今更分かっても後の祭りである!!!
書けました。フフフのフ
兄達二人が落ち着くのに、少々時間はかかったのだが、何とか落ち着いてもらい、後を追ってきていたザザ婆やにお茶を煎れてもらい、一息ついた後にセルジュが萎れた花のように消沈した呈で話始めた。
「イーリャよ、実は先程の父上との話だが……お前はどういう気持ちで了承したんだ?見る限りでは、とても喜んでいた様だが……」
「当たり前であるっ!長年の夢に一歩近付いたのであるから、喜ぶのも当たり前でしょう?やっと…やっとなのですからっ!!」
「そっ……そうなのか?そんなにか……くっ……」
セルジュは膝の上に腕を乗せると、ソファの上で「昔はセルジュ兄上の側近になる!」とか、言ってくれたのにとブツブツ言いながら苦悩し始めた。
(お嫁さんになる!では無いところが、イーリャである)
何をそんなに苦悩しているのかと、イーリャが不思議に思いながらセルジュを見ていると、横からゴーシェが割り込んできた。
「あははっ!一応おめでとうと言っておくよ?」
性格が余り良くないゴーシェに、おめでとうと言われ少し複雑な気分になるイーリャであった。いつもいつもからかわれたり、イタズラされたりして来たので、普通に祝福をされると、面映ゆいものである。
イーリャの方も、一応お礼を言うために、ゴーシェに声を掛ける事にした。
「ゴーシェ兄上……誠に有り難うございま「いやいや、本当におめでたいよ?主にお前の頭がな…ぷぷっ……」
イーリャの話に割り込んで、ゴーシェは堪らない様子で再度笑ったのだが、イーリャは不機嫌になってしまった。
先程までは、珍しくも祝福の声を掛けてくれたと思ったのに、やはりそんなわけが無かったの様である。
「何でしょうか?我の頭がおめでたいとは?一体どの様な意味なのでしょうか?」
「ぷぷっ…そのままの意味で言ったんだが?だってお前…くくくっ……父上が言ってたのって、お前のひひひっ…結婚の事なんだぜ?」
そのゴーシェの笑いながら言った言葉が飲み込めず、最初は勘違いした。血痕の事と。
我の血の痕の事を先方に伝えるとは一体?意味不明である。イーリャが全然分からず悩み始めた結果、詳しく説明をして来るゴーシェ。
その表情は産まれてこの方見せたことがないような、満面の笑みであった。
「だからな、お前ももう十五だろ?普通は公爵家の一人娘って言ったら小さい頃から許嫁とかが居るだろ?普・通・は……」
お前が普通を語るなっ!!!と、掴み掛かりそうになるのを必死で耐えながらイーリャは、ゴーシェに続きを顎をシャクって催促する。
「でも、お前には居なかった。まあ、うちが公爵家だったってのもあったし、本人が変人だったしな…」
お前が変人と言うなっ!!!と、殴り掛かりそうになったのを今度も耐えた。
「だが、三年程前に隣国の王子が視察に来ただろ?
あれでお前の運命は決定付けられた……。隣国の王子……アジュール国の第一王子クルセウスが王城の庭園でお前を見て、一目惚れだとさ…くくくっ…まあ、お前は外見だけは深窓の姫を地で行く程の見た目だもんなっ……中身はただの変人なのにな。それで、内々にクルセウス王子の婚約者として扱われて居たんだぜ?だから十五まで表だって許嫁が居なかったんだよお前は」
黙ったままで喋らないイーリャの反応に、気を良くしたゴーシェが畳み掛けて来る。
「んで、さっきのは父上なりのお前への意志確認だったのさ!父上はお前には甘いからな…お前が嫌がったら結婚の話は無かった事にするつもりだったんだろ?でも、お前が乗り気な返事なんかするから………」
流石にここまで言われたら、変人と名高いイーリャでも分かる……そう、イーリャは近衛隊への入隊の意志確認と勘違いして、結婚話に嬉々として応じてしまったのだ。部屋を出るときの寂しそうな父上の横顔が浮かんだが、ゴーシェへの怒りも浮き上がって来た。
「何故教えてくれなかったのですかっ!!」
顔を真っ赤にして怒るイーリャだったが、ゴーシェの次の言葉に怒りは引き、今度は青ざめ始めてしまう。
「おいおい、俺に怒る暇があるなら、父上を追った方が良いぜ?なんせ、先方に伝えて来ると言ってただろ?それってきっとアジュールの使者の事だぜ~?くくくっ……」
イーリャは青ざめながら、部屋から勢い良く飛び出して行ったのであった。
その場に残ったのは、可笑しくて堪らないといった表情のゴーシェと、膝を抱えてブツブツ言っているセルジュのみであった。
「ひひひ…間に合うかのねぇ?」
実はわざと説明をユックリしていた、ゴーシェの笑いを含んだ声が部屋に響いたのであった。
眠いです~。