2.ショート動画で宣伝をしましょう
ショート動画とは、近年【※ダンチューブ】で導入された短い動画のことだ。
【※ダンジョン専門の動画投稿、配信ができるサイトのこと】
縦長画面が特徴だが、普通の動画との大きな違いはそこではない。
(ショート動画は、投稿したと同時に不特定多数の人に届くアルゴリズムになっていて、興味のない層にも届く。だからすぐにスワイプされて、閉じられてしまうことも多い。でも、いきなり普通の動画は今の時代だと一桁再生というのも十分に考えられるからね。まずは人の目につくようにしないと)
昔はダンチューバーが少なかったので、普通に動画投稿してもある程度は見られていた。
しかし、今はあまりにも配信や動画の数が多過ぎて埋もれてしまう。
その為、動画ではなく配信が主流となったダンチューブにおいても、ショート動画でまずは広告という人が多い。
(まだチャンネルも開設してないな。チャンネルの方向性としては、このドラゴンがダンチューブをしているみたいな設定でいいかな? 私は表に出るタイプじゃないし)
本来であれば、何かに特化したチャンネルが勧められるのだが、銀色のドラゴンが喋っているだけでそれは1つのコンテンツになるだろう。
(いや、待てよ? 確かに伸びるポテンシャルはあるかもしれない。でも、いいのか?)
喋るモンスターなど、聞いたことがない。
もしこれが伸びたら、このドラゴン共々、どこかの研究施設にぶち込まれてしまうのではないのか?
そう考えた彼女であったが、すぐに考えを改める。
(別に大丈夫か。最近は自然なボイスロイドとかAI音声とか増えてるし、そこは編集したということにしよう)
ここが動画投稿の強みである。
「どうしたんだ? 動画撮らないのか?」
「撮りますよ。最初はこのチャンネルの紹介動画……といきたい所ですがやめておきます」
今のタイムパフォーマンスを重視した時代で、よく分からないチャンネルの動画が出て来てもスワイプされて終わりだ。
確かに銀色のドラゴンは珍しいが、今の時代AI動画だと思われて0秒スワイプされてしまえば、埋もれてしまう。
まずは視聴して、AIではないことを知ってもらうことが重要だ。
「特技とかありますか? 趣味でもいいですよ」
「そうだな。戦いは得意だ」
「戦いですか。具体的にどのように戦いますか?」
「火を吐いたりだな。面白味がないか?」
「いえ、最高です」
確かに、ドラゴンが火とかあまりにもシンプル過ぎる。
だが、それでいい。
(ドラゴンが火でモンスターを倒す。これには大きなメリットがある)
それは安心感である。
人間は既に予想できる展開を好む傾向が強い。
どの配信や動画にもある程度伸びるテンプレがあるのも、それが理由の1つだろう。
(ちなみに人気の配信はテンションが高かったり、ネタを入れたりが多い。私向きじゃないけどね)
ムロ達は住処をを出ると、モンスターを探しに岩の洞窟のようなダンジョンを進む。
「これがダンジョンか」
「なんだ? 初ダンジョンか?」
「はい。丁度最近16歳になったばかりなので」
「年齢が関係あるのか?」
「はい。ダンジョンに入るには年齢制限があります」
「配信とかもやったことないのか? 皆やってるみたいだが」
「ダンチューブじゃなくて、Utubeでならあります。私には合いませんでしたけど」
皆が楽しいと思っていることを、楽しいと思えないのは、つらいものである。
「早速撮影しましょう。いきなりマイナーなモンスターを倒しても、倒されたシーンをイメージしにくく、視聴者の脳に無意識に負担をかけます。ここは無難なスライムでいきます」
「普通に倒せばいいのか?」
「はい。その前にセリフもお願いします。セリフはこんな感じで」
その後ドラゴンが炎を吐きだすと、それはスライムにヒットし、光の粒子となって消滅した。
ダンジョン内では、このようにゲームのように消滅する。
ドロップアイテムとして、肉体が残る場合もある。
それを使って料理をする配信も、人気コンテンツの1つだ。
(いつか動画でそれやってもいいかもね。ドラゴンが料理するとか、絶対面白い)
撮影を終えたムロ達は、ドラゴンの住処に戻って来た。
「今日はありがとうございました」
「ああ。また来いよ」
「はい。そういえば、どうやって戻ろう?」
ムロは自分が落ちてきた天井にあるゲートをジッと見つめた。
「仕方ないな」
ドラゴンはムロを背中に乗せ、そのままゲートへと送り届けた。
その後自室に戻ったムロは、動画編集に取り掛かり、短時間で完成させた。
ほぼ無編集のようなもので、やったのは字幕を付けたくらいだ。
『うおおおおおおお!! ファイアッブレスッ!!』
本来このように叫んだりすることがないようだが、ムロの指示でドラゴンには叫んでもらった。
「よし! 後はチャンネルのアイコンをあのドラゴンにして、これを投稿してと」




