ふふ、音速のガネヤイ様を舐めるんじゃねえぞ? そんな俺に追いついてこれたことは褒めてやろう。だが、そんな時も今だけだ。じゃあな!」



 そう言ったガネヤイはさらにスピードを上げて俺との距離をあけようとする!

 だが俺も速度を上げて食い下がる!



「”ストロー”ー”と”で”スロー”!」



 俺は言葉魔法でガネヤイに速度低下の魔法を当てたのだが……



「ハッそんな魔法効くかよ。そんな小細工で俺のスピードが損なわれているなら伊達にレース三連覇してねえっつうの!」



 レース三連覇!?

 こいつ、そんなに凄い奴だったのか。

 だけどそれでも今までは赤龍が勝ってきたんだよな。

 それだけ他の所、例えば決闘大会で点数を稼いでいたのか。

 だが今の俺達じゃ、それが望めないからなぁ……


 魔法が効かないのは厄介だな。

 ふふ、だからといって何も出来ない訳じゃない。

 本人自体に影響を及ぼすものが効かないならそれ以外の方法を使えばいいのだ。

 例えばこんな感じでな。



「学生+句+(ふ)で”がくせいふく”!」



 するとガネヤイの体には詰襟の学生服がまとわれた。

 もちろんガネヤイに合うサイズなので巨大すぎる服になっているが。


 龍が学生服着るってなんか不思議だよな。

 それはそれで面白いから良いんだけど。



「なんだ、これ? 人間がまとう服ってやつか? こんなことして何になる?」

「ふふ、まあ見てなって。”服”ー”ふ”で”く”!」



 そう俺が言った瞬間……ガネヤイの学生服は重たい高密度な金属の塊へと変わった!

 服が重い金属へと変化して地に落とされるという苦を想像したら、本当にそうなったのだ!



「な、何しやがったお前!? うわぁぁぁ!?」



 金属の重みに耐え切れず、落下していくガネヤイ。

 ちなみに海でも呼吸できるように空気ボンベ的なものをつけてあげました。

 レースの事なんて忘れて綺麗な海を優雅に満喫して下さいませ。


 何はともあれ、これでしばらくは戻って来れないだろう。

 速度を緩めてテルサム達と合流しようかな。

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