死にたがり王子と悪役令嬢という組み合わせはどう考えても相性が悪すぎる!【3】
とにかくわたしはファルネウスの側から離れたくない。ファルネウスの生まれ育った所から出たくないのだ。
病んでる王子のところへいったところで破滅の道を辿るのだろう。内容は全く知らないけど。
紅茶を飲み一息つく。
弟は力になってくれなそうだ。他に使えるものはないだろうか。
自分一人だけの思考の世界へ入ったところで扉がノックされた。どうやら来客のようだ。珍しくわたしの。滅多にないことに驚いていたらクオンも同じように感じていたらしい。
「なんなのあなたは。わざわざここまで来たの?」
「君に会いたくて来た」
このくさったあまい言葉はなんなのでしょうか。
玄関で仁王立ちして腕を組みたくなるこの状況は一体なんなのでしょうか。
こんなキャラ全く知らない。
「わたしはあなたに構っている暇はない」
「僕が本当に死んでもいいのか?」
この男は何を言っているの。
せっかく笑顔をつくっていたのに一気に顔の筋肉の力をなくす。実際は取り繕うことをやめたのかもしれない。
「勝手にしなさい」
「ほ……本当に死ぬぞ!?」
目に涙浮かべて言うことじゃない。これ以上言えば本当に死んでしまいそうだ。
「皇子落ち着いてください。とりあえずクッキーが残っているので一緒に紅茶でもいかがですか」
棒読みで皇子をお茶会へ招待した。
クオンには席を外してもらうことになるかもしれない。もっとクオンに嫌われるかな。
「わたしは転生しました(きっと)」
ゲーム上での登場はない皇子に構っている暇なんかないのに。わたしはなぜか皇子に話していた。
「歳が二桁になった頃、思い出したの私の結末を」
なに言ってるんだこの令嬢。頭がおかしくなったのか。小説の読みすぎか。頭お花畑か。
と思って身を引いてくれればいい。
そう思って初めて打ち明けたのに。
彼の反応はすっとんきょんな顔をしたも、そうかだったらヒロインと弟くんと仲良くなればいいじゃないかーーだと!
ふざけているのか。
他の人がわたしの話を聞いたらわたしがふざけていると思われるのだろうけど。いやそれが当然なのだけど。そうであってほしいのだけど。
皇子は頭がいかれている。
季節休みが終わり学校で出会った皇子は、わたしを連れるなりヒロインのもとへと行きやがった。なぜか皇子のこととなると腹が立ってどうしようもない。
そうしてお友達となった。
……お友達となった。
……おかしい。
わたしが彼女とちゃんと対面するのは学校を卒業してから兄さまの婚約者として挨拶されるときだ。
そんなの考えるだけで血の気が引く。
アーネストとヒロインも仲良くなった。実に仲が良くなった。そこで一つ企みが浮かんだ。
「アーネスト、あなたとエレノア……ご結婚されたらどう?」
三人での何回目かのお茶会で、実に名案というかのように声を弾ませにこやかにわたしは笑った。わたしたち三人はもう親友に近い。ヒロインにとってはすでに親友かも。
エレノアは頬を染めそんな……と言いながら微かに上がる広角は隠せていなかった。
ああ脈ありだなんてエレノアのことしか見ていなかった。