第182話 対オーナー会議
食事を終えるとかなめと島田は誠を寮脇に抱え込んで誠の私室に連行した。そこにはカウラとアメリアも同行した。
「おい、どうすんだよ。かえでの馬鹿は自分がオーナーになればオメエをやりたい放題だと考えてるぞ。プラトニックラブ?そんなもんアイツお得意のかっこつけだ。狙いはお前を自分の身体の快楽を満たすおもちゃにする事だ!そうに決まってる!」
かなめは部屋に入るなり誠に向ってそうがなり立てた。
「確かに生活の質は上がることは寮長としては喜ぶことなんですがね、なんでも洗濯物とか公共部分の掃除とかはあのメイドさん達がやってくれるから、今よりこの寮がマシになるのは間違いないんですけど……この寮の本分はクバルカ中佐がいつも口を酸っぱくして言ってるように『真の漢を養成する矯正施設』ですよ。俺としてもこれ以上日野少佐にデカい面されるとクバルカ中佐に申し訳が立たねえんですよ。あの人は真正の変態ですから。西園寺さん……あなたが日野少佐を変態にしたんですよね?なんとか責任取ってくれませんか?大事な俺の舎弟の神前が傷物にされるのを俺は兄貴分として黙って見ている訳にはいかないんですよ」
島田にとって頭の上がらない存在であるランにかえでの身勝手でその期待を裏切るようなことだけは避けたかった。
「でもさあ、今日のシチュー。おいしかったじゃない?いつもの寮のシチューなんて市販の安いルーに牛乳溶かしてわずかな具が浮いてるだけ。それに付け合わせはごはん。今日だってちゃんと結構おいしいフランスパンが取り放題よ。別に生活の質が良くなるなら何も問題ないじゃないの。まあ、誠ちゃんが生贄になるのは決定事項になったみたいだけど。でもかえでちゃんがあそこまで地雷女だとは私も予想してなかったわね。誠ちゃん。童貞じゃなくなる代わりに地雷女の性のおもちゃにされる気分はどう?」
アメリアは自分の生活の質が良くなることだけを考えていた。
「しかし、あのメイド達大丈夫なのか?あの異常性欲の持主の日野少佐を性的な面で支えてきた連中なのだろ?下手をすれば隊の男性隊員に手を出して風紀を乱す恐れがある。その点は西園寺。日野少佐は貴様の妹なんだから釘を刺しておけ」
カウラにとっては寮の風紀の乱れが気になるところらしかった。確かにメイド達の視線は明らかに男に飢えた痴女の目……つまりかえでと同じ目をしていたので誠もそのことが心配だった。
「アメリアさん!かえでさんは地雷女なんかじゃないです!みなさんは心配性ですね。かえでさんはあれでいて未来を見据えて行動できる立派な人です。きっとこの寮と隊の為に貴重な身銭を切って僕達を支えてくれるんですよ。感謝こそすれそんな疑いの目で見るのは良くないと思うんですけど」
誠は先日のデートで甲武の将来を憂い、それでいて現実的な対策を真面目に語るかえでを見ていたのでそう言ってなんとかかなめ達の動揺を収めようとした。
しかし、それが逆にかなめの明らかな疑いの目を生み出すことになった。




