第74話 誠の力の伝播について
「でも……お蔦さんが来た時に地球人の女性がその……覚醒した法術師と……セックス……」
誠は照れながらなんとか意思を伝えようとした。察しのいいかえでは誠の先回りをして話し始めた。
「ああ、地球人の血を引く女性の子宮に覚醒した遼州人の精子が多く浸透した時に起きる現象について君は話しているんだね。それは僕も事実として確認している。リンは……法術師の戦いでは先に手の内を見せた方が負けるわけだから戦うことのない君だから話すが、すでに『干渉空間』の展開が出来るようになっている。彼女は僕が散々君の精液を流し込んであげたからね。当然能力の覚醒も一番早かった。他の三人の使用人達にも法術適性が生まれてきているのは僕もリンが紹介してくれた専門研究所の検査ではっきりしている。まだ法術適性の兆候が見えないのは料理人のあの子くらいかな。でも彼女にもいずれ法術適性が生まれるようにしていくつもりだよ。そして、僕も地球人と遼州人のハーフだ。その実力は君も身を持って体験しているだろ?当然、君を守る来るくらいのことは出来る。お姉さま達のように君の足を引っ張るだけの存在では無いんだ」
かえではそう言うとそれまでの笑顔を消して真顔で誠を見つめてきた。誠はその圧に負けて目を逸らしそうになるのを必死になって堪えた。
「僕の使える法術に『光の剣』は無い。だが、欲しいね。いずれ……その力も僕は手にするつもりだ。出来れば君に直接その精を注ぐことによってその力を僕に与えて欲しい……」
かえではそう言うと誠の左手をぎゅっと握りしめた。
「直接ですか?それって……」
誠はかえでの突然の言葉に動転しながらそう叫んで背後を振り返った。
そこにはかえでの言葉に聞き耳を立てていたかなめ達の姿があった。その刺すような視線に殺気を感じた誠はかえでの方に向き直った。
「僕は自分から無理やりと言うのは主義では無いんだ。無理やりされるのは好きだが……おっと誤解しないでくれたまえ。東和に来てから僕は男とはそんな関係になったことは無い。この国は君を産んだ国……僕にとっては神聖な犯すべからざる国なんだ。僕はこれからは君だけを男として見ることになる……そう言う風に生きていく。僕は一度決めたことは絶対に曲げない女だ。信じてくれるよね?ただ、僕にふさわしい女性が現れた場合は許してくれたまえ。僕は女性の要求にはすべて答えることをポリシーにしているんだ。当然彼女か僕の身体を望めば彼女に与えなくてはならない。その分僕もその女性の身体をむさぼるけどね」
かえでは甘えるような口調で誠にそう言ってくる。そのちょっと演技のすぎる態度に誠はふとした疑問が浮かんだ。
「じゃあ、この国に来てから新しい女性とはお付き合いしているんですか?」
かえでの女好きは筋金入りである。誠の疑問に悪びれる調子も無くかえではうなずいた。
「いやあ、僕は女性の誘いは断れない質なんだ。時々、美しいセレブが僕の魅力に気付いてしまうことがある。そんな時……悔しいことだが僕にはその想いを断る勇気がない。甲武では夫婦の男女間の肉体関係は『姦通罪』と言う罪に問われるが、同性であれば問題ない。つまり、僕のしていることは罪にはならないんだ。当然、欠点を補いあう夫婦になるべき僕達の間でもそんな僕の悪いところを許してくれる度量は君にはあるよね?」
かえでは屈託のない笑顔を浮かべてとんでもないことを口にした。確かにかえでの無修正動画には見たことのない女性が出てきて、その女性の顔を後にテレビドラマとかの主演女優として見る事が有るのは事実だった。
「そう言う物なんですか……というか、それも東和ではかなりヤバい事なんですけど。それって『女性とは浮気しますけど許してね』ってことですよね?それはちょっと……」
誠にはただ苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。