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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『駄目人間』の青春と初めてのデート  作者: 橋本 直
第三十六章 突然知らされた母の秘密

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第164話 『廃帝』復活

「そしてそのカラがあの『廃帝』を復活させた。その理由は俺には分からん。あの非情な女が父親に会いたいなんて言う普通の人間だったら考え付くような理由で復活させたわけじゃ無いだろうことは推測がつくけどね。カラの記録に残っている戦い方。あれは普通の精神の持主のできる戦い方じゃない。しかもそれを好き好んでやっている。俺もランも似たような戦い方をしたことが有るがそれは上から強制されて仕方なくの事だ。ああ、まるで言い訳がましいね。確かに俺もランもそう言う意味じゃカラと何の違いも無いのかもしれない」


 嵯峨の語ったこの言葉に一同は緊張し室内の空気はどんよりと曇った。


「なんで姉さんはそんなことをしたんですか?やっぱりお父さんに会いたかったからとか……」


 誠にはそんな発想しかできなかった。そんな誠を笑うように嵯峨はタバコを一服吹かした。


「理由はわからんが、推測はつくね。武帝は当時領有権で揉めてた東モスレムのイスラム原理主義者のテロで爆殺され、遼帝国は南北に王朝が並立する分裂状態に陥った。その状況下で『法術武装隊』の解散が決まった。乱世でモノを言うのはなんと言っても力だ。その力を持つ父を利用して遼帝国をわがものにする。それがカラの狙いだったんじゃないかなあと俺は思ってる」


 嵯峨の言葉にアメリアは首をかしげた。


「でも、それならなんで今頃動き出したんですか?もう遼帝国の南北動乱は30年以上前の話ですよ。それを今更……」


 不思議がるアメリアの肩をかえでが静かに叩いた。


「カラの思っていたより父である『ハド』は簡単に利用できるような人物では無かったということだったんじゃないかな?カラとしては動乱のどさくさに紛れて自分が最高権力者に躍り出ようとしたが、『ハド』はそんなことに利用できるほど甘い男では無かった。奴は今はその時期では無く、むしろ今出て行くのは無謀だと娘を諭したんだと僕は思う。そして、ゆっくりと勢力を拡大し時を待った。そして半年前の『近藤事件』。これで『ハド』は法術が使い放題の世の中が来たと考えるようになった。そして、その間の時間をかけて自分を目覚めさせた娘を支配するようになった。力が欲しくて力を目覚めさせた人間がその力に呑み込まれる。よくある話だよ」


 かえではそう言って義父である嵯峨を見つめた。


「たぶんかえでの言うことが合ってるだろうね。『法術武装隊』のこれまでの行動は秀美さんから色々聞かされてるけど、かなり『廃帝ハド』からは酷い扱いを受けている。『廃帝ハド』にとっては自分を解放した娘であっても自分より力が劣るのであれば上手に利用すれば便利な駒程度の物でしかないのかもしれないね。『廃帝ハド』に人の心を期待するのは的外れだ。アイツはもっと非情で目的の為なら手段を選ぶような男じゃない。そして不死人である以上時を待つことに何のためらいもない。当然肉親の情なんて期待する方が間違ってる。難敵だよ、こう言う奴は。そう言う奴には人間の常識というものが通用しない。普通の考えでぶつかれば自滅するだけだ」


 そう言って嵯峨は吸い終えたタバコを灰皿に置いた。


「そして『廃帝ハド』の野望の邪魔になるすべての法術を使用するテロ組織を潰し終えた『法術武装隊』はついに俺達をその標的に決めてきた。これまでの北川と桐野の甘ちゃんコンビとはわけが違う。本気でかからないと……こっちの被害もどんだけのものになるか……」


 嵯峨は難しい表情を浮かべてそう言うと再びタバコを取り出した。

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