第1話 ツンデレとデレデレがすぎる双子姉妹
初めまして、十色といいます。
以前もこちらのサイト様を使わせてもらっていたのですが、今回コンテストに応募するため再登録させて頂きました。
とはいえ、コンテストについてばかり考えるよりも、どうしたら読者さんに『面白い』とか『楽しい』を贈ことができるのか。そっちに重きを置いています。
僕も楽しみながら物語を書いていきます。どうぞよろしくお願いします!
「も、桃! やめてよ! 黒也に勝手に抱きつくのは!」
「へへーん。聞かないし、聞こえなーい」
爽やかな夏の朝だというのに、今日も今日とて、双子の姉妹が僕を挟んで騒いでいる。ギャーギャーと。蝉の鳴き声がかき消されてるじゃん。
というかさ。僕は一応客人なんだから、この家に連れて来られるや否や玄関で言い争わないでほしいんだけど。冷房の利いたリビングに通してよ。真夏だよ? 何もしねないのに汗ダラダラなんですが。
「はあ!? お姉ちゃんの言うことを聞けないっていうの!?」
「へえー、こんな時だけお姉ちゃん面ですか。相変わらず調子が良いですなあ。悔しいんだったらさ、お姉ちゃんもクロちゃんに抱きついてみればいいじゃん」
「だ、抱き付くとかそんな……。で、できるわけないでしょ!」
「そうだよねけ。できるわけないよねえ。だってヘタレなんだもんお姉ちゃん。あはっ!」
そう言ってニヤニヤと笑みを溢しながら挑発をしているのは双葉桃。ナチュラルボブが似合う妹キャラって感じだ。
見た目は小学生みたいだけどね。花の女子高生にも関わらず。背が小さくて体に凹凸もないし、その上童顔。桃みたいなヤツのことをロリ系っていうのかな? 妹系あるあるではあるけど。
「へ、ヘタレですって! そんなわけないじゃない! わ、私だってそのくらいは……」
「ふーん。じゃあやってみれば?」
コイツ、本当に気が強いな。さっきから挑発しまくりじゃん。まあ、今に始まったわけじゃないけど。
「や、やってやるわよ! って、別に私は黒也のことなんてなんとも思ってないし!」
とか言いながら、緑は恥ずかしがるような、照れているような、そんな表情を浮かべながら頬を紅色に染めてモジモジとしている。あ、一応恥じらいはあるのね。ちょっとだけ安心したよ。
典型的なツンデレな態度をとっているコイツは双葉緑。黒髪のロングヘアーがとても似合う、いわゆる美人系。頭もいいし、クラスで学級委員長を務めていて人望もある。
まあ、猫を被ってるだけだけど。本当はただの暴力女だけど。今時流行らないぞ? 暴力系ヒロインとか。
「やれやれ。ほんと素直じゃありませんなあ、お姉ちゃんは。ねえ、知ってる? お姉ちゃんみたいな人のことをツンデレっていうんだって」
「つ、ツン――」
あーあ、言っちゃった。緑が一番言われたくない単語ナンバーワンを。こりゃ怖いことになるぞ。
「――桃。覚悟しておきなさいよ。後でアンタが買い溜めして冷蔵庫に入れてあるアイスを全部食べてやるんだから」
「え!!? 嘘でしょ!? 私の命と同じくらい大切なアイスを奪うとか……。無慈悲にも程があるよ!」
桃。お前の命って軽いのな。
しかし、この姉妹喧嘩、いつまで続くんだろう……。せっかくの日曜日の朝だっていうのに『私の家に来い』って緑から呼び出しくらった――わけではなく、僕の家まで来て首根っこ掴んで無理やり連れて来られたわけだけど。
ちなみにこの二人、双子なのだ。いわゆる二卵性双生児ってやつ。だから見た目は全く違うわけだけど。でも、二卵性とはいっても性格までここまで違うものなんだな。
緑はツンデレ。桃は愛すべきおバカな妹系ロリっ娘。言われなきゃこの二人が双子だとは誰も思わないだろう。
「やっぱりお姉ちゃんにそんな意気地はないかあ。それじゃ仕方がないよね。うんうん。ではでは、お姉ちゃんの分まで、不肖、この桃ちゃん様が好き放題やらせてもらうねー」
「そ、それはダメーー!!」
「あのー。ちょっといいかな二人とも。そろそろ僕、帰ってもいいかな?」
「「ダメ!!!!」」
僕の願い、速攻で却下。
だけどこういう時には双子っぽく言葉がリンクするのね。いや、コイツらとは幼馴染だから知ってるし理解してるけど。
などと考えていたら、桃の目がキラリと光った。僕の様子を見て。
「あ。ごめんね気付かなかったよ。クロちゃん汗かいてきちゃってたんだね。暑いもんねえ、玄関じゃ」
「うん、暑い。めちゃくちゃ暑い。だからせめてリビングに連れて行――」
「仕方ないなあ。ではではクロちゃん。一緒にお風呂にでも一緒に入ろうか?」
「何故そうなる」
「うーん。この世の理、みたいな感じかな?」
「お前にとって、この世界がどう映ってるのか超心配なんだが」
「いいじゃん、そんな小さなこと。気にしない気にしない。一緒に入ってくれたら桃が大サービスでお背中を洗ってあげるから。生まれたままの姿で」
「生まれたままって……。素っ裸で一緒に入るつもりかよ。なあ桃。お前さ、羞恥心とかないわけ? 確かに子供の頃は一緒に入ったりしてたけど、でも僕達はもう高校生になったんだよ? 少しは恥じらいなよ」
「恥じらい? それならこの前、質屋に入れてきた」
「さらっと言ってるけど、恥じらいって質屋に入れられるものなの!?」
「もちろん! なんせこの桃様の恥じらいですからなあー」
「あーはいはい。そうですか。で。ちなみにそれ、いくらになった?」
「うん。十円になったー!」
「お前の羞恥心、安いな……」
「ねえ、黒也。桃とばっかり話してないね私の相手もちゃんとしなさいよ。せっかく私が直々に出向いて家に招待してあげたんだから」
「招待じゃないだろ、あれ……。ああいうのは連行って言うんだよウグッ!!」
緑による突然の腹パンである。
「うん。なんとなくムカついたから」
「なんとなくで僕を殴るなよ……」
緑よ。某WEBショップで今すぐにねとサンドバッグを購入しなさい。今すぐにでも!
――それから。
二人はまた言い合いを始めてしまい、僕はそれに巻き込まれつつ全く帰ることができない状況になった。それどころか、この後また一悶着あったわけだし。
中学生の時は三人一緒に遊んだりしてて、すごく仲が良かったのに。だけど、高校生になってからずっとこんな感じになってしまった。
理由は分かっている。
僕が吸血鬼になってしまったからだ。
【続く】




