第186話 見殺しにされる女達
「おい、かえで。じゃあ、なんでアタシ等の部屋はこの扉の外なんだ?こんな便利な扉、三階の階段の所に付ければいいじゃねえか。この三階には女しか居ねえ。それに島田達もアタシ等を怖がって三階には上がってこねえ……あれだな?オメエはアタシ等になんか含むところがあるだろ?メイドとあの女コックに発情した寮の性に飢えた野郎共がアタシ等を襲うのを見殺しにするためにここに扉を設けて自分達だけ安全な場所に住もうって魂胆なんだな?ひでえ奴だな、オメエは」
かなめはあきれ果てたように妹のかえでに向けてそう言った。
「ああ、そう言う手も有ったかもしれないね。でも、お三方にも男性と巡り合う機会が有っても良いと僕は思うんだ。僕と僕の家臣たちの身体を自由にしていい男は誠君しかいないがお姉さま達は自由なんだから。なにかな?僕のそんな配慮が気に入らなかったのかな?」
かえではそう言って挑発するような視線で自分より背の低い姉であるかなめを見下ろした。
その時、トイレを終えてカウラが戻ってきた。
「なんで島田が焼け焦げているんだ?まあ、コイツは不死人だから放っておいても平気だろう。それより何を話していた」
カウラはいつもの無表情でかなめとかえでがにらみ合いを続けている状況をみてそう尋ねた。
「かえでちゃんに言わせると私達は男に飢えているだろうから気を利かせてここに誠ちゃん専用の存在である自分達を守るためにこの扉をここに設置したんですって。まったく呆れ果てて物も言えないわ。そんな性欲に常に飢えているかえでちゃん基準で私達を見るのは止めてくれる?」
アメリアもかえでの傍若無人ぶりにはついて行けないと言うようにため息交じりにカウラにそう言った。
「私は男には飢えていないぞ。そもそも男は食べるものなのか?人間を殺して食べたら殺人罪及び死体損壊の罪に問われるだろ?私は西園寺と違って自ら好んで殺人者にはなりたくない」
アメリアの『男に飢えている』の意味を全く理解していない純粋なカウラに誠は少しときめいていた。
「カウラちゃんの純粋すぎも考えものよね。つまり、かえでちゃんはアタシ達に誠ちゃん以外の男を押し付けてエッチなことをさせて自分達で誠ちゃんを独占しようとしているの!その為にこの昔20世紀にあったという『ベルリンの壁』のような壁を作って私達を見殺しにしようと考えている訳!分かった?こういえばいくら鈍感なカウラちゃんでもかえでちゃんの考えていることが分かるでしょ?」
アメリアはキレ気味にカウラに向けてそう言った。
「なるほど。日野少佐は私に嫉妬している訳だな。この国東和では女は処女でなければ結婚できないのは常識だ。この中で処女なのは私だけだ。だから神前と結婚できるのは私だけだ。だからその東和の常識的妻予定者である私の純潔を奪ってその地位を自分のモノにしようとしている。確かにそれは許すことは出来ない」
カウラはどこで仕入れてきたか良く分からない東和の結婚事情を披露して一同をさらにあきれさせた。




