第160話 いつもと変わらぬ機動部隊詰め所
誠はアメリアに手を握られた反動で昨日かえでに飲まされた薬の効果がぶり返し、股間の違和感に苦しみながら着替えを済ませると機動部隊の詰め所にたどり着いた。
「なんだ、やけに時間がかかったな……さてはカウラのアレを持ち込んで更衣室で自己発電してたな……それじゃあかえでと変わらねえぞ」
冷やかして来るかなめを無視して誠は自分の席に着くと端末を起動した。
振り返ると第二小隊の島にはかえでとリン、そして昨日あの冷酷な殺人をこなして見せたアンも何一つ変わらぬ表情で座っていた。
ふとかえでと目が有った。かえでは笑顔を浮かべ立ち上がると小瓶を手に誠に歩み寄ってきた。
「昨日は僕のわがままに付き合わせてすまなかったね。誠君にはあれはまだ早かったらしい。これは解毒剤だ。これを飲めば君の興奮も収まるだろう。僕なりの詫びだと思ってくれたまえ」
かえではそう言うとラベルの無い小瓶を誠に手渡した。誠はこのムラムラから一刻も早く逃れようとすぐに栓を開け一気に中身を飲み干した。
即効性なのか、すぐに興奮は引いていき誠にいつもの気弱な青年の面影が戻ってきた。
「僕は思うんだ。愛は身体の関係だけがすべてではない。君と僕は昨日志で結ばれた。だから、これからは『プラトニック』な愛をはぐくみたいと思うんだ……だから今週からは君には『愛の手紙』を送ることを止める」
きっぱりとした口調でかえではそう言った。かえでの無修正動画だけをおかずにしていた誠にはその言葉はあまりにショックだった。
『アレをやめる?それはちょっと残念かな……でも昨日のカウラさんのも凄かったから他の二人のも……って僕は何を期待しているんだ!それとかえでさんの『プラトニックラブ』?僕も意味は知ってるけど……かえでさんがその内容を理解しているかは凄く疑問なんだけど』
誠は口には出さなかったがそんな目でかえでを見ていた。
「おう、良いじゃねえか。これからはアタシ等がオメエの性生活を支えてやる。かえでの変態プレイなんか忘れて本当にお前を望むエロスと言う奴を味わうと良い。まあ薄味のカウラの奴や、作りもののアメリアのそれとアタシの本物のエロスと……どれを選ぶかの答えは聞くまでもねえがな」
自信満々にそう言うとかなめは席を立った。煙草の箱を手にしているところから見てタバコを吸いに行くのだろう。
「遅くなった……豊川署の連中。オメエ等が犯人を皆殺しにしたことに相当キレてたぞ。『過剰防衛』だとか抜かしやがる。まったく東和の平和ボケにも困ったもんだぜ。あんだけの重武装の連中が租界の外をうろついてたのを処分してやったのに例の一つもねーんだからな。文句をいーてーのはこっちのほーだ」
かなめに入れ替わるようにして制服姿のランが機動部隊の詰め所に入ってきた。そしてその後ろには真剣な表情で長身のアメリアが続いて部屋に入ってくる。
「アメリア。オメエはデカいから一緒に立つとアタシは惨めな気持ちになるんだ。少しは離れて立て」
機動部隊長兼副隊長の大きなデスクに腰かけるとランは正面に立って自分を見下ろして来るアメリアに向けてそう言った。