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ツンデレとデレデレの双子幼馴染とヤンデレ妹が吸血鬼の僕を取り合ってる件   作者: 十色


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3/3

第3話 妹の赤月黒子

 やっと蝉の鳴き声が聞こえるようになった。コンクリートを溶かしたようなあの独特な匂いを放つ程の炎天下にいるというのに清々しいったらありゃしない。


 理由は簡単。『あの二人』の家から脱出することに成功したから。


 あれから、ちょうどいいことに二人が言い争いを始めてくれて『髪の毛引っ張り合いバトル』に発展した隙にこっそりと抜け出すことができた。


「あの二人、僕に対して夏休み中ずっとあんな感じなのかな……」


 それを考えると気が滅入りそうになってしまう。だからあまり気にしないように努めよう。じゃないと僕の精神が持たない。


「それにしても本当に暑いな……」


 最初は清々しかったけど、じりじりと照り付けてくる夏の太陽が僕を焦そうとしてくるので、その暑さにまいってきた。


「早く家に帰ってクーラーの利いたところで休みたいよ……」


 今はとにかく体力を戻そう。今夜、再度あの吸血鬼を探しに行く予定だからスタミナは残しておきたい。まあ、見つからないんだけどね。幾度となく探しには行ってるんだけど。


「もしかして、もうこの街にはいないのかな……」


 だとしたら絶望的だ。


 でも、不思議なんだよなあ。吸血鬼って普通、陽の光を浴びるとダメなんじゃなかったっけ? なのに僕はこうして炎天下の中歩いているわけで。


 そんなこんなを考えている内に、僕は自宅へと戻ってきたのであった。


 それで思い出したんだ。そういえば、今みたいなことが以前もあったなあ、と。小さな頃、玩具の取り合いで、あの二人はよく喧嘩をしていた。まあ子供同士の喧嘩だから大事になることはなかったけど。


 でも、あの二人は一度自分の『お気に入り』を見つけると、目の色を変えてしばしば奪い合っていた。


 *   *   *


「お兄ーー!!」


「うおっ!!」


 僕が玄関を開けるのと同時に、妹の赤月黒子あかつきくろこが勢いよく抱きついてきた。否。タックルを食らわせてきた。


 すっかり忘れてた……。くっつき要員がもう一人いたことに。また暑苦しい状況に戻っちゃったよ。


 赤月黒子。中学三年生の十五才。理由は知らないけど、コイツは僕のことを『おにい』と呼ぶ。『ちゃん』を付けろよデコ助野郎。もう慣れたからいいけど。


 性格は一言で言えば天真爛漫。『とにかく明るい黒子』って感じ。なんだか、あの某芸人さんみたいだけど。


「ねえお兄? 朝早くからどこ行ってたの? 私、寂しくて寂しくて宿題も手に付かなかったよ」


「いや、お前はいつも宿題なんかしてないだろ。というか、そろそろ僕に依存する癖は直した方がいいぞ? 親離れならぬ兄離れ的な」


「嫌だ。いーやーだー! 私はお兄とずっと一緒にいたいの!」


 わざとらしくぷくりと頬を膨らませる黒子であるが、コイツの場合は吸血鬼の魅了チャームの効果で僕にくっついてくるわけではない。


 ブラコンなんだ。一言で言えば。


「ねえお兄? 話は戻るけどほんとにどこ行ってたの? 教えてくれないとお兄にGPS付けちゃうよ?」


「それ、絶対にしないでね。ただでさえお前の愛は重いんだからさ」


「そんなに重いの? 私の愛って。ねえ、どれくらい? どれくらい重いの? お相撲さん五人分くらい?」


「いや、その例えを出されても答えられないってば。お相撲さん一人分の重さを知らないから。まあ、あの二人のとこだよ。僕の意志を確認もせずに無理やり連行されてね」


「ああー、そっか。緑ちゃんにか。どんな酷いことをされちゃったの? ロウソク垂らされたり? 鞭で叩かれたり? 手錠で柱に括り付けられたり?」


「何故そうなる……」


 でも本当にそういうことをしてきそうだからなあ、緑の奴は。いつか僕もそんな酷い目に遭わされるのかな。そしたら逃げられるのかな? 耐えられるのかな? 想像するだけで怖いんですが。


「まあいいや。なあ黒子? 今日はいいのか? 彼氏のところに遊びに行かなくても」


 そう。コイツ、彼氏持ちなんだ。僕が知る限りだと、今回の彼氏が五人目だったはず。コッチは恋人いない暦を年々更新してるっていうのに。いいですなあ、モテるヤツは。まあ、兄バカじゃないけど、僕から見ても黒子ってすごく可愛いから当たり前か。


 が。首を傾げる黒子である。


「ん? その人とはもう別れたけど?」


「はあっ!? わ、別れた!? いや、お前さ。その人と付き合い始めてまだ一週間くらいしか経ってないじゃん?」


「付き合った年数とか日数だとか、そんなの関係ないし。それにさ、聞いてよお兄! アイツ、私のポッキーを一本食べやがったんだよ!? 信じられる!? それで頭にきて愛情がポキッと折れちゃった。ポッキーだけに。あははっ!」


 あははって。笑えないんですけど。え? 恋人ってそんな簡単に別れちゃうものなの? ポッキー食べられただけで? 恋愛経験皆無の僕には理解し難いんだけど。


 まあ、黒子だもんな。元々、感情の赴くがままに生きているようなものだし。だから『こういうこと』になっちゃうわけで。


「ではではお兄。リビング行こう! いつものように抱きつかせて! そして彼氏と別れて傷付いた私のことを慰めて!」


 と言って、黒子は僕に抱きついたまま、無理やりリビングへと連れて行った。それに、傷付いたって言われても。お前から別れたんだろうが。そんなの知らんがな。


「まあ、リビングだったら冷房あるし。別にいいよ。さっきなんかさ、玄関で桃に抱きつかれてたから暑くて仕方なかったんだよ」


「可哀想なお兄……。じゃあとりあえず今から涼みにリビングへレッツゴー!」


「はいはい、わかりましたよ黒子様」


「えへー。お兄大好き!」


 そう言って、黒子はより強く僕の腕にしがみついてきた。


 あ。性格は天真爛漫とか言ったけど、大事なことを忘れてた。


 赤月黒子は、いわゆる『ヤンデレ』というやつであることを。


【続く】

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