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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『駄目人間』の青春と初めてのデート  作者: 橋本 直
第四十二章 一変した寮の朝

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第189話 慣れない最高級乗用車の中で

 駐車場に周りの改造車とは明らかに違う風格を漂わせている黒いノーズの長い大型高級車がかえでの車だと誠にも一目でわかった。


「では、かえで様。どうぞ」


 慣れた調子で制服姿のリンはドアを開けかえでを誘った。


「僕はあくまで誠君の護衛だよ。当然、誠君から乗るべきだ。誠君、どうぞ。この車の乗り心地はこの前の僕の車のさらに上を行くよ。君も満足してくれると思う」


 にこやかな笑みを浮かべてかえではそう勧めてくる。


『なんだよ……これじゃあまるで僕がか弱い『お姫様』みたいじゃないか……確かにかえでさんの着てるのは男子の制服で、あの大きな胸さえなければかっこいいイケメンにしか見えないけど……僕だって『干渉空間』と『光の剣』の使える法術師なんだぞ!地球人の襲撃者くらいならすぐに追い散らかすことくらい出来るんだ!でも……『法術武装隊』……今度の敵はそんな甘い敵じゃないんだよな……』


 口には出さないものの誠は自分の置かれた境遇に不満を感じながらも、仕方なく後部座席の奥、かえでからできるだけ離れた位置に座った。


「リン、急いでくれ。始業時間まで時間が無い。誠君。僕達はプラトニックラブなんだ。だから君の傍にいて語り合うこと以上の事はしないよ。安心していて欲しい」


 かえでは乗り込むとすぐにそう言って誠の方に顔を向けた。


「随分と僕と離れて座るんだね。僕達は結婚を誓い合った仲だよ。もっと近くに座って君の体温を感じたい。それが僕の願いだ」


 かえではそう言って誠に笑いかけた。


『それ男の台詞!僕は男!なんでどこまでもお姫様扱いされなきゃいけないの?そんなに僕は頼りなく見えるの?確かにかえでさんよりは弱いのは確かだけど……仕方ない。ここは覚悟を決めよう』


 そう言うと誠はかえでにくっつくように席を変えた。


「そう、それで良いんだ。君の力を僕は感じている。これは別に僕の個人的な欲求からのお願いじゃ無いんだ。法術師同士が接触するとテリトリーが若干広くなると言う研究結果を僕は知っている。これは誠君を守るための一つの策なんだ」


 かえでは真剣な表情でそう言うと再び誠の顔をまじまじと見つめた。


 かえでは隊員では珍しく薄い化粧をして出勤してくる。かなめを始め、『特殊な部隊』の女子隊員達には化粧をするという習慣はない。そんなかえでの化粧水の甘い匂いが誠の脳裏を揺さぶった。


「僕にじっと見とれているね。プラトニックラブと言うのも悪く無いものだ。これまでだったら君はすぐに僕から目を逸らしていた。でも今はこうして見つめあえる。僕は今最高に幸せなんだ……心がつながっている今の誠君なら分かるだろ?」


 そう言ってかえでは目を細めて白い整った前歯を見せて笑った。


 確かにこんな女性を独り占めできるなんて幸せなことなのかもしれない。誠はそんなことを考えながらいつもと違う道順で隊に向う車の中で自分の中にも湧き上がってくる『幸せ』を噛みしめていた。

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