第166話 娘の指導が必要か?
「アタシはちょっとあの性欲お化けの飼い主の所に行って来る。今日の事を報告してやる!アイツの潔癖症からしてこの状況を変えられるのはアイツしか居ねえからな。あの部屋の前を通るたびに毎日お蔦のあの時の声を聴かされるなんて願い下げだ!」
かなめはそう言うと実働部隊の詰め所とは反対側にある法術特捜の執務室に足を向けた。
「これからの事もある、私も行こう。これは風紀が乱れて隊の士気に関わることだ。確かに嵯峨警部ならなんとかできるかもしれない。なんと言っても父親を長い事経済的に締め上げていた人物だからな」
かなめに続いてカウラもその足を向けた。
「良いじゃないか、義父上の好きにさせておけば。それで元気を取り戻してくれるなら安いものだよ」
かえでは嵯峨の勤務中のエロ行為に関心が無いと言うようにそのまま機動部隊の詰め所に戻ろうとした。
「僕は西園寺さんが何をするか分からないので……」
そう言って誠はかなめの後をついて法術特捜の執務室に向った。
「おい!茜!いるか!オメエの親父をなんとかしろ!今からエロい事するから出てけって言われたんだ!あの『脳ピンク』はここを鏡都の花街と勘違いしていやがる!休憩時間帯にはどんなエロい事をしても平気だとか言ってんだ!保護者として何とかしろ!」
部屋に入るなりかなめはそう叫んで調べ物に夢中だった茜の所までずかずかと歩いて行った。
「ああ、かなめお姉さま……まあ、こうなることは十中八九予想がついていたんですけどね……その時反対しなかったのはどなたでしたっけ?清原の侯爵家の家格をあの女に下賜したのはどこの貴族様でしたっけ?いまさら私が出て行ったところで何が出来るというのかしら?」
茜は嫌味たっぷりにかなめに向けてそう言った。
「そう言うけどよう。あそこまでお蔦がスケベな女だとは思ってなかったんだ。オメエのお袋も相当スケベな女だったが、世間体だけは気にしてた。しかしお蔦にはそれがねえ。なんとかオメエの指導であの二人をどうにかしてくれねえかな……隊で変態行為にふけるのはかえでとリンだけで十分だってえの!」
かなめはあきれ果てたようにそう言って部屋を見回した。
法術特捜の捜査員は茜と彼女の唯一の部下のカルビナ・ラーナ巡査の二人。そのラーナは顔を真っ赤にして関わり合いになるのを避けるように俯いていた。
「お父様ももう大人です。しかもこの隊の隊長です。そんな事を続ければご自分の立場がどうなるか……確かに考えていない可能性が高いですわね」
茜は父との付き合いが長いだけに嵯峨の性格を知り尽くしていた。
「そうだろ?あの部屋の前を通るたびにお蔦の喘ぐ声を聴くことになると思うと頭が痛くなってくるんだ。その点、オメエは叔父貴を長年経済的ドメスティックバイオレンスで支配してきた実績がある。叔父貴もオメエには頭が上がらないはずだ。なあ、なんとかしてくれよ……」
かなめは苦笑いを浮かべながら茜にそう頼み込んだ。
「その点は大丈夫だと思うわよ。実は、ある情報を安城少佐にリークして付け加えてある条件を提示したらお父様の気を引く行動を続けていただける了承が取れましたの。そのことをお父様にお伝えしたら昼間っからお蔦さんを隊に引っ張り込むような行動は取らなくなると思いますわ……」
茜は自信ありげにかなめ達に向けてそう言った。




