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19.みんなのおかげでようやく抜けました

「えっ、あれって魔王軍!?」

「でもあいつら、何やってるんだ? 空飛んで一列になっているぞ?」

「あっ、あそこを見て! もしかしてライクさんが言っていた龍を引き抜こうとしているんじゃない?」



 レティダ達を見て動揺する人達。

 そりゃそうだよな。

 自分達の町を襲ってきている奴らなんだから、怖がるのも無理はない。



「あっ、私やっぱりやめる……」

「ぼくも……」

「おれも……」



 魔物達を見て怯えた住民達はゆっくりと町の方へと引き返していく。



「ライク、あの龍を引っ張ればいいんだよね!?」

「ああ。魔物達が手伝ってくれているんだが、それでもまだ力が足りないんだ。だから頼む!」

「おう、任せとけ!」



 ネルシィとバーグは率先して龍を引っ張ろうとしてくれている。

 二人にはこの魔物達が自分達を襲って来ないことを知っているからな。



「感謝します、ネルシィさん、バーグさん」

「いいんですよ。それより、この龍、なかなか抜けないですね」

「ええ、これでも手応えある方なのですが、まだ力が足りなくて……」



 レティダは困った顔をしている。

 これだけの人数で全力で引っ張ってもダメなんだもんな。

 まさかこんな大変な事になるとは……



「お、オレも手伝う!」

「あたしだって! 二人だけに任せてはいられないわ!」

「僕も!」

「私も!」

「おいらだって!」



 そう言って何人かがネルシィとバーグに続いて加勢してくれた!

 すると続々と多くの人達が手伝ってくれるようになる!



「まだ足りないぞ! 誰か応援を!」

「オレが呼んでくる! ちょっと待ってろ!」



 こうして人が人を呼び、ついには町中の人達が手伝ってくれる事になった!

 その数は100人を超える。

 最初は怖がっていた人も、みんなが手伝う様子を見て、手伝ってくれるようになったのだ。



「それにしても魔物が龍を手伝うなんて不思議だなぁ」

「どうせライクさんの事だ。何かしらの方法で手なづけているんだろう」

「こら、そこ、よそ見しない! やるべき事に集中しなさい!」



 まるで今やお祭りのようにガヤガヤと騒がしくなる。

 そしてついに……



 スポンッ!



 何百人もの力が結集してようやく龍を引っこ抜く事が出来た!


 一体何時間かかっただろうか?

 数時間にも及ぶ激闘が終わりを迎え、みんな一斉に歓声を上げた!

 そこには種族の隔たりなどなく、魔物と人間がハイタッチして喜んだり、喜びを分かち合うこと様子がそこにはあった!


 あっ、ちなみにレティダの配下の者達にも翻訳機をつけておいたので、魔物と人間の会話も問題なく出来ます。


 そもそも言葉の壁なんて関係ないほどの団結力がその瞬間、生まれたようだった。



~~~



「えっ!? 町の人みんな移住を希望するって?」



 時間がしばらく経った後で、ネルシィとバーグから移住希望の結果を俺は聞いていた。



「そうなの。正直最初は移住を希望する人の方が少数派だったわ」

「だが、あの龍引っこ抜き祭りを境にみんなが魔物を見る目が変わってな。あいつらとだったら一緒に暮らしてみたいんだとさ」

「直接会話出来たのも良かったのかもね」



 種族を越えた共同作業。

 それが互いの理解を深めて、良い結果につながったんだろうな。



 だけど正直全員はさすがに無理だよな。

 嬉しい悲鳴ってやつなんだろうけど。

 空中都市の面積は限られているからみんなが暮らすだけのスペースがないんだよな。

 もっと都市がもっと大きければみんな移住できるのに……

 ん、待てよ?

 別に今の空中都市だってもともとあったものじゃないよな。

 つまり、ないならば新しく作ればいいじゃない!

 ということで。



「草+今日+(り)で”りそうきょう”!」



 俺は今までよりもより広い空中都市を想像しながらそう叫んだ。

 すると……



「おお、これは凄いな……」

「な、何が起きたの?」

「浮いてるー! 町が浮いてるよー!」



 人々はそう騒ぎ始める。

 人々が見つめる先には、町の人達、そして魔物達が全員暮らせるほどの巨大な空中都市が出現したのだった!



「あそこにだったらみんなで住めそうだな!」

「そうね! でもどうやったらあそこまで行けるのかしら? 浮いているから歩いていけるわけないし……」

「外敵に進入されにくいのはいいんだが、そもそもおれ達が入れないと意味ないもんな」



 そうなんだよな。

 これだけの人数、どうやってあそこまで運べばいいんだろうな?

 気球じゃ特定の場所にいくには向いてないし、飛行機を出しても操縦できなきゃ意味ないだろ。

 やっぱりここは……



「ドラゴン君、君の出番だ」



 ポンと近くにいた赤龍の胴体に手をあてる俺。

 そう、巨大な体を持つドラゴンならば、特定の場所へ、しかも大人数運べそうなんだよな。



「えっ……ぼくの出番ですか?」



 唐突に話題を振られ、きょとんとする赤龍。

 こいつ、見た目の割にはだいぶ語気が弱いんだよな。

 あっ、もちろん翻訳機使ってもらってます。



「ああ。お前の巨大な体、そして翼。これを少し貸してほしいんだ。駄目かな?」

「別にいいんですけど……その代わり条件があります」

「条件? 一体どういう事なんだ?」

「ぼくもその空中都市って所に住まわせて下さい! ぼく、ゆっくり過ごしたいんです!」



 そうなのか。

 ゆっくり過ごしたい、ね。

 別にスペースはかなり余裕を持って作ってあるし、ドラゴン一体位増えた所で問題ないだろう。



「ああ、いいぞ」

「本当ですか!? ありがとうございます! ではぼく、町の一員として精一杯頑張りますね!」



 赤龍は俺の返事を聞いて喜んで張り切っている様子だ。

 その様子を見た俺も自然と笑みを浮かべる。


 だがこの時の俺は気づいていなかった。

 この龍を町にとどめておくことが意味する事を……

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