第25話 嵯峨の熟女好き
「それはなんだ……春子さんは良い女だからな。お蔦。お前さんは若いまんまだ。他に男のあてはいくらでもあるんだろ?しかも俺もそうだが不老不死の死ねない身体の永遠に続く時間。何かをして無きゃおかしくなっちゃうよ。俺には東和に来てからも弁護士として風俗街の女の子を救うという仕事にやりがいを感じていた。そして遼南内戦が本格化すると生まれた国を立て直そうと戦いに出向いた。そして今はこうして『特殊な部隊』の隊長をしている。そうして永遠に続く人生を退屈で塗りつぶしてしまわないように努力してるんだ。お蔦も少しは何か生きがいを持った方が良いかもしれない。俺はお前さんが思うほど立派な男じゃ無いんだ」
嵯峨は冷たくそう言うとタバコに手を伸ばした。
「え、新さん。アタシは端も恥じらう19の身体で新さんを待ってるんだよ?それともあれかい……新さんは……」
お蔦は衝撃を受けたように驚いた顔をした。
「おい、花魁。この『駄目人間』は熟女マニアだ。風俗も40近い嬢しか居ねー熟女専門店にしかいかねーんだ。春子さんはまだ40には届かねーが『駄目人間』は不老不死だからな。いずれ好みのゾーンに入ると分かって狙ってるんだ」
ランがはっきりとお蔦に向けてそう言った。
「熟女マニア……大年増が好みってわけかい……それじゃあ何のためにアタシは生きてきたんだよ……いっそ海にでも身を投げて……」
お蔦はランの言葉に絶望したように机に突っ伏してすすり泣き始めた。
「お蔦さんは不死になったのでそんなことでは死にません。近くの漁協の人に迷惑になるだけです」
泣き続けるお蔦に向けてひよこは冷たくそう言った。
「お蔦さん。確かに俺は熟女マニアだけどさ、お蔦さんのあのテク。今でもはっきり覚えてるんだよね。大丈夫!俺の趣味を変えて見せればいいんだ!それですべての問題が解決する!それにかえで、せっかく旅館を取ってもらったんだろ?楽しめる時は楽しむ。それも俺の趣味で良いところ!こういう切り替えも大事なんだぞ!」
嵯峨はなだめるようにお蔦に向けてそう言った。そして嵯峨の変わり身の早さに呆れる一同を見回した。
「はい。確かに春子さんが相手ならすぐに嵯峨家の世継ぎを得られるかもしれませんが、先ほどリンから言ったように排卵誘発剤を使えばお蔦からも跡継ぎは産まれます。それに本当のところお蔦はお美しい……花街一の花魁になるのも当然の事だ……なら僕の妾にならないかな?僕は女性も好きでね……新たな快楽に目覚めさせる自信もある」
かえではそう言うといつもの女性を口説きにかかる笑顔をお蔦に向けた。
「かえで様の希望には添えないねえ……アタシは女同士の趣味はないのさ。それに新さん。アタシをこんな新さんを忘れられない身体にした責任……ちゃんと取ってくれるんだろうね?春子とか言う年増よりきっと気持ちいい目に遭わせてやるからさ……一緒に置いとくれよ……」
お蔦はいかにも色気のある視線を嵯峨に向けた。嵯峨はそれを見て少し慌てたようにタバコをふかした。
「確かに東和まで来てくれたお蔦さんを何もせずに帰すというのは人道にもとるな……渡辺、宿屋の方は?」
嵯峨は作り切った威厳でリンを見つめた。
「はい、私とかえで様が定宿にしているところが取れました。それとお屋敷の方も丁度いい売り物件の屋敷が手配できました。近日中に入居可能です」
リンは手際よくそう言ってお蔦をにらみつけた。
「そう言うわけだ……久しぶりに……ってあれを味わうとたぶんお蔦さんから俺は離れられなくなる」
「そうだね、新さんを骨抜きにしてしっかり新さんの後添えの地位を貰っちまおうじゃないのさ……今日は寝かせないよ……新さん覚悟しとくんだね」
嵯峨を見るお蔦の顔に妖艶な笑みが浮かんだ。