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12.言葉魔法って本当なんでもありですね

「”おにぎりセット”ー(セット)で”おにぎり”! ”ランチセット”ー(セット)で”ランチ”!」



 そんな感じで言葉を削除するタイプで次々に食事を出していく俺。

 今まで気づかなかったが、そういうセットとかを余分につけた言葉を外すだけでもいいから結構汎用性高いんだよな。

 しかもこの方式だと使い放題なのがいい。

 そのおかげで際限なく食べ物を提供する事ができる。

 今みたいな状況では欠かせないな。


 ちなみにランチの内容は、その時々の想像によって変わります。

 同じランチという言葉でもバリエーションできるのがいいね。



「お、美味しい! こんな美味しいものを次々と生み出せるなんて、ライク様、あなたは神ですか!?」



 いや、ただの人間だから。

 でもこの言葉魔法のスキルって本当チートだよな。

 特に言葉削除の方法が使えるようになったから制限が実質なくなったようなものだしさ。

 俺にはたった二つしかスキルがないのにこんな充実した生活が送れるなんて言葉魔法さまさまだ。



 時間はだいぶかかったが、元魔王軍全員分の食事を出し終え、俺自身も食事にありつく。



「それにしてもライク様って不思議な食べ物をお出しになりますね。こんな食べ物見た事がないですよ? 人間の料理は一通り目を通した事はあるのですが……」



 レティダは不思議そうに俺が出したハンバーガーをを眺めている。

 まあこの世界の食べ物じゃないんだから当然なんだけど。



「この世界の食べ物じゃないからな。見た事なくてもおかしくないぞ」

「この世界の食べ物ではない……? もしかしてライク様って異世界から来られたのですか?」

「ああ。王に召喚されてきた」

「王に召喚された? 王が召喚するのは人間だけだったはずですが?」

「ん? 俺は人間だから別におかしな事じゃないと思うけど?」



 俺の言葉を聞いてきょとんとする元魔王軍の皆さん。

 こんな反応されるのももう慣れてきたな。



「そうですか。でも例えライク様が人間だったとしても私はついて行きますよ! こんなにお優しくて強いお方ならば安心してついていけます!」



 そうだそうだーと他の魔物達が叫ぶ声が聞こえてきた。

 うーん、俺に良い印象を持ってもらえているのは嬉しいんだけど、それじゃ困るんだよな。

 安心して住める町が欲しい訳だし。

 この元魔王軍の魔物達がついてきたらまず人間の町には戻れそうにもないしさ。



 俺は安心して住める町でゆっくり過ごしたいという事、元魔王軍の魔物達がいると人間達と一緒に過ごせないという事を伝えた。

 すると……



「ライク様は人間なんですものね。同じ人間と過ごしたいのも分かります。ですが。誠に身勝手な言い分で申し訳ないのですが、どうしても私達にはあなた様が必要なのです!あなた様を失ってしまっては……またあの魔王に仕える他になくなってしまいます……」



 確かにそうか。

 元々魔王に仕えていた奴らなんだもんな。

 もし洗脳されているという設定が使えないのならば魔王軍に戻るしかなくなる。

 他の仕事をすれば良いのかもしれないが、みんながみんなそうするとなると魔王がどうしでかすか分からないもんな。

 何しろ一週間も断食させるほどの奴なんだ。

 さすがにそんな奴の所に行かせるのは可哀想だよな。

 どうしたらいいものか……



 この魔物達をかくまうにはどうしたらいいのか?

 魔物達と暮らすだけなら魔物の町を適当な所に作ればいい。

 だがそれでは勇者含む王都軍の標的になりかねない。

 その事を避けるためにも人間とも、一緒に暮らしたいんだよな。

 それ以前にやはり人間として、人間と会話したりしたいしさ。

 見た目がどうであっても俺の根底にある感覚は人間のものだからな。


 人間と魔物が混在した町。

 そんな町が作れれば、王都軍からも魔王軍からも攻撃されにくい理想的な町ができる気がする。

 ただそこで問題になるのは、種族間の揉め事だな。

 人間と魔物は長年敵対してきた訳だし、揉め事が全くないことはあり得ないんだよな……



「ちょっと聞きたいんだが、もしお前達の町に人間が住むようになったとしよう。その場合、人間とうまくやっていけそうか?」



 俺の問いを聞き、ガヤガヤと騒ぎ出す魔物達。

 するとレティダがこちらを真っ直ぐ向いてこう言った。



「正直分かりません。ですがその事をライク様が望まれるなら、私は全力でそれを実現させてみせます!」



 嘘偽りがないかのようにハッキリした口調でそう言ってのけるレティダ。

 すると、他の魔物達も頑張る、実現させてみせると口々に言いだした。

 どうやらやる気は十分なようだな。

 後はどこに町を作るかって事と、魔物と暮らすことに好意的な人間が必要だな。

 好意的な人間はなかなか見つからないだろうし、とりあえず場所を決めようか。



「レティダ、人間と魔物が一緒に安心して住めそうな場所ってどこかにないか?」

「そうですね……それは難しい質問です。何しろ前例がないですからね。人間と魔物の町の境界はどこも激戦区になってしまいますし……」



 まあそうなってしまうよな。

 人間と魔物は争いあってきたらしいし、そんな状態で人間と魔物の領域の境界で安全な場所なんて普通はないか。

 もしそんな所があったら今の俺達にとって理想郷って訳だ。

 そんな都合良く行く訳がない。


 ……ん?

 待てよ?

 もしかしたら、ああすればいけたりしてしまうのか……?



「試してみたい事がある。ちょっとこっちに寄ってもらってもいいか?」

「はい、分かりました。何をなされるおつもりで?」

「まあ、見てなって」



 幸いここは何もない荒地。

 周囲に何もないから、最も融通の利く土地でもあるんだよな。

 そんな土地に俺は……



「草+今日+(り)で”りそうきょう”!」



 俺がそう叫ぶと何もない荒地に一つの巨大な都市が急に出現したのだった!

 その様子を見たレティダ達は度肝を抜かれたようで……



「えっ? な、何で町がこんなところに……? わ、私は夢でも見ているのでしょうか?」



 腰抜けてへたりこみながらそうつぶやくレティダの様子を見て、俺はニヤリとほくそ笑んだ。



 理想郷。

 とはいってもそれが本当に全員にとっての理想郷かどうかは分からない。

 だが俺が思い描いた通りの理想郷がそこにはあった。


 まず、住みやすい近代的な家と豊かな自然に囲まれた空間。

 建物と自然の調和がうまく取れていてちょうどよい。


 そしてこの都市には管制塔みたいな施設があって100キロ先まで周囲を見回すことが出来る。

 さらにステルス機能がついているので都市の場所は感知されにくくなっている。

 その上この都市、何と移動するのだ。



 都市を移動させるための施設があるので、そこに俺とレティダとベスレはやって来た。



「本当にこの都市は動くのですか?」

「ああ。このボタンを押すと動くぞ。ポチッとな」



 俺があるスイッチをポチッと押す。

 すると……



 ゴゴゴゴゴ……



「な、何ですか!? 地面が大きく揺れて!?」

「そ、それに何か景色が動いてますよ!? まるで空に浮かんでいるような?」



 管制塔から見えるモニター画面はだんだんと高度が上昇していく様子が見えた。


 そう、実はこの町、空に浮くんです。

 しかも緊急時にはこの町一帯を転移させることも可能だったりします、はい。

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