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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『駄目人間』の青春と初めてのデート  作者: 橋本 直
第三十七章 消えた皇帝の正体

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第169話 身分と言うモノの怖さを間近に見る誠

「それでも皇女様は皇女様です!今のアンリ・ブルゴーニュの国は腐っています!私の村も農業だけで生きていけましたが、あの男が……いや、地球人の選挙が実施されてからはお金が無いと何もできないんです!私がこうして同盟機構に勤務することでそれなりのお金を仕送りすることでなんとか暮らしていけますが、村にそんな人間の居ないところはそれはひどい有様なんです!そんな臣民の苦労をなんで分かっていただけないんですか!隊長……いや、皇帝陛下もなんであんな地球かぶれの『民主主義』なんて始めたんですか!議員なんてみんな金の亡者です!苦しむのは農業しかできない私達遼州人なんですよ!遼帝国は遼州人の国です!地球人の議員や起業家なんてすぐに追放してください!」


 ラーナは茜に頭を下げたまま必死になって茜にそう訴えた。誠がラーナの横顔を見るとそこには涙が滲んでいた。彼女は自分の給料の大半を実家に仕送りしていると誠は聞いていた。それまで意味の無かった金が次第に力を持ち始めた遼帝国の闇を誠は見たような気がした。


「ラーナ。とりあえず頭を上げてください。あの選挙は多くの血を流さないために仕方のない事だったとお父様は言っています。当時、アンリ・ブルゴーニュは『南都軍閥』と言う地球人で組織された軍事組織を持っていましたわ。その背後にはアメリカが居た。そのアメリカの力を背景にあの男はお父様の王朝を倒そうとした。だから、確実に負ける『民主化』と言う名目で選挙を提案して、その見返りに『南都軍閥』を武装解除させた」


 茜は立ち上がり、ラーナの肩に手をやりながらそう言った。


「隊長の考えそうなことだな。まず餌をやってそれに食いついてきて安心したところを叩き殺す。おそらく隊長はアンリ・ブルゴーニュが餌である宰相の椅子に目が眩んで選挙を受けると言ってその通り宰相にしてやった。ただし、自分はお飾りの皇帝になるつもりは無い。そしてアンリ・ブルゴーニュを利用できるうちは宰相の椅子にとどめておく。これでしばらくはアメリカも黙っている。そして、来るべき時が来たら……」


 そこまで言うとカウラは笑みを浮かべてかなめを見つめた。


「叔父貴だぜ?アイツがそんなにいつまでも甘い顔をしている訳がねえだろ?それにさっきネットで検索して遼帝国の憲法の全文を読んだが、憲法の改定は皇帝にしかできないように書いてある。そして皇帝はいつでも好きな時に憲法を変える権限を握っている。叔父貴は法律の博士号を持っている。アンリ・ブルゴーニュがアメリカを抑える防波堤の役割を終えたら恐らく叔父貴は国に戻り憲法の停止と議会の解散、宰相の解任を宣言するな。そしてその全員を愛用の人斬り包丁『粟田口国綱』で斬る。叔父貴好みの卑怯なやり口だ。気に入らねえ出来レース。そこに嵌ったアンリ・ブルゴーニュの旦那にもご愁傷さまとしか言えねえよ」


 かなめは確信を込めてそう言った。誠は非情になった時の嵯峨の怖さを横目で見てきただけに嵯峨ならそれくらいの事はやりかねないと思って冷や汗をかいた。

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