新たなる提案
誤字脱字は、スルーでお願いします。
公爵が謁見の間から、再度姿を表すと騎士とメイドの三人がヒソヒソと何かを話し合っていたが、気にせずいまだ固まったままのイーリャの襟首をむんずと掴むと、謁見の間に引っぱっりこんだ。
磨き込まれた謁見の間の床を、ヒールが擦れてキュルキュル音を立てながら引きずられるままのイーリャであったが、ある人物の声が聞こえた途端に、現金にも正気を取り戻した。
「おお…イトリィーリャ…。大きゅうなったのぉ~。此度は隣国アジュールとの結婚…よう決心してくれたのぉ……」
「はっ!おっ…伯父上様。お久し振りに御座います。ご健勝のようで何よりです。して、我の結婚についてで御座いますが、今一度ご一考を賜りたく……っ…」
イーリャが勢い良くミットラス王に話しかけるが、途中で父親の公爵に顔面を掴まれ、黙らされる。いわゆるアイアンクローであった。
「この…バカ娘めがっ!兄上に対して、なんたる無礼な態度……許せぬっ!!」
ギリギリと音がするほどに、イーリャの顔面を締め上げる公爵に、流石にミットラス王から待ったがかかる。
「待て待て。ラルファスよ…自分の娘であるぞ?その様におなごの顔を掴むのは、余はどうかと思うぞ?おおっ…可愛らしい顔が真っ赤じゃ…可哀想にのぉ……」
「なっ…。兄上は優しすぎますっ!これぐらいで弱音を吐く娘に育てたつもりは、御座いませぬ!」
「いや………問題はそこではないじゃろ……」
「……では、どこでしょうか?はっ!もしやイーリャの顔でしょうか?……そうで御座いますね、唯一の取り柄であり、アジュールの王子が惚れた程の顔でしたな……。以後、掴む場所には考慮させていただきまするっ!」
ミットラス王は、頭を抱えた。致命的と言っていい程、弟との話が噛み合わなかったのであった。
話の噛み合わなさは、流石にイーリャと血が繋がった親子である。
弟の子育ては、大丈夫だったのかと心配になって来る。痛みに言葉もない様子のイーリャを、見つめながら、弟の公爵に溜め息混じりの言葉を告げる。
「はあ…もうよい。ラルファスは下がっておれ…」
「むっ…。ご命令であるならば、喜んで。しかし、お願いであるならば………」
「命令じゃっ!」
「わかりました。御前を失礼致します……イーリャ…わかっておるな?余計な事は喋るでないぞ?後、兄上への無礼な振る舞いは万死に値するぞ。いいな?」
「…………………………………」
余りの父親の言動に咄嗟に返事が出来ないイーリャであったが、去り際に「返事は?」と、問い掛けられると「はっ…はい……」と声を絞りだし返事をした。
公爵が謁見の間から出ていくと、イーリャは深い深呼吸をして、気持ちを切り替える事にした。
「ふぅ~~~……。伯父上様…。分かっては居るのです…我がアジュールに嫁がねばならぬと…。しかし、我には長年の目標があり、要人を自分で守りたいという……」
ミットラス王は軽くイーリャの肩を叩くと、優しくこう呟いた。
「イトリィーリャよ…お主の気持ちは、分からぬでも無い。余が後、もう少し若かったのならば……」
「若かったのならば?」
「余がお主の変わりにアジュールに嫁いでやれたのだがのぅ……」
その発言を聞いたイーリャは、流石にそれは無理だろうと思ったが、その伯父上の優しい気遣いの言葉が嬉しかったのであった。
「伯父上様、有り難う御座います。そのお気持ちだけで十分で御座います…」
「そうか……では余の方からも一つ伝えておこう。お主の夢であった要人の警護じゃが、何もこの国に限定せんでも、良いのではないか?
ミットラス王は髭を触りながら、イーリャに提案をした。
「と、言いますと?」
「ウム……。アジュールの要人……つまり、結婚相手の王子を護って差し上げても良いのではなかろうか?」
このミットラス王の発言に、イーリャは驚いた。確かに要人の警護したいと思っていたが、他国には考えが及んで無かったのだ。
素晴らしい提案を聞きイーリャは喜び、ミットラス王にお礼の言葉を述べたのであった。
「有り難う御座います、伯父上様っ!!それはとても良い案で御座いますね!我は早く邸に帰り、アジュールへ向かう支度をして参りますので、これにて御前を失礼させて頂きたいのですが、宜しいでしょうか?」
「良い良い…。お主が元気になったのならば、それで余は満足じゃぞ?」
単純なイトリィーリャに、ミットラス王は相好を崩して微笑むと、退室を許可してあげたのであった。
イーリャが足取りも軽く謁見の間から、出て行くと入れ替わりにラルファス公爵が入ってきて、ミットラス王に喋りかけた。
「イーリャが上機嫌で出て参りましたが、兄上が何か諭して下されたのですか?」
「フム…余は少し話をしたまでじゃよ……」
「左様で御座いますか………」
若干腑に落ちない顔をしていたラルファス公爵であったが、それ以上の追求はしなかったのであった。
「イトリィーリャの行く末に幸あらんこと、余は切に願うばかりじゃ………」
ポツリと小さく呟かれたミットラス王の言葉は、謁見の間に消えて行き、誰にも聴こえる事はついぞ無かったのであった。
う~ん…。想像以上に、公爵が気持ち悪い感じに仕上がりましたっ☆
ブラコンて奴ですね?兄上至上主義者!こんな筈じゃなかったんですけど、これはこれでいっか。
後、イーリャ単純です。戦い関しては強いけれど、頭は余り良くは無いです。勝手の違う他国で暮らして行けるのか?レディー教育も殆ど皆無です。
イーリャの明日はどっちだ?
更新の行方もどっちだ?
遅いですが、見捨てないでください……。