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第84話 『駄目人間』が素人女にモテない決定的理由

「でも、これでお蔦ちゃんとのデート費用を自分で出してかっこいいところを見せられるじゃないですか!良かったじゃないの、隊長!でも3万円じゃデートと言っても知れてるわね。まだ社会人二年目の誠ちゃんレベルくらいの事しか出来ないんじゃないの?ホテルで泊まりでディナーなんて行ったら安いホテルでも2万は取られるわよ。まあ、隊長は根っからの貧乏人だからそんなことはしないでしょうし、その時はお蔦さんが隊長のお金から出すんでしょうけど」


 アメリアのこの言葉に嵯峨は理解不能と言うように小首をかしげた。


「あの、アメリア。俺がデートとかしたことある男に見える?確かに、甲武時代はした。お蔦を連れ出すために番頭に金をたんまり渡して出かけて、芝居や映画の費用も俺が出した。エリーゼとはよく出かけたがこの時の金も俺が出した。でもそれは俺が金持ちの貴族様だったからだよ。俺は月3万円の男だ。なんでそんな貧しい男が女の為に金を払わなきゃならないの?それにだ、俺は飯とか出かけるとか言うことにはまるで興味が無くてね。アイツが行きたい場所に連れて行くだけ。アイツが行きたいって言うんだから金はアイツが出す。それが当然だろ?」


 真顔で聞いてくる嵯峨の姿に一同は唖然とした。


「おい、叔父貴……本気で言ってるのか?オメエは自分を『策士』だとか言ってるがオメエの言ってることは馬鹿か繁華街のホストの言う言葉だ」


 かなめもあきれ果てたようにそう言うとタバコをふかした。


「だってさあ、俺、文化人じゃん。甲武裏千家茶道家元にして西園寺流琵琶の第一人者として東和でも知る人ぞ知る存在なんだ。だから俺に会いたいって言う有名人が結構いるんだよ。俺が書の個展を開いたり、俺の茶を飲みたいと言う東和の偉いさんに呼ばれたりすることも有るんだ。その時は交通費も含めて全部その教養あるお金持ちが出してくれるんだ。向こうはお金持ち。俺は貧乏人。だからお金は相手が払う……それが当然の理屈じゃないのかな。俺の考え……お前さん達の顔を見ると間違ってるみたいだけど昨日もしてるときにお蔦にそれで良いかって聞いたら喘ぎながら俺がそれで良いならそうしたいって言ってたよ。だから俺はそう言う風に生きる」


 嵯峨は不思議な生き物を見るような目で驚愕したような表情を浮かべる誠達を見回した。


「隊長、ちょっと確認したいのですが、安城少佐と食事をしたことは有りますか?」


 カウラは真剣な表情でそう言った。嵯峨は一瞬傷ついたような表情をした後、タバコをくわえた。


「一度だけある。東都のそれなりのレストラン。そん時は俺は財布に五十円しか持っていなかった。だからそん時は秀美さんに会計をお願いした。俺にそんな金があると思う?あんな高い値段のレストランなんて入る意味は無いよ。俺にとって飯なんて腹が膨れればそれで良いの。そん時も秀美さんに恥をかかせないためにその店を秀美さんが選んだの。秀美さんが払って当然じゃない?秀美さんも結構な高給取りなんだから。しかも独身で子供もいないし。」


 嵯峨の言葉に全員の驚愕は大きなため息に変わった。


「隊長。それじゃあ振られて当然だわよ。デートの費用は男が払うのが普通なの!それから隊長がいくら安城さんを食事に誘っても全部断られたのはそのせい!また、コイツは自分にたかる気なんだと安城さんは思ってたわよ!」


「え?アメリア。その話は本当なの?俺は聞いたことが無いけど……でも……俺は月3万円の男だし……」


 アメリアの言葉に嵯峨はがっくりとうなだれた。


「まあ、いいじゃねえか。叔父貴には今、お蔦が居るわけだ。お蔦の持ってる金は全て叔父貴が稼いだ金だ。お蔦の財布の中身は叔父貴の財布の中身ってことだ。それにアレなんだろ?叔父貴が行くような安い風俗店の嬢なんかよりよっぽどお蔦の方が良い思いが出来るんだろ?」


 かなめはそう言ってなんとか嵯峨を慰めようとした。


「まあね……そうなんだけどさ……嫌だね、東和って国は。金が無いと何にもできない。でもそんな暮らしに慣れちゃってる自分が居る。まあ、お蔦は不老不死だし、元花街一の太夫だし、贅沢は言えないんだけどさ。もし吉原の最高級店でお蔦クラスの人気の嬢を指名したらそれだけで20万するらしいんだ。それが俺の場合本番好きなだけやってタダ!その幸せだけでも甘んじて受け入れなきゃね」


 嵯峨は諦めたようにため息をついた。

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