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13.ようやく三日間が経ちそうです

「町が浮いている……スゲェぞ、見てみろよ、みんな!」



 町の外縁には魔物達が集まっていて、地上を見下ろしているようだった。



「おいおい、そんな所にいると危ないぞ」

「あっ、ライク様、ご心配かけてすいません! すぐに持ち場に戻ります!」



 そう魔物の一人がいうと、地上を見下ろしていた魔物達は一斉にどこかへ走り去ってしまった。



「みんな子供だな。地上を見下ろす位で騒ぎおって」



 そう呆れた様子で言うのは軍のリーダー、レティダだ。



「お前だってついさっきまで腰ぬけていただろうに」

「そ、それは否定しませんが……だって! 急に何もない所に町が現れたら誰でもビックリするだろう!?」



 レティダは必死に言い訳している。

 普段は強気でしっかり者だからこそ、こういう焦った様子が愛くるしく見えるよな。



「それよりもライク様。これで町の確保が終わった訳ですが、次はどうされるのですか?」

「そうだな……」



 まさかの1ワード使うだけで町の問題が解決してしまったので、残る問題は一つ。

 魔物と好意的に接してくれそうな人間探しだな。

 まあ、この町は移動要塞だから正直このままでも十分な気がしないでもないんだが。

 やはり同じ人間として話せる存在が欲しいよな。

 個人的にさ。


 一番来て欲しいのは、ネルシィとバーグだな。

 俺がこの世界で初めて出会った仲間のようなものだし、二人なら何となく今の状況も受け入れてくれそうな気がする。

 となると、復興させたあの町に行く必要がありそうだが。



「復興させた町まで行こうと思う」

「私達が襲おうとしたあの町ですか? ですがこのまま侵入しようとしてもまた大騒ぎになるだけでは?」



 そうなんだよな。

 今の俺はサタン状態。

 町に行ったら魔王がやってきたという事でパニックになりかねない。


 ちなみに俺がサタン状態になってからは二日経っている。

 ゴブリンのメジナと出会う頃で一晩過ごし、勇者を撃退してレティダ達と荒地で過ごしてもう一日経過。

 つまり、あと一日は人間に戻ることはできない。



「ただし行くのは明日だ。そうしたら俺に考えがある。そもそも今は徹夜明けな訳だから一刻も早く寝たいんだよな……」



 そう言っていたらさっそく欠伸がでた。

 うん、早く寝た方がいいな。



「そうですか。確かに休息は大事ですものね。であれば、ライク様はゆっくり休んでいて下さい。その間の安全は私が守りますので」

「おお、頼もしいな。だが、無理はするなよ?レティダも眠かったら寝てくれよ?」

「お気遣いありがとうございます。交代制で行いますのでその心配は不要ですよ。ではまた明日」

「ああ、また明日な」



 こうして管制塔に向かうレティダを見送ってから、俺は自室へと向かい、休む事にした。



~~~



 翌日。

 うーん、いい目覚めだ。

 やっぱりふかふかのベッドは気持ちが良いな。


 さて、早速行動を開始しようか。

 とりあえずは管制塔にいるレティダと合流だな。





 管制塔の中へ入っていくと、その制御室の中にレティダの姿があった。



「あっ、ライク様、お目覚めですか?」

「ああ。外の様子はどうだ?」

「特に変わりはありませんのでご安心を」

「そうなのか。それは良かった。じゃあ早速行動を開始しようと思うんだが、この町を復興の町の近くまで移動させてもらってもいいか?」

「はい、お安い御用です。えっと、転移先をナミラ町に指定っと。それでは行きますよ……」



 レティダがポチッと押すと、大地が少し揺れた。



「はい、これで町の近くまで移動したはずです」



 そうなのか。

 自分で作った施設とはいえ、すごいハイテクだな。

 ボタン一押しで転移できるなんてさ。


 俺は実際に転移したか確認する為に管制塔から出た。

 そして町の外縁まで近付いて地上を眺める。

 すると確かに地上には現代的な建物が立ち並ぶ、かつて俺が作った町が存在していた。

 つまり、転移は成功したという事だ。



「どうでした、結果は?」



 俺を追ってきたレティダはそう問いかけてきた。



「ああ、成功だよ。よく機械を使いこなせたな」

「お褒め頂き光栄です。実はライク様が寝ていらっしゃる間に色々試していまして……実は十回ほど練習させて頂きました」



 あっ、そうなんですか。

 まあ別に練習して失敗した所で、今なんとかなってるんだから心配いらなそうだけど。



「それで、ライク様はこれからどうするんですか?」

「決まってるだろ。この町の人達をここに誘ってみる」

「えっ!? ですが何度も申し上げることになって恐縮ですが、今のままでは……」

「ああ、分かってる。怖がられてまともに話すらできない、だろ?」

「はい。それはどうするので?」



 レティダは不思議そうな顔で俺を見てくる。

 まあ人間を怖がらせずに話し合いをするなんて普通の魔物達には不可能だろうな。

 だけど俺の場合は……



「俺がやるのは人間に戻って話をして、誘ってみる。これだけだ」

「人間に戻る? まさか本当にライク様は人間でいらっしゃるのですか?」

「えっ、今更かよ? だからそうだっていってるじゃないか。信じてくれないなんてヒドいなぁ」

「あっ、申し訳ありません。ですがなかなか信じられなくて……」



 うーん、まあこんな容姿をしているから人間に思われないのは分かっているんだけどさ。

 信じてもらう為には実際にその瞬間を見てもらった方が手っ取り早そうか。

 ただ今人間に戻ってしまうと地上に降りられなくなってしまう。

 人間に戻るのは一回地上に降りてからの方が良さそうだな。



「なら一緒に地上に来るか? レティダ一人位なら何とかなるだろ」

「地上に? ですが大丈夫なのでしょうか?」

「まあ魔力を外に放出していると不味そうだけどな。放出を抑えることは出来るか?」

「はい、そんな事は朝飯前です」



 そう言うとレティダから感じられるモヤモヤとした感覚はなくなった。

 ちゃんと制御出来ているってことだろうな、うん。



「あっ、ライク様、あっしも一緒に連れて行って下さいよ!」



 そう言ってきたのはベスレだった。

 どうやら管制塔から一緒に出てきて、俺達の会話を聞いていたようだった。



「二人か……まぁいいだろう。ベスレも魔力は抑えられるな?」

「はい、もちろんっす!」

「なら大丈夫だ。では早速行くぞ!」



 こうして俺達三人は地上に向かって飛び立つのであった。

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