ウッカリ楽しんでしまった報いを受けよ
書けた!そして直ぐ投下!!
なので、誤字脱字か有ります。
ウロウロ王宮内をさ迷っていたイーリャの視界に、忙しそうに、荷物の籠を持って通路を横切るメイドが見えた。
イーリャはそのメイドに、謁見の間までの道を教えて貰う為に呼び止めた。
「そこなメイドよ…しばし待たれよっ!」
呼び止められたメイドは、麗しい外見なのに言葉使いが変な少女に声を掛けられ、驚きを隠せずに居た。
希少価値のある、フェアリー金糸で編まれた美しいドレスを着たまるで本物の妖精と勘違いしてしまいそうな、美少女が訝しげにメイドに再度話しかけて来る。
「すまぬが、謁見の間へ行きたいのだが、迷うてしまってな…。急いでおるのだが、案内をしてはくれぬだろうか?」
麗しい顔を、すまなそうにゆがめるイーリャに、メイドは義侠心がわいたのか、声を上擦らせながらも、了承した。
「かっ…かしこまりました!!謁見の間はこ…こちらでは無く、階下に御座います!」
「うむ…そうであったか…。どうやら登り過ぎた様だな……」
「登り過ぎ、で御座いますか?貴女様の様な高貴な身分の方には、案内役として護衛の騎士が付く筈ですが……」
「おお、そうであったのか?護衛の騎士は、どの程度の強さであろうか?」
「ええっ?それはお城に勤められる方達ですので、とてもお強いでしょうが、どの程度と申されましても………」
「ドラゴン位は片手間で倒せる程であろうか?」
イーリャの興奮した表情は、頬が上気してそこはかとなく艶がまして、その気が無いメイドおも、妙な気持ちにさせてしまっていた。
「そっ…それよりも、宜しいのですか?急いでいらっしゃるので御座いましょう?」
「そうであったっ!!すまぬな、騎士と聞くと強いかどうかが気になってな……」
「そうで御座いましょう…ご自分を守って下さる騎士が弱かったら大変ですものね?」
「うむ、そうであるな?王族を守るやからが腑抜けで、惰弱であっては、面白くないからなっ!」
微妙に噛み合ってない会話を交わしながら、小走りで謁見の間までやって来たイーリャとメイドであったが、謁見の間の扉の前には騎士が二人立っていて、小走りで近付いて来る二人に鋭い眼差しを送って居た。
流石は自国の騎士である。城門の前に居た兵士よりは使えそうである。
「何者だっ!現在謁見の間は使用中であるっ!何人も中には入れるなとのお達しだっ!!」
二人の騎士が掲げていた槍を、扉の前で交差して、それ以上はイーリャを近付けさせない。
メイドがビクビクしている間に、イーリャは前に出る。
片方の騎士は、メイドをかばうように前に出たイーリャにピューッと、口笛を吹き、もう一人の騎士は少し眉を上げた程度で微動だにしない。
「ふむ…。通せと言っても通してくれそうには無いな……」
「当たり前だっ!!」
「ははっ…。ならば押し通るまでよっ!!」
イーリャがいきなりドレスの裾に手を突っ込んだ。それを見たメイドは顔を赤くし、オロオロしながら、イーリャを止めに入る。
「ひいっ!お嬢様、はしたのう御座いますっ!今すぐお止めになって………」
止める言葉が止まる。メイドの目の前には、ドレスの中から大剣を取り出し、構えたイーリャが居たからだ。
物凄い大きな剣が、薄いイーリャのドレスの中から出てきたのだから、メイドが驚くのも無理は無い。
一連の出来事を少し離れた場所から見ていた騎士の二人は、目の前の一見すると麗しくも、儚い外見の少女がただ者ではない事に、すぐに気付いた。
騎士二人は持っていた槍をイーリャの方に構え直したのとほぼ同時に、イーリャが物凄いスピードで、騎士二人に肉薄してくる。
そして二人の目の前で消えた…と、思った次の瞬間に上部より二振りの大剣を、力の限りに縦に降り下ろして来たのだ。
ギィンッ……ギギギ…キンッ!
寸での所でイーリャの大剣を止めてみせたが、続く猛攻に、防戦一方の二人の騎士達。
ガッギィン……。ガギンッ!ギャリンっ!!
両者の剣撃の音が通路にコダマする。
イーリャの重く速い剣撃に、必死に攻撃しようとするも、槍で防ぐことしか出来ない二人の騎士は、内心死を覚悟していた。
「ふうん……お主達…まだまだよなぁ~?」
イーリャがつまらなそうに、そう言うと騎士二人の持っていた槍が、イーリャの大剣にいとも容易く弾き飛ばされ、ピタリと二人の首の横に大剣が、突きつけられた。ほぼ同時に、誰何の声が投げ掛けられた。
「止めよっ!止めよっ!!ここを何処と考えておるのだっ!?兄上…王が居られるのだぞっ!!」
それは謁見の間に居たイーリャの父であるローゼンバーグ公爵であった。
「こっ…公爵閣下っ!?危険で御座いますっ!お早くお逃げになって下さいっ!!」
「ここは、我らが時間を稼ぎますのでっ!!」
二人の騎士は突如イーリャの足に片方ずつ抱き付くと、死にもの狂いで叫んだのだが、公爵はその場を動かず大きな溜め息をついたのであった。
「はぁ~~~~~~~」
騎士二人は、何故だこの緊迫した状況で公爵が溜め息をついたのか分からず、キョトンとした間抜け面で公爵を見てしまったし、突然の事に全く着いて行けず、固まったままだったメイドも、ゆっくりと公爵に視線をやった。
そして、視線をウロウロさせながら、滝のような汗をかいているイーリャの姿があった。
「何か…言うことがあるであろう?」
最初は自分達に言われたのかと思った騎士二人であったが、公爵の視線の先に居たのは、自分達がしがみついて居る少女であった。
公爵閣下の知り合いか何かだろうかと考えた二人であったが、次の言葉に驚きが隠せなかった。
「それとも、申し開きすら無いのか?どうなのだイーリャよ?」
その言葉にイーリャは、慌てて言い募った。先程までの強気な態度は一切無くなっていた。
「父上っ!その…この者らが、謁見の間に通さぬと言うので、つい………」
「つい、でお前は王宮内でこの様な要らぬ騒ぎを起こすのか?それと、どうやってここまで入って来た?お前が来たら知らせよと、兵には伝えてあったが、その報告も無いのだが?」
途端に黙り混むイーリャ。その横では、イーリャの足にしがみついたままの騎士達が、納得した顔でイーリャと公爵の話を聞いて居た。
この少女が、噂の変人姫か……。噂に違わず変わって居られると、思ったのは仕方が無い事であろう。
「大方、どこぞより勝手に侵入したのであろう?全く……この様な調子で、他国に嫁げるのであろうか……ワシは心配になって来たぞ!!」
公爵の最後の一言にその場は再度固まった…イーリャ以外は。
「忘れておりましたっ!その結婚お待ち頂きたく……」
「今さら何を言っている?すでに承諾の書簡を届けに行ったのだぞ?もう止めるのは無理であるぞ?」
「のぉ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!」
イーリャの悲痛な絶叫が、通路に響き渡ったのであった。
眠いです。