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10.魔物の大群を洗脳することになってしまいました

「さ、さすがは魔王様……あの悪夢の魔人をまるで赤子のように……」



 その声がする方を振り向くと、そこには何人かの小さい鬼、つまりゴブリンがいた。



「あっ、みんな、無事だったんだね、良かった!」

「メジナか。よくぞ魔王様をここまで呼んで来てくれたな。おかげでワシらの村は守られた」

「うん、本当に良かった。ありがとう、魔王様!」

「い、いや何度も言っているが、俺は魔王じゃなくてただの人間だから……」



 俺がそう言うとキョトンとするメジナ以外のゴブリン。

 この容姿で人間だって言っても信じてくれないだろうが、それが本当の事なんだって!



「またまたぁ。魔王様はお世辞もうまいですな。自分をそんなに卑下なさらなくてもいいんですぞ。ささっ、お礼にワシらの村でゆっくりくつろいでくだされ」



 まあそういう反応になりますよね。

 もう面倒になってきたからゴブリン達にとっての魔王で良いや。

 面倒な仕事は断じてお断りだけども。


 俺はそう割り切って、せっかくだからゴブリンの村にお邪魔しようとしたんだが……



「デビルブレス!」



 背後からそう叫ぶ声が聞こえたので、俺は振り向くと、何やら黒いものが体全体に襲いかかってきた!?

 しばらく耐えていると黒いものはなくなった。

 何だかちょっと体全体がピリピリするな。

 何かかゆくなってきた。



「くそっ、偽物とは言えども、さすがは魔王様の姿をしているだけある! レティダ様のブレスが効かないなんて!」



 どうやらさっきのは攻撃だったらしい。

 振り向いた先には前に復興したネルシィ達の町を襲ってきた魔王軍の奴らだった。

 偽物とか言っているが、もしかして本物の魔王に会ってきてようやく気付いたのか?



「おいおい、ずいぶんと手荒な歓迎だな。一体どうしたんだ?」

「黙れ! よくも我々をその姿で騙してくれたな!?」

「いや、騙すつもりなんてなかったし、そもそも初対面の時から俺は魔王じゃないって伝えたはずだが?」

「その姿を見てそう思える訳がないだろ! さあお前達、偽物に魔王の鉄槌をぶつけるのだ!」



 そう言って周囲を黒く染めるほどの魔王軍は一斉に俺の方へと襲いかかってきた!

 あー、面倒臭いな。

 ちょっと痛い目にあってもらって撤退したもらった方が良さそうか。

 よし。



 俺は翼を羽ばたかせ、上空へと飛び上がり、距離をとる。

 相手の魔王軍の奴らも飛んで来るが問題ない。

 俺は一息ついてから魔力を貯めて、そして……



「星+光+(なる)で”せいなるひかり”!」



 俺が放った魔力は強大な聖属性の魔法へと変換され、魔王軍の魔物達を浄化していった。

 ふふ、悪魔にはこういう魔法は効くだろ。

 これで魔王軍は一掃―――できなかった。


 聖なる光が消えた時の光景に俺は目を疑った。

 なんと、魔王軍の敵が誰一人としてやられている様子がないのだ!?



 あれっ、おかしいな?

 自分で言うのもなんだが、あんな強大な魔法をぶつけたのに、何でコイツら全くやられていないんだ?

 実はこいつら、見た目と違ってかなり強いんじゃないか!?


 ヤバい。

 早く逃げなければ……

 でも相手の魔王軍の軍勢も先程までの動きが嘘のように俺に襲いかかって来る様子がなく、その場で滞空している。

 どうしてコイツらは襲って来ないんだ?



 俺は状況をよく分からないまま、とりあえず地面に降り立った。

 すると魔王軍の奴らも同じタイミングでゆっくりと地面に着地する。

 そして魔王軍の中の一人が前へ進み出してきた。

 なんだよ、やるってのか?


 俺は身構えていると、



「我が敬愛なる魔王様、いや、それでは失礼すぎますね。我が主たる聖魔王様、先程の我々の無礼な行動をお許し下さい! 我々にその罪を償わせていただけないでしょうか? 何なりとご命令をお願いします!」

「「「お願いします!!!」」」



 様々な魔物達が一斉にそう叫ぶのが耳にジンジン響いてくる。


 へ?

 何でこんなことになってるの?

 それに聖魔王様ってなんだよ?

 聞いたことねえぞ。



「おいおい、お前らどうしちまったんだよ? 魔王の偽物の俺を倒しにきたのではなかったのか?」



 俺がそう呼びかけると、どの魔物も慌てふためいた様子になっていて。



「本当に申し訳ありません! あんなクソみたいな魔王の、それも偽物扱いをしてしまうなんて!? 何て愚かだったのでしょう、私達は……」

「い、いやお前達は命令に従っただけだろ? 今更恨むつもりもねえよ。それより、早く俺に攻撃しなくていいのか? 魔王にまた何言われるか分からねえぞ?」

「そのような事をする必要はございません! あなた様こそが我らの真の主であり、聖魔王様なのです! もうあのような愚かな魔王に従う必要なんてないのです! さあ、どうか我らにお導きを!」



 おいおい、これって洗脳しちまったんじゃないか、俺?

 先程までの考え方とまるっきり変わっちまってるんだけど?

 そもそも聖なる光ってどういう魔法だったんだ?

 とりあえず説明書さん、ご説明お願いします!



 俺はいつもの要領で説明書を出現させ、目の前に現れた紙を読む。

 そして分かった内容は―――



======


 聖なる光

 自分に対する心象を最大限良くする精神操作魔法。効果は一時間ほどできれる。


======



 あっ、これ完全に洗脳魔法だわ。

 一時間で切れるってことは、猶予は一時間しかないって訳か。

 ならば。



「メジナ、それに他のみんな。すまんが、ちょっと急用が出来たから、じゃあな。”店員”ー(ん)で”てんい”!

「えっ、ライク様いきなりどうしたんです―――」



 俺はそう言ってその場から姿を消した。

 うん、逃げるが一番だよな。

 せっかく歓迎してくれようとしたメジナ達には悪いが、仕方がない。

 襲われたらそれどころじゃないからな。

 安全第一だ。


 こうして俺は遠く離れた場所に着地する。

 ふう、これで振り切れたかな?



「聖魔王様、いきなり転移するなんてヒドイですよー。みんなついてこれないじゃないですか!」



 えっ!?

 俺は声が聞こえる方に振り向くと、そこには先程の悪魔がいた。

 くそっ、コイツも転移できるのかよ。

 これは誤算だったな……



 ちなみにすぐについて来られたのはその悪魔一人で、他の魔物は少し遅れて追いついてきた。

 少し遅れるとはいえ、みんなついてきてしまうのが恐ろしい。



「すまないが、俺を一人にさせてくれ。一人でないとできない事なんだ」

「でしたらその用事の直前までは護衛させて下さい! あのクズな魔王の配下が聖魔王様を襲ってくるかもしれませんから!」



 確かにそうかもしれないけどさ。

 君だって一時間後には俺を襲うことになるんですよ?

 まあ洗脳された相手に何言っても無駄か。


 はぁ。

 どうするかな、この状況?

 困ったな……

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