死にたがり王子と悪役令嬢という組み合わせはどう考えても相性が悪すぎる!【4】
その夜、アーネストの執事から電話があった。アーネストの居場所を知らないかということだった。
アーネストは王宮に帰らずそのままわたしのところへということが当たり前になりつつあったから、この時間まで連絡しなかったと。
嫌な予感がした。
あの皇子だからこそ思い浮かぶこと。
まさかなと思いつつあの皇子はしかねない。
ああほら。月明かりに照らされる皇子を見てわたしは学校の屋上へ来た。
なにしているんだか。
呼びかけると冷たい声でかえってきた。
「君は僕のことを見ていない」
アーネストはまたも飛び降り自殺しようとしている。本当なの嘘なのか。あのときだって手すりにつかまりながら本気だったのか。
余裕こいていた。皇子が自殺なんてするはずないのだから。だって未来永劫裕福だ。そんな幸せの中で死にたいなんて本気で思うはずがない。
そんなの思うの馬鹿くらいだ。
あれ? 前世の記憶?
あれ? 皇子の片足が。
アーネストの首根っこを掴み後ろへ引きそのまま勢いよく横へ押し倒した。
「なんて馬鹿なことをっ!」
本当に馬鹿だ。こんな馬鹿初めて見る。
「なに命を捨てようとしているの。本当に馬鹿なの。いや馬鹿よ。正真正銘の馬鹿。この大バカ者」
胸倉を両手でシャツがぐちゃぐちゃになるまでに掴んでいた。
突拍子もない行動をする。どうしようもない。
「僕はただ……君に見てほしいだけなんだ」
真っ直ぐうるんだ瞳。
はっとする。今まで見ていなかった。今まで兄さまたちと自分だけのことばかり。
「だとしてもこんなことするなんて」
病んでいる。
「アーネスト……あなた、泣き虫なのね」
流れている涙をすくう。
腕を掴まれ見つめ合う形となる。
腕を放してもらい、離れて先に立ち手を貸す。
「もう立って」
「ごめん、君を愛してしまって」
「なに言ってるの?」
愛す、なんてそんな思われるほどのことをした覚えはない。
冗談半分で笑うがアーネストは本気のようだ。苦笑するしかない。
「わたしは、わたしがどうすればこの先ずっと幸せに生きていけるのかということだけしか考えていない。まわりのことなんかどうでもいい、そう思うくらい何も考えられていないの。だからわたしはあなたのことも……」
「一目惚れだったんだ。一目惚れはすぐに冷めるっていうけど、僕のはそんなんじゃない。こうやって接して、僕は君じゃなきゃだめなんだって思った」
お互いの本音を打ち明けた。
「気持ち悪いよね? こんな」
「気持ち悪いほど真っ直ぐね」
笑い合う。
少しして、アーネストは名案を切り出した。
皇子がヒロインと婚姻するという名案を。