第200話 絶対譲れない女達の覚悟
「まあ、隊長は遼帝国の皇帝で、遼帝国の帝室の人間はいくら配偶者を作ってもいい法律になってるけど、ここは東和。東和では重婚は認められない。そしてこの東和では不倫は結構社会的に酷いこととされている。となると誠ちゃんは誰かを選ばないといけない……まあ、かえでちゃんんは『不倫は文化』の人だからあの人の事は置いておいての話だけど」
アメリアは再び明るい調子でそう言ってお蔦の運んで来たビールを飲んだ。
「日野は異常者だ。私には小隊長として、先輩として神前を敵より先に日野の魔の手から守る義務がある。だから、神前。安心しろ。私は命とこの身体のすべてを賭けて貴様を守る」
決意を込めたカウラの迫力のある眼光に誠はただ頭を掻くしかなかった。
「これだから思い込みの強い地雷系処女は面倒なんだよ。アタシはアタシの欲しいものはすべて手に入れてきた。だから今回もそうだ。アタシは自分の思い通りに生きる。だから、神前もアタシの思った通りに生きろ。つまり、アタシを選べ」
そう言ってかなめは誠に顔を突き付けてきた。
「無茶苦茶言うわね。仏教にも『中庸』という言葉があるの。何もかもちょうどいいくらいが一番なの。そして誠ちゃんは私のエロゲの専属絵師で大人気!当然その作品は私達の共同制作。つまり子供みたいなものなのよ。つまり、私達は常に子供を世間に生み出し続けている。リアルな子供を作ったって別におかしなことは何もないでしょ?」
アメリアまでもが誠に顔を突き出してきた。
「さっきから聞いていれば勝手なことばかり……誠君は僕の『許婚』なんだ。これは決定事項なんだ。そしてそうなることを誠君も望んでいる。君達はそんな僕と誠君の明るい将来を邪魔している障害物に過ぎないんだ。その辺の自覚は有るのかな?誠君。君は必ず僕を手に入れたくなる。他の誰にも目が行かなくなる。僕にはその自信がある。僕は完璧なんだ。そうだろ?」
それまでカウンターでリンと飲んでいたはずのかえでまでもが誠に詰め寄ってきた。
かえでの後ろではそんなかえでをあざ笑うかのような笑みを一瞬浮かべた後でいつもの無表情に戻るリンの姿があった。
「それって今ここで決めなきゃダメなんですか?」
誠は焦りつつそうつぶやいた。
「問題先送り体質。お前さんのそこが一番駄目なところだ。男なら決める時は決めなきゃ。『僕には誰かを選ぶことなんてできません!全員を選んで社会の敵になります!』って。俺ならそう言うね。俺は十分世の中から馬鹿にされてる『駄目人間』で通ってるから。そのくらいの決断は簡単にできるよ」
嵯峨の明らかにばを混乱させるような一言に一同は脱力し、静かにため息をついた。




