第一夜 晩餐
***
「ただいま」
家に帰ると必ず、父さんと母さんが僕の帰りを待ってくれていた。
僕の家は、三人で暮らすには少し大きいくらいだ。
台所には母さん。ソファには父さん。
この空間は僕のお気に入り。
「母さん、今夜はトーマ家が来るよ」
「あら、丁度野菜が余ってたからよかった」
母さんは嬉しそうににっこり笑って料理をし始めた。
「フュイ、宿題があるなら今のうちに終わらせなさい」
読書をしながら父さんは僕に言った。
父さんは物理学者でとても頭がいい。
勤勉で真面目だけど優しい。村の人にも慕われている。
「わからないところがあったらなんでも聞きなさい」
「わかってるよ、―――トーマが来たら教えて」
それまでに終わらせなさい、と父さんはからかい口調で言った。
僕は自室にこもって宿題をした。
学校の宿題はほぼ伝説や数学、物理。
どれも面白みのない教科だが、僕は伝説だけは大好物だった。
自ら伝説にまつわる本を探しては自分なりにまとめた。
「数学はやっぱり苦手だな…」
父さんが物理学者なので辛うじて物理は成績を保っているが、数学はどん底。
数字の羅列は性に合わない。
夢とロマンのある伝説のほうが断然面白く感じた。
*****
部屋の外が少し騒がしくなった。
トーマかな? と思った矢先、
「フュイ、来たよ!」
と勢いよく扉が開いてトーマが入ってきた。
「おや、ちゃんと宿題はやってるんだね!」
「父さんに言われたからね」
「ははは、フュイのお父さん流石!」
「なにが言いたいんだよ」
他愛もない会話をしていると料理の匂いが漂ってきた。
今夜は…―――
「クリームきのこスープだ!」
居間にはトーマのお父さん、ガイさんとトーマのお母さん、ナンシーさんがいた。
「フュイ、こんばんは」
二人とも僕を見つけると笑って挨拶をした。
「学校のほうはどうだい?」
と、心配をした。(トーマにそっくりだ)
「今夜はクリームきのこスープよ」
「ナンシーそこの皿をとってくれるかい」
「フュイは座ってなさい」
「父さん、テーブルふいて」
「僕も手伝うね」
「トーマはこれを運んでくれる?」
我が家はとても賑やかだ。