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18.なかなか抜けないです

「な、なんだっていうんだ、あれ……?」



 俺は地面に落ちた何者かがいる方向を見てそうつぶやく。


 一瞬の出来事でよく理解出来なかったが、要するに巨大な何かが空中都市にぶつかってそのまま地面に落下したって事だよな?

 結構な衝撃だったが、空中都市のみんなは大丈夫なのだろうか?



「レティダ、みんなは大丈夫だったのか?」

「はい。少し揺れはしたようですが、大きな被害は出ていないようです。さすがはライク様が作った空中都市ですね!」



 うん、被害が出ていないようで良かった。

 となると、あと心配なのは、墜落していった何者かだよな。

 あんなスピードでぶつかってくるなんて只者ではないと思うが、何者なんだろうか?

 そもそも生物なのか?

 隕石とかかもしれないもんな。



「せっかくここまで飛んでもらっている所悪いんだが、落下した何者かを見に行ってくれないか? もし生物だとしたら色々とマズイだろうし」

「そうですか……分かりました。気になりますものね。ベスレ、地上に降りるぞ!」

「えー、マジっすか!? ……あっ、いえ、何でもないです。また頑張れば良い話ですものね! ハハハ……」



 レティダの殺気に気付き、慌てて言葉を変えるベスレ。

 ここまで高く飛ぶのも大変だろうけど、美味いものでも食べさせてやるから何とか頑張ってくれよ。



 こうして俺達は落下物のありそうな地上へと向かうのだった。





「これは……龍なのか?」

「多分龍ですね。硬そうな鱗があって、翼も生えてますし」

「物の見事に地面にめり込んでいるっす……」



 地面に降り立った俺達が見ているのは、足と翼をバタバタさせている生物。

 つまり、龍らしき生物がそこにはいた。

 体が半分以上埋まっているから確信は持てないんだが。



「どうします? 助けますか?」

「何かこのままの状態を見ているのも面白いんすけどね」

「いや、このままじゃマズいだろう。こうなった責任は俺達にもある訳だしさ」

「そうですよね。じゃあベスレ、頑張って引き抜いておやりなさい」

「……こうなると思ったっすよ。分かりやした」



 はぁとため息をつくベスレ。

 その顔には疲労が色濃く滲んでいる。

 ここは労をねぎらってあげないとな。



「ベスレ、これは俺からの差し入れだ。句+エア+(れ)で”エクレア”!」



 そう言って現れたエクレアを俺はベスレに渡した。



「何なんすか、これ?」

「俺が元いた世界にあったお菓子だ。疲れた体に染み渡るぞ!」

「そ、そうなんすか? ではちょっといただきやす」



 ベスレはパクッとエクレアはひとかじり。

 するとフフッと思わず笑みを浮かべ始めた。



「あー幸せっす。ありがとうございます、ライク様!」

「お前だけズルいぞ! 私にもそれをよこせ!」

「レティダ、それは龍の引き抜きをする人にあげるものなんだ。奪っちゃダメだぞ」

「あっ、そういう事なら私も頑張りますので、どうか私にもそのお菓子というものを……」



 そう言ったレティダの口からはよだれが溢れ出ている。

 いつものクールな印象とのギャップがあり過ぎて面白いな。

 よほどお菓子が好きなんだろう、きっと。



 ワード(く)を使ってもう一つエクレアを出し、レティダにそれを差し出す。

 するとレティダはしばらくエクレアをじっと眺めてから食べ始めた。

 それはもうとても幸せそうな顔をしていたな。



 二人にエクレアを味わってもらった所で、本題の龍の引き抜きに取り掛かろうか。

 せっかくなので俺も一緒に手伝うことにする。



「さて、いくぞ。せーの!」



 俺達三人は一生懸命龍を引き抜こうとしたが、全然抜ける気配がない。



「全然抜けそうにないな……」

「やはりあの勢いでめり込みましたから、そう簡単には抜けないということでしょうね」

「もっと人数が必要だよな。誰か手伝ってくれそうな奴らはいるか?」

「空中都市にいる部下を応援によこしましょう。今から呼びますので少々お待ち下さい」



 レティダは増援を呼んだ。

 そしてしばらくすると上空から数人の魔物がやって来た。

 人数も増えたし、今度こそ抜けるか!?


 せーの!



 ……抜けなかった。

 先程よりは少し引き抜けている気がするが、まだ足らない。


 結局、空中都市に残っているほとんどの魔物に手伝っても抜けなかった。

 どんだけ深くめりこんでいるだよ、コイツ。



「これ以上の増援はすいませんが望めません。力になれずに申し訳ありません……」

「いや、レティダはよくやってくれたよ、ありがとう。でもさっきよりも手ごたえは感じるんだよな」

「とはいっても、これ以上の増援が望めないんじゃそう考えても意味が……あっ!?」

「どうした、ベスレ?」

「先程のネルシィさんとバーグさんでしたっけ? あの人達に手伝ってもらえれば!?」



 おお、その手があったか!

 この際段取りなんか気にしていられない!

 龍が足や翼をバタバタさせる力も弱まってきているし、一刻も早く助けを求めなくては!



「レティダ達はここで待っていてくれ。俺が助けを呼びに行ってくる!」

「お願いします。私達はその間も何とか抜けないか頑張ってみますので!」



 こうして俺は一人で町の方へと駆け出した。





 町の入口らしき所に着くと、そこには人だかりが出来ていた。



「あっ、ライク! すごい音があったんだけど、何があったの!?」

「その様子から見ると、何か起きているのは間違いないなさそうだな」



 そう言って駆け寄ってきたのはネルシィとバーグだった。



「実は龍が俺達の空中都市にぶつかって墜落したんだ」

「龍ですって!? でも本来この大陸にいるはずもない龍がどうして?」

「俺も目を疑ったさ。とにかく龍が地面にめり込んでしまったから引き抜こうとしている最中って訳だ」



 うんうんとうなづきながら聞いてくれる二人。

 周りにいる観衆も興味津々なようでじっと俺達の事を見てくる。



「そこで頼みがあるんだが……その龍を引き抜く手伝いをしてくれないか?」

「引き抜く手伝い……そんなに抜けないものなの?」

「ああ。連れてこられるレティダの部下達を総動員してもダメだった。だがあとちょっとで抜けそうなんだよ。頼む、この通りだ!」

「いや、頭下げなくてもいいよ! 私で良かったら喜んで力を貸すからさ!」

「おれももちろん力を貸すぞ。お前には恩が色々とあるからな!」



 二人とも……

 二人はとても優しいから手伝ってくれるとは思ってはいたが、二つ返事で引き受けてくれるとやはり嬉しいよな。



「オレもお前には町を復興させてくれた恩がある。協力するぜ!」

「私も微力ながら手伝います!」

「僕も!」

「ウチも!」

「あたしも!」



 周りにいる観衆がみんなそれぞれ手伝ってくれると言ってくれている。

 みんな、本当にありがとう!



 俺達、そして周りの人々は埋まっている龍の所へ向かっていくのだった。

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