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第29話 高等予科独立愚連隊

「そんなわけで俺達四人とこれまで何度も武家貴族のもやし野郎はきにいらねえって話で喧嘩を吹っかけてきては返り討ちにしていた陸軍予科や海軍予科の不良共を顎で使って俺達は相模屋のつけ馬に収まってそのまま俺は相模屋に居候することになったんだ」


 嵯峨は得意げにそう言うと再びタバコに手を伸ばした。


「そうさねえ、でも新さんは知ってるのかい?あの時番頭が三日に一度はアタシを抱いて良いって条件を付けた理由……まあ、新さんもアタシも暇があるとすることばかり夢中でそんな約束守っちゃいなかったけどね」


 お蔦は得意げにそう言うと嵯峨を見つめた。


「当時から察しはついてた。どうせ義父の奴だろ。アイツは俺に借りがあるとか言って自由にさせて金までくれたからな……どうせ義父が金を出して楼主を黙らせたんだろうな。それに三日に一度ってわけじゃ無かったな。ほとんど毎日何度もお蔦さんを抱いてたじゃねえか。今日の客じゃあアタシは満足できないんだよ、新さん、アタシを心行くまで満足させてくれとか言って朝になると俺の寝床に入ってくるんだから。大体その日に客がつかなかった女郎が俺の隣で伸びてる隣で襦袢姿で言い寄ってくるんだ。据え膳食わぬは男の恥。当然俺はお蔦を抱いた」


 お蔦を見つめながら満足げに嵯峨はそう言った。


「お父様。不潔です。それにそんなに性行為にふけって良く体力が持ちましたね」


 茜はあきれ果てたようにそう言った。


「同じようなこと一学の奴からも言われたよ。アイツはうぶでね。この話も美人画が描けるぞってほとんど騙して連れてきたんだから。そこが女郎屋で身体を売ってる女がいる場所だということも一学は知らなかった。貞やんなんかは暇な女郎に手を出して回って……忠さんは大人しかったな。アイツは貞やんの姉貴の貞子さんに当時からぞっこんだったからな。そこで数々の誘惑に負けずに貞操を守り抜いたおかげで結局見事に落として餓鬼まで作りやがった……」


 嵯峨は苦笑いを浮かべながらそう言った。


「つけ馬って……どういうことをやるんですか?僕は甲武の社会常識に疎いんで」


 誠は頭を掻きながら嵯峨に尋ねた。


「だから借金取りだってさっき言ったじゃないの。大体、そう言う店はツケで飲ませて女を買わせる。お前さん達も月島屋をツケで飲んでるじゃないの。あれと同じ。その払いが滞ると俺達が出向いて行って力任せに取り立てる。まあ、よその面倒な客の取り立ては舎弟の予科練の馬鹿たちに任せて俺達は店の中で暴れる客とかをどうにかするのがほとんどだったな。当時のご時世はかなり戦時色一色で荒れた兵隊共が女を買いに女郎屋に来て騒動を起こすんだ。それを止めるのが俺達の仕事……て言ってもそんなこと滅多にないからただ店の奥のこたつでミカン食ってた。そこにお蔦さんが居て、他にも何人か暇な女郎が来て話し相手をしてたんだ」


 嵯峨は懐かしむようにそう言うとタバコをふかした。


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