第三夜
星の降る日がやってきた。
「フュイ、緊張してる?」
「別に。…トーマは」
「少しだけ」
学校から帰りながら僕とトーマは話していた。
今夜のことを。ただし、【星】というキーワードは出さずに。
「ただ寝ればいいことだから、深く考えることはないよね!」
トーマは開き直ったようで笑い出した。
僕もつられて笑ってしまった。
「…それじゃあ、おやすみ」
「うん。おやすみ。トーマ、いろいろありがとう」
まだおやすみを言う時間ではないけど、
夜は会えないのでそう言った。
***
僕は眠りについた。
まだ時間は8時。
9時までには眠らなくてはいけない。
それが掟だ。
僕は案外、すんなりと眠りについてしまった。
夢をみた。父さんと母さんの夢。僕の名前を呼んでいた。
僕は何度も返事をしているのに、聞こえないようだ。
父さん!!母さんってば!!!!
「!!!!!」
僕はどうしたんだろう。ぼんやりとした思考。
汗をたくさんかいている。
何時だろう。
頭がくらくらした。
外は朝のようで明るい。
フラフラした足取りで起き上がって水を一杯飲んだ。
冷たい水は体の中をつたって流れた。
視界がはっきりしてきた。
「…まだ少し眠いな」
少しなら寝ても平気だろうと、ベッドへ戻った。
その瞬間、外がふと暗くなった。
「え?」
窓へ目を向けた途端、急に明るくなった。
なんだ?
外は、暗くなっては明るく。暗くなっては明るくを繰り返している。
窓へ近づいた。
窓の外を見ると―――、
「なんだ!!!これは…!!!!」
空から眩しい光が落ちては地面たたきつけられている。
花火のようだが、僕の知っている花火を空へ上がるもののはずだ!
「…まさか」
僕は嫌な予感がした。とてもとても悪い予感だ。
ゆっくりと時計を見た。
今の時刻は…。
「……午前、1時。
ほしの…ふるよる………」
そんな…!!僕は禁忌を犯しているのか!!
現実味がない。
恐怖が体を締め付けた。
僕は死んでしまうのか…。
こんなことになるなんて。
「…あれが星」
こわい。こわいのに僕は窓から目を離せないでいた。
空から落ちる眩しい綺麗な光。
いろんな色をしている。
大きさもそれぞれ違う。
地面に叩き付けられては消滅していく光。
僕の頭に、よぎるものがあった。
「流星伝説…」
僕は今、掟を破ってしまった。
星の降る夜に起きてしまった。
そして星のことばかり考えてしまった。
厄は僕を殺しに来る。きっとだ。
もう後には引けない。僕は死ぬ。
死んでしまうのなら。
「死んでしまうのなら―――」
伝説を…―――。