第197話 純粋なカウラ
「アメリアの言う通りだ。あんな手段で法術師になったところで私達にその力を使いこなすことが出来るのか?神前を見ればわかる。コイツはその強大に過ぎる力に苦しんでいる。力を持ちながらその力におぼれないのは大したものだと私も思ってはいる。ただし、それをいくら訓練しても使いこなすことが出来ない。才能では自分以下の嵯峨警部にすら今の訓練でははるかに及ばない。元々才能があるうえに神前の力まで身に着けた日野相手には勝負にすらならない。ましてやあの『人類最強』のクバルカ中佐には子ども扱いだ。そんな神前を支える。それが我々に今できることだ」
カウラはそう言うと大好物のネギまに手を伸ばした。
「だから言ってんじゃん。コイツは童貞だから、女を教えてその喜びでこいつを支える。コイツは念願の童貞卒業が出来る。アタシ等は法術師に成れる。良い事づくめじゃねえか」
かなめはまたやらしい目つきで誠を見つめてきた。誠はどぎまぎしながら豚串を口に運んで誤魔化そうとした。
「かなめちゃんはどうせ男が欲しいだけなんでしょ?別にそんなのだったら誠ちゃんが来る前みたいに都内に行って男を漁ってりゃいいじゃないの。私はそう言うの嫌なの!私は私だけを見てくれるように誠ちゃんにはなって欲しいの!だからそんな不純な動機で誠ちゃんの童貞を奪うなんて真似は出来ないの!」
アメリアはあきれ果てたようにそう言うと豚串に夢中な振りをしている誠の手を取った。
「誠ちゃん。かえでちゃんの餌食になればその死に方は腎虚と決まっているわ。私に決めなさい。かえでちゃんは自分が一番誠ちゃんを成長させることが出来るというけど、かえでちゃんは焦りすぎ。一緒にゆっくりと色々勉強して行きましょう!エロゲだってそうじゃないの。いきなり全エロシーンが見れる設定なんて萎えるでしょ?だから……」
そう言いながらアメリアの手に力が入るので誠は頬を赤らめた。
「神前には貴様等でも十分刺激が強すぎるんだ。私は神前にすべてを見せた。これからもすべてを見てもらいたい。そして私は神前のすべてを知りたい。だから私は行動する。誰の邪魔もされないように確実にだ」
カウラは烏龍茶を飲みながら決意を込めたようにそう言った。
「はいはい、ごちそうさま。でもね、カウラちゃん。恋には障害がつきものなの。だからカウラちゃんみたいに純情ぶってるだけじゃそんなものは成就しないの」
アメリアはビールを飲みながら余裕の表情でそうつぶやいた。
「そうだ。処女なだけが自慢の胸が洗濯板のテメエになんざなんで神前を譲らなきゃならねえんだよ。それにどうせ目的は自分が法術師に成って神前を独り占めしようって話だろ?その点アタシの提案は全員で神前を共有しようって話だ。悪い話じゃないだろ?」
勝手に決められていく自分の運命に誠はただ黙り込んで握る手の力を強めて来るアメリアの顔を見つめて苦笑いを浮かべていた。




