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第39話 戸惑う童貞と感動するポエマー

「僕ですか?僕はモテたことが無いのでなんだか良く分からないですが、とりあえず隊長はお蔦さんと結婚して『駄目人間』を脱出すべきだと思います。僕が隊に居る間も隊長は刻一刻と駄目になっています。今が更生する最後のチャンスだと思います。この機会を逃せば隊長は一生『駄目人間』ですよ。ああ、隊長は不老不死なんでしたね。だったら永遠にです。どんどん駄目になって行って人間として最低限のモラルすら守れない救いようのない人間になることだけは間違いないと思うんです」


 とりあえず嵯峨とお蔦の話が感動的なのは良く分かったが経験不足の誠にはどうしても感情移入することが出来なかった。


 童貞の誠には話の内容があまりに淫らに過ぎて脳がついて行かなかった。


「隊長!」


 突然部屋の隅で女性の叫び声が響いた。


 それはそれまで必要なことを聞かれるだけの存在として沈黙していたひよこの声だった。ひよこは涙を浮かべ、詩心に満たされた時の彼女が見せる輝いた瞳を嵯峨に向けて立ち上がった。


「これは素敵な話なんです!隊長はお蔦さんに永遠の若さと命を与えた素敵な天使様なんです!」


 そう叫ぶひよこの言葉にはいつものどこかはかなげな雰囲気は無く明らかに確信を込めた情熱のようなものを感じさせた。


「天使ねえ……俺は昔『天子様』と呼ばれていたことがあるが……まあそれは今は関係ねえか」


 ひよこの心は『駄目人間』である嵯峨には届いてはいなかった。それでもひよこは続けた。


「その時から今日のこの日は来る運命にあったんです!たとえ戦火が二人を引き離そうとも、どんな運命が二人の間に立ちはだかっても、二人は出会い、そしてこうして巡り合った!これは奇跡ではありません!運命なんです!定められたことなんです!」


 ひよこは思わず我を忘れたように立ち上がりそのままお蔦に近づいていくとその手を取った。


「お蔦さん。あなたの身体は他の男に汚されているかもしれませんが、あなたの心は今でも清らかです!私にはわかります!あなたは純粋な人です!だからこうして隊長の所にやって来た!隊長は確かに『駄目人間』で、信用置けなくて、嘘つきで、ケチで、その癖金遣いが荒い人間失格の存在ですがそれでもこうしてあなたのような素晴らしい女性に思われている。お蔦さん。隊長はあなただけのものです!二人が結ばれることを私は応援しています!これは素敵な詩が書けそうです!ありがとうございます!」


 ひよこの珍しく饒舌にまくしたてる様子にお蔦はただ圧倒されて引きつった笑みを浮かべていた。


「別にアタシはそんな立派な女じゃないよ。ただの淫らな女……所詮傾城の花魁に過ぎないよ。ただ、アタシの身体が新さんを忘れられないからこうして来ただけで……」


 自分を卑下しながら笑うお蔦の手をひよこはしっかりと握りしめた。


「そんなことは有りません!あなたは純粋な人です!そう言う風に謙虚なところが何よりの証拠です!違いますか?」


 部屋の一同は珍しく一人でヒートアップしているひよこに呆れながら戸惑うお蔦に同情の視線を送りつつ半分諦めたような表情を浮かべている嵯峨に軽蔑の視線を送っていた。

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