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ヨミと修行を始めてから、二週間が経った。今はヨミに“幻影”の使い方を試す、最終試験を受けている。
「・・・いくよ、サトリ。この僕に一本入れることができれば、この修行は合格だ。」
「一本? そんな簡単でいいのか? ・・・ってまぁヨミのことだから、本気で来るんだろうけどさ。」
「当たり前だ。では・・・・行く。」
ヨミとの最終試験が始まった。・・・ヨミの“幻影”には大きく3つの技がある。
「!? いきなり『残身』4体かよ。」
「ああ、手加減は君のためにもしないよ。」
ヨミの体が4つにぶれる。・・・先の盗賊を倒したのがこの技だ。『残身』は相手は視覚を誤認させ、自身の動きをぶれさせる技のことだ。最初は分身したように見えたのだが、実体はないので微妙に違うらしい。
「フッ!・・・」
「あぶなっ! 」
4つにぶれたヨミの内の1体が攻撃を仕掛けてきた。しかし、オレの出していた『残身』に当たり、『残身』が代わりに攻撃を受けてかき消える。・・・ちなみにオレは『残身』を1体しか出すことができない。
「避けられたか。・・・策を変えよう。」
「ッ!(来るか・・・集中しろ・・・)」
次の瞬間、4つあったヨミの体がかき消え、辺りに静寂が訪れる。
「(どこだ・・・何処から来る・・・)」
“幻影”の2つ目の技、今ヨミの使っているのは『無音』。相手の聴覚を錯覚させ、自身と周囲の音を消し去るのがこの技だ。・・・これら『残身』『無音』と『命令』を併せた3つの技が、“幻影”の力らしい。
「(落ち着け・・・まずは『残身』を出そう・・・)」
かき消えた『残身』を再び出す。・・・ヨミの技は基本的に一つずつしか使えない。それぞれが強力無比な技の為、同時に使おうとすると技同士が衝突してしまうのだそうだ。(ちなみに『命令』は集中する必要があるので、戦闘中は使えない。)
「(・・・! 来た!)」
「・・・また外れか。やるな、サトリ。」
死角から飛んできたヨミの手刀を、オレの『残身』が身代わりになって防ぐ。・・・オレの『残身』はヨミの『残身』と違い、周囲の音を消し去っている為、本体と全く遜色なく見える。
「・・・やはり、『残身』と『無音』を組み合わせた君の『残影』はさすがだ。本物と全く見分けがつかない。」
・・・そう、オレの“模倣”は一つ一つの技はオリジナルには及ばないものの、技と技を組み合わせて複合技とすることが出来るのだった。
捕捉。通常の『残身』は実体がない為、本体が動いて音を出すと、『残身』だとバレてしまいます。