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第4話 司法局実働部隊野球部監督

「それにしてもいつものことですが西園寺さんは勝手すぎますよ!何かというと僕に『部屋が汚れてきたから掃除しろ』だの『バイクのタイヤがヘタってきたから島田を呼べ』だの全部僕に自分ですることを押し付けてきて!たまには自分の事は自分でするくらいの事はしても罰は当たらないと思いますよ?違いますか?」


 誠はあまりに理不尽なかなめの態度にキレてそう言い返した。


「なんで甲武一の貴族のアタシがそんな面倒なことをしなきゃなんねえんだよ。神前、いつからオメエはそんなに偉くなったんだ?アタシは自由人なの。誰もアタシを縛れない。ただ、アタシは『女王様』だから人の事は縛るんだ……神前、オメエも縛ってやろうか?どんなが良い?アタシの縄師としての腕は最上級クラスだぜ?亀甲縛りは一般的だが、オメエにはもっと特殊な恥ずかしい縛り方をしてやろう。うれしいだろ?プロで人気者の縄師のテクニックを身体で感じられるんだぜ……しかもタダで。こんなにいつでもサービスしてやる『女王様』なんてほかに居ねえぞ?」


 かなめはニヤニヤ笑いながら『スカイラインGTR』の後部座席から誠を見上げた。


「それと、アン!男のバットをケツで扱く練習ばかりじゃなくてちゃんとバッティングの練習はしてるのか!来シーズンからはオメエにも野球部の試合に出てもらうからな!もうオメエの守備位置と打順は監督であるアタシの構想の中に入っているんだ!今年こそ6位から上、Aクラス入りを目指す!今年からは神前と言う左の大黒柱がマウンドに立つんだ。これでBクラスだったらアタシは無能な監督だってことになる!アタシの面を汚して射撃の的になりたくなかったらちゃんと練習しとけよ!うちはただでさえ出動で不戦敗が多くなるんだ!試合をしたらどんな相手でも必ず勝つぐらいの気構えを持て!」


 こたつでゲーム機を弄っていたアンを急にかなめが呼びつけた。


「はい!毎日素振りをしています!ちゃんと整備班の先輩たちに昼休みにノックをしてもらって守備練習もやってますよ。それと僕の守備位置ってどこですか?ライトって……センターの右ですか?左ですか?」


 こたつから飛び出したアンはそう言ってかなめに敬礼した。


 先週は二日間の日程で『特殊な部隊』の野球部の合宿が有った。


 誠はひたすらいつもはサードを守っているもののキャッチングはチーム一うまいアメリア相手にかなりの投げ込みを強制された。


 いつもなら『急造キャッチャー』と呼ばれて誠の左腕から放たれる伝家の宝刀であるフォークをまるで捕れない大野と違い、アメリアは捕れはしないものの身体で止めて後逸しないので安心して投球練習に専念できた。


 その時、野球の事を何も知らないアンに監督のかなめはライトの守備練習をひたすらさせていた。


『特殊な部隊』の野球部の外野はセンターの走攻守どれでも一流の島田以外の外野のポジションが固定できないでいた。ともかく日替わりでライトとレフトが変わるので、真正面のフライすらもたつきながらなんとか捕る守備に不安のある選手の守備範囲まで島田が快足を飛ばして取りに行くのが試合のスタイルだった。その悲願の島田以外の守れる外野手ということでかなめはアンに期待をかけていた。


「西園寺さん。ライトはアンが守るんですか……こいつは確かに足も速いし肩も良いですけど……野球のルールをまるで知らないですよ?それでも良いんですか?今だってライトとレフトの区別もついてないくらいなのに」


 誠は不安げにそうかなめに尋ねた。


「仕方ねえだろうが。うちであれほど足が速いのは島田以外居ないんだから外野で島田にこれ以上負担をかけるわけにはいかねえんだ。バッティングがいまいちだからライトのレギュラーに入れて、打順は八番か九番を打たせる。もうアタシの中じゃ次のシーズンは始まってるんだ。名監督は次の事を考えて行動しているんだよ」


 得意げにかなめはそう言うと後ろを振り返った。


「来たぜ、レフトのレギュラーがでかい身体に合わせてデカい車でご到着だ。アイツは守備には期待してねえ。肩は良いが足が遅すぎる。アイツは六番あたりを打たせて大きいのを期待する。アイツは空振りは多いが当たればデカいからな。そん点だけは評価して急造キャッチャーとして使ってやってたんだ。さも無きゃあんなにキャッチングがヘタなキャッチャーなんて誰が使うか」


 かなめの視線の先には黒い巨大なピックアップトラックが停まっていた。その持主が先ほどの『急造キャッチャー』と呼ばれる大野だった。


「アイツは打撃は良いんだがな……だからアイツをレフトに入れる。足こそ遅いがそれは島田にカバーしてもらう。カウラ、車を出せ野球の話はこれくらいにしよう」


 野球談議に満足したかなめはいつも通りに自分の気分で運転席でそれを黙って聞いていたカウラにそう命令した。


「相変わらず西園寺は勝手だな。まったく周りの事を考えていない。このアイドリングしていた間のガソリン代の無駄。どうしてくれるつもりだ?」


 カウラは愚痴りながらギアをローに入れて爆音を上げて『スカイラインGTR』を発進させた。

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