第179話 生まれ変わった寮と新しい『オーナー』
そのまま誠達はかえでに急かされるように寮に帰った。
寮の玄関で、すでに寮生の多くが帰ってきていて、食堂に集められていることを誠達は知った。
「かえでの奴……何を考えてるんだ?アイツの事だどうせ神前を肉体的に悩殺することしか頭にねえはずだ。プラトニックラブ?そんなことあのスケベにできる訳ねえだろうが!アイツは真正の変態なんだ。そう調教したアタシが言うんだから間違いない」
相変わらずかなめは不機嫌そうにブーツを脱いだ。誠はそれを待つと同じくかなめを待っていたカウラとアメリアと一緒に寮生でごった返している食堂に入った。
そこには奇妙な光景が展開していた。宿直の隊員以外の寮生のほとんどがそこに集められ、立ち見が出るほどの盛況ぶりだった。
そしていつもは料理のトレーが配られる当たりに椅子に座ってニコニコ笑う不気味な笑みを浮かべた島田が椅子に腰かけている隣にはさらにシュールな光景が見て取れた。
メイド服の女性が三人と女性シェフが一人、黙って立ち尽くして微動だにせずに寮生たちを見つめていた。
「あ!メイドさん!かえでちゃんの屋敷のメイドさんよ!やっぱりあの娘達もこの寮に住みつくことになるのね!メイドさん付きの寮!これは画期的だわ!」
メイド好きで自分が企画制作する同人エロゲでも必ずメイドを出し、そのエロシーンを何度も描くように誠に命令してきたアメリアはすっかりご機嫌でそう叫んだ。
「かえでがこれから寮生全員の童貞をアイツ等でもらってやるから感謝しろと演説するつもりか?あの変態の考えそうなことだ」
かなめは妹への猜疑心に支配され威嚇するような目つきで島田の隣に立っているメイド達をにらみつけた。
「すまない、遅くなってしまった!じゃあ始めようか!」
遅れて入って来たかえでとリンはそのまま島田の隣に立つメイド達の前に立って寮生を見回した。
「みなさん、昨日と今日の午前中までは工事で色々と迷惑をかけてすまない。僕は住む場所にもこだわる質なんだ。だからちゃんとした僕が住むにふさわしい部屋に三階の部屋を改装した。勝手を言ったことをここに詫びよう」
男子の隊員姿のままのかえでは珍しく殊勝に男性隊員達に頭を下げた。
「実は、この寮の生活環境は決して好ましいものでは無いと以前から思っていてね。高梨参事に掛け合ってこの寮は僕が買い取った。今日からは僕がこの寮のオーナーだ。寮費なんてものを取っていたらしいが、オーナーである僕にはそんな些細な収入なんて興味がない。だからここに寮費の廃止を宣言する!」
かえでの寮費廃止の言葉に食堂中の寮生は一斉にどよめいた。貧乏人である寮生にとって格安の5千円とは言え寮費の負担が減るのはもっけの幸いである。会場はかえでへの感謝とかえでのオーナー就任を祝う雰囲気で満たされていた。




