第184話 オーナーの聖なる領域
その時誠の部屋をノックする音が響いた。
「今忙しいんだ!後にしろ!」
そう叫んだのはこの部屋の主の誠ではなく自分勝手なサイボーグ、かなめだった。
『お姉さまも一緒に居るんだね?それならより都合がいい。ちょっと見せたいものが有ってね』
部屋の外から聞こえる声の主はかえでだった。
「はい!開けます!」
誰も立ち上がろうとしない様子に業を煮やした誠は立ち上がると誠はドアを開けた。
そこには上品そうなスーツに身を包んだかえでと、いかにも『執事』という黒い燕尾服に身を包んだリンが立っていた。
「ああ、誠君か。なんだ、島田君やベルガー大尉、クラウゼ中佐までいるじゃないか。丁度このメンバーに用が有ったところなんだ。すぐに来てくれると僕としてはうれしいな」
かえでは他意の無い笑みを浮かべながら誠の整理された部屋を見回した。
「オメエはうれしいかもしれねえがアタシはうれしくないねえ」
そう言いながらかなめは渋々立ち上がった。その様子と見て他のメンバーも立ち上がりかえでに導かれるようにして三階に上がる階段を上った。
「今日の工事でこれからはお姉さまとベルガー大尉、クラウゼ中佐には少々手間をかけることになることになるからそれを伝えたいと思っていたんだ」
階段をのぼりながらかえでは笑顔でそう言った。
「手間をかけるだ?オメエの変態ぶりを毎晩聞かされることを想像するだけで今から十分アタシは憂鬱だよ……ってなんだ?あの扉は。今朝は無かったぞ、あんなもの」
かなめは皮肉を込めてそう言った。そして三階に上がったところでかなめ、カウラ、アメリアの三人の部屋の向こう側に廊下を通行止めにするために作られたと思われる高級そうな扉を見つけたかなめは驚きの声をあげた。
「ああ、防音工事にはこだわったからね。お姉さま達に迷惑をかけることは無いから安心してほしい。そしてあの扉の事かい?一応この建物は僕の私物だからね。僕だけの神聖な領域が欲しいと思って作ったんだ。迷惑だったかな?」
かえでは笑顔でかなめに向けてそう言った。
「あれじゃあアタシ達は女子トイレを使えねえじゃねえか!どうすんだ?一々オメエに許可を取れって言うのか?オーナーだからって何様のつもりだ?それともオメエが飲んでくれるのか?食ってくれるのか?ああ、オメエはそう言うの大好きだったな!このド変態のスカトロマニアが!」
変態趣味を極めているかえでに向けてかなめは嫌味たっぷりにそう言った。
「大丈夫だよ。あの扉は女性が触れても何の問題もない。それにトイレは古くて汚いから最新式のものに交換した。これからはより快適な生活を女性達には楽しんでもらいたい。僕は美しい女性には最上級のもてなしをすることを自慢にしていてね」
かえではそう言ってかなめの不機嫌そうな顔に笑いかけた。




