第192話 どこまでも純粋無垢なカウラ
「お言葉ですが、隊長はこの隊一の高給取りです。燃費などは気にする必要はないと思いますが。それと隊長の給料照明を出せば大概の銀行ならカードを発行してくれますよ。私の車もハイオク車ですが、車に必要なのは走行性能です。その為の出費は惜しむべきではないかと」
カウラは真剣な表情でそう口にした。
確かにカウラの車はエンジンの耐久性を犠牲にしてまで馬力を800馬力まで引き上げた『スカイラインGTR』である。当然彼女の車の選ぶ基準が馬力に偏るのは当然だと誠も納得した。
「まあいいよ、アレだろ?どうせヘスの乗ってる『ハチロク』の馬力はああだの、ラビロフの『初代ランサーエボリューション』の馬力はこうだの言い出すんだろ?だってあいつら運転好きだもん。俺は車は動けばいいとしか思ってないから。もういいよ。お前さんに頼んだ俺が馬鹿だったということ。その点、話は変わるけどかえでの選んだ家。さすがだね。昨日改装が終わったということで早速移ったんだが……部屋が多すぎて最初迷っちゃったよ。それにあんなに広い部屋に何を置けばいいんだ?俺は身一つあればそれで良いって言うし、お蔦はまあ花魁衣装でしたいとか言うからそれなりに箪笥とか用意しないといけないかもしれないけど、広すぎてあっけにとられたよ」
嵯峨はカウラを諦めて誠の方を向いて笑いかけてきた。
「でも隊長は甲武の貴族でしょ?甲武にはお屋敷とか無いんですか?」
誠は疑問に思って訪ねてみたが嵯峨はにやにやと笑った。
「あるよ、死んだかみさんのエリーゼが趣味で建てた奴。アイツはいろんなシチュエーションで俺と楽しみたいと言ってかなりこだわって建てたんだ。それにアイツはおしゃれでいくつクローゼットを置けばいいんだというぐらい用意するし、ベッドは各部屋に用意してそれぞれで楽しみたいって言うし、家具は全部アイツのわがまま。俺の家財なんてまるでなかった。でもいつもアイツに案内されてそこでするだけだから部屋とか場所をほとんど覚えて無くてね。それに屋敷が出来てすぐに俺達は東和に赴任したからあの屋敷にはほとんど足を踏み入れていないんだ。それに今はそいつをかえでに譲ったからアイツの持ち物だから勝手に入るわけにはいかないしね」
嵯峨の『楽しみたい』や『する』という言葉に誠は明らかに卑猥な響きを感じて嫌な顔をした。
「それでも今回の屋敷もお蔦も気に入ってね。いろんなシチュエーションで楽しめるって喜んでたんだ。昨日も5回した」
得意げにそう言う嵯峨の『脳ピンク』ぶりに誠はあきれ果てた。
「あの……隊長。隊長はあのお蔦と何をしたんでしょうか?それと亡くなられた前の奥さんと何を楽しんだのでしょうか?」
純粋無垢なカウラは嵯峨が遠回しにいう言葉の意味が分からず呆然とその場に立ち尽くし嵯峨に尋ねた。
「ああ、ベルガーは処女だったな。だったらそう言う女のしないこと。そう言うことが好きな女はいろんな場所でしたがるんだ。野外とか、車内とか……ああ、車もどうせならオープンカーとかの方が良かったかな……でもあれだな。そうすると露出狂のかえでと同類になっちまう。俺は見られるのはあんまり好きじゃない。するのは好きだが見られて喜ぶような変態じゃ無いんだ」
嵯峨の桃色思考について行けずカウラは相変わらず首をひねっていた。
「そんなカウラさんを汚すような事は言わないでください!それじゃあ用は済みましたね!失礼します!」
これ以上嵯峨の『脳ピンク』につきあって純粋なカウラの心が汚れるのが見ていられなくなって、誠は強引にカウラの手を引くと隊長室を後にした。




