22.面倒な事になりました
俺は地上に降り、黒焦げになった赤龍達の手当てをしておいた。
そして、目覚めるのを待つ。
「あ、あのぅ……そろそろ縄を解いてもらってもいいんじゃないでしょうか?」
待っている間、テルサムがそう言ってくる。
ああ、そういえばテルサム、そこにいたんだったな。
気付かなくて悪かった。
俺はテルサムの縄を解いてやった。
「うーん、やっぱり自由っていいですね! じゃあぼくは町に戻―――」
「らせねえよ!? 誰のせいでこんな事になったのか分かってるのか、おい!? お前も丸焼きにされたいのか!?」
「ひいいい!? そ、それだけはご勘弁を!?」
「とにかく、お前もここにいろ。目を覚ましたらこいつらから状況を説明してもらう。それでいいな?」
「あっ、はい……逆らえる気もしないのでそれでいいです……」
テルサムは諦めムードになって、ため息をついた。
うん、最初からそうしてくれれば話は早かったんだけどな。
とにかくいい傾向だ。
しばらく待っていると、一人の赤龍が目を覚ました。
「おっ、目覚めたか?」
「ひ、ひいいい!? ど、どうか命だけはとらないでくれぇ!?」
「い、いや、だから殺しなんてしないってば! そんなつもりなら手当てなんてしないだろ?」
「あっ、そういえば傷一つついてない。どういう事だ?」
自分の体を見て不思議そうな表情をする赤龍。
まあ気絶するほどの砲撃を受け、しかも地面に落下して無傷なのはどうみても不自然だよな。
「それはライクさんがあなた達を治してくれたんですよ」
「テルサム様、よくぞご無事で! あれっ? でもどうしてこの黒龍の方がいらっしゃいながらテルサム様がご無事でいらっしゃるので?」
「だから、俺はテルサムを人質にとってる訳じゃないっての。ちょっとは人の話を聞きやがれってんだ」
きょとんとする赤龍。
どうやら本当に俺の話を全く聞いていなかったらしい。
本当、参ったな……
とにかく、俺はここまでの経緯を赤龍に話す事にした。
他の赤龍も少し経つと目覚めたので、何度も説明し直すことになってしまったが。
「なるほど。それでテルサム様がこの地にいらっしゃったと。とんだご無礼を申し訳ありません」
「いや、分かってくれたならいいんだよ。という訳だから、テルサムを持ち帰ってくれて構わない。とにかく俺達の町を攻撃しないでくれ」
「あっ、その事なのですが……ライク様も王位継承祭に参加されません?」
何言っているんだ、コイツ?
まさかまだ俺の話を理解していないのか?
俺は人間だって説明したはずなんだが。
「俺は人間だし、龍の祭りには関係ないだろ?」
「いえ、ライク様が参加されても文句言う人は誰一人としていないかと」
「いや、文句言われる言われないじゃなくて、俺が行きたくないっての」
「いや、そんなことをおっしゃらずに! むしろ、出て下さい! お願いします!」
「嫌なものは嫌だって言ってんだろ? もう俺は帰るからな!」
俺はそう言って空中都市へと全速力で戻っていった。
多分三秒位で。
バハムートの機動力、恐ろしいわ……
空中都市に戻ったのはいいんだが、今の俺は体が大きすぎて、どの建物の中にも入れそうにない。
なので適当に町中にある広場でのんびりくつろいでいたのだが……
「あの……ライク様、ですよね?」
確信が持てないような様子で恐る恐るたずねてきたのはレティダだ。
今の俺の姿がさっきまでの人間の姿とは全然違うから戸惑うのも無理ないだろうな。
「ああ、そうだぞ。どうした?」
「先程の赤龍達とテルサムさんがライク様をたずねにいらっしゃっていますが……」
「ああ、断固拒否しておいてくれ。町中に入れるなよ」
「あっ、非常に言いにくいのですが、もう町中に入られておりまして……ライク様が来るまでここで待つといって聞かないのです」
マジか。
どんだけ面倒な種族なんだよ、赤龍って。
テルサムといい、他の赤龍といいさ。
テルサムを取り戻しに来たならもう目的は達成しただろうに。
何で全く無関係な俺が王位継承のイベントに参加しないといけないんだよ。
「ほっとけ。そうしたらいつか諦めて帰るだろう。テルサムを連れ帰る目的は達成出来るだろうし、もうここにいる必要もないだろうからな」
「はぁ、そうだといいのですが……」
レティダはちょっと困ったような顔をした。
その表情が気になったが、まあきっと何とかなるだろうと俺は一眠りする事にした。
少し寝て起きると、周りには人だかりが出来ていた。
一体何事かと思っていると、ネルシィとバーグが近付いてきた。
「ねぇ、ライク。あの龍達、ライクに殺されかけたって本当?」
「えっ、どういう事だ?」
「まあ俺とネルシィは信じていないんだけどな、あの龍達の話によれば、ライクがあの龍達をさんざん脅したり殺しかけたりした挙句、許すまで飲まず食わずでここで待たされていると言うんだよ」
何だその作り話は。
いや、殺しかけたのは本当だけどさ。
飲まず食わずに待てなんて誰もいってないだろうに。
むしろ帰って欲しいんだが。
「俺はそんな事言ってないんだけどな……」
「ただお腹空いているのは本当らしくて、とても苦しそうな表情をしているよ?」
「……それならこれでも食べればいい」
そう言った俺は適当にランチセットやエクレアなどを特大サイズの物を出現させた。
「すごい大きな食べ物だな……これを届けてやるのか?」
「……そういえばみんなにとっては大きすぎて持てないよな。気が進まないが、届けにいってやるか。ハァ……」
適当に嘘をならべているテルサム達を黙らせるため、俺はテルサム達に食べ物を持って会いに行くことにした。




