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第85話 車と言えばカウラ

「それでさ、俺が喫煙所に来たら珍しくかえでとリンの奴が居るんだ。アイツ等いつも機動部隊室に直行するから不思議だなあとは思っていたけど、たぶん新居の話でもするのかなあとか思ってたわけよ」


 安城に振られた事実をなんとか忘れたいと思っている嵯峨は饒舌だった。


「おお、のろけか?良い度胸だ。かえでのことだ。秘密の調教室を建設して女郎をM女に仕立て上げる方法でも教わったのか?」


 かえではにやけながらそう言った。


「いや、俺はかなめ坊みたいに付き合う奴をすべて縛って鞭打つのが好きってわけじゃ無いから。それよりね、アイツが言うにはね。多くの難事件を解決してきた栄光ある部隊の隊長が自転車通勤と言うのはかえでのプライドに関わる事なんだと。それにこれからはお蔦に東和を案内してやる必要があるだろう。だから車を買え、車は即納車を用意してあるとか言うんだ」


 誠は段取りの早いかえでならそのくらいのことはやりかねないと思って話を聞いていた。


「良い話じゃないか。で、何が言いてえんだ?その車がいかに豪華な高級車化自慢する気か?貧乏人が良い気になりやがって」


 かなめは嵯峨の話に関心が無いと言うように聞き流すようにそう言った。


「俺さあ、車の事は分からないんだよね。車なんて4つタイヤが有って動けばいい。故障をしなければもっといい。そのくらいのことしか考えないんだ。それでリンが携帯端末を出して提示してきた車。色々あったんだけどどれも全部デカいの。あんな車、東和の路地に入ったらスタックするのは目に見えてるよ。お蔦は免許持って無いから運転するのは俺だよ?そんなデカい車運転したくないってえの。だから、今は考えさせてくれって言って断ったの。そしたら、明日からは自転車通勤はかえでが恥ずかしいから止めろと言うんだ。とりあえずそれまでは俺の好きな車をレンタカー屋で手配するからって言うから軽自動車を選んだら、またかえでが嫌な顔をする……俺はどんな車に乗れば良いんだよ!俺はいつかえでのアクセサリーになったんだ?教えてくれよ」


 嵯峨は泣き言をいうようにカウラを見つめた。


「え、私ですか?」


 カウラは戸惑ったように懇願するような瞳を浮かべる嵯峨に当惑していた。


「だってベルガーがこの中じゃ一番車に詳しいじゃん。島田の馬鹿に聞くのは良いがアイツの面倒なうんちくと下手に運転しにくい車をフルスクラッチするとか言い出されたら迷惑なだけだよ。そこでベルガーの出番。教えてよ……俺が乗るのに適した車。俺の希望としては中型車。お前さんの『スカイラインGTR』より小さくて豊川の路地とかでもすいすい走れるサイズが良いな。荷物は持たない主義だからセダンがいい。そして性能なんか期待してないからエンジン音は静かなの。あと、ガソリンエンジンね。電動車は甲武に居た時に散々長所も短所も知ってるし、あの国の事はあまり思い出したくないの。その辺を考えて俺に似合う車。見繕ってくれるとうれしいな……予算はさっきお前さん達が見たようにたっぷりあるから。その辺は安心して。いわゆる『ファミリーカー』って奴が欲しいの。俺はそんな車に憧れてたから」


 嵯峨はそう言うとタバコを吸い終えて立ち上がった。


「はい、わかりました。帰りには何とか数車種に絞って提案します。でも良いんですか?私は旧車マニアなので二十世紀末の日本社の中古車ばかりになりますけど」


 真面目なカウラは嵯峨の無駄な相談に素直に答えた。


「だから言ってんじゃん。車んか動けばいいって。それにうちには自動車整備工の免許も持ってる島田が居る。他の整備班員も大体自動車整備工の国家資格を持ってる。アイツは二十世紀末の日本社を弄るのが好きだ。あのパーラの『初代ランサーエボリューション』だって、今でも故障せずに立派に走ってるじゃん。それと、話は変わるけどかえでの奴。何か企んでるぞ。あの顔にそう書いてあった。かなめ坊、ベルガー、クラウゼ。とりあえず機動部隊の詰め所に行ってみ。面白いものが見られると思うよ」


 嵯峨はそう言うとすっきりしたように大事そうに通帳を手にして隊長室に向けて歩き出した。

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