第159話 眠れない夜の次の日
「神前……昨日は……私のすべてを見てくれたのか?」
出勤途上のカウラの愛車『スカイラインGTR』を運転しながらカウラは恥ずかしがりながら誠にそう尋ねてきた。誠はその言葉を聞いて恥ずかしくなって俯いた。
『カウラさんも意外とかえでさんと同じで露出狂の気が有るんじゃないか?奥の奥まで見せるって本当に見せてたぞ。あんなのかえでさんでもやらないことだぞ』
そんなことを考えながら誠は照れ笑いを浮かべた。カウラの渡した動画はかえでの激しい変態的なそれとは違い、初々しくどこまでも清らかな感じが新鮮で、結局誠は一晩中その動画を見ていて一睡もできなかった。
「誠ちゃんのこの様子を見てもまだ分からないの?いつも見慣れてるかえでちゃんとは違う誠ちゃんのツボをカウラちゃんは刺激しちゃったのよ。誠ちゃんは一睡もできずにひたすら自己発電……まあ、私はしっかりと準備をしてから作るから。ちゃんとプロのスタッフを雇って奇麗に取ってもらう予定。本当に売り物にしてもいいくらい……でも私の年だと『熟女モノ』とか言われるのよね。私は永遠の30歳!30歳は熟女なの!おかしいでしょ?あの業界!」
最初は冷静だった誠の隣に座るアメリアはそう言って誠の手を握ってきた。まだかえでの薬の効果が切れていないのか、誠はその真剣な表情に興奮を覚えてしまった。
「アメリア。オメエはかえでとリンと一緒にそっちの方に転職しろ。アタシは自分で撮る。かえでの変態プレーや恥ずかしがってばかりのカウラと違う本当のエロスを神前に見せてやる。アメリアのはどうせ金をかけただけの作りもんだ。そんなのアタシの真の美の前じゃあ敵じゃあねえんだよ!」
助手席のかなめはそう言っていやらしい笑みを浮かべていた。
「なによ、サイボーグの裸なんて見たってなんの得にもならないわよ。あんなのネットでダッチワイフの画像を見れば十分じゃないの。なんでも地球ではAIを使ってサイボーグと同じ機能のあるダッチワイフが上級国民の間で人気らしいわよ。それで金持ちの男性の未婚率が上がって問題になってるらしいくらいだから」
アメリアは同情するような口調でかなめに向けてそう言った。
「そんな無個性なAIダッチワイフとアタシを一緒にすんな!アタシは雰囲気重視!これまでこいつをアタシが何度助けたと思ってんだ?そんな状況を思い出させるいやらしい誘い言葉を並べながら一番神前を興奮させる動画を作ってやる!」
かなめはそう高らかに宣言した。
車は菱川重工豊川の工場内を抜け、『特殊な部隊』のゲートにたどり着いた。
「はい、ここからはお仕事モード。昨日の襲撃の真相をしっかりと豊川署から戻ったランちゃんに聞かないとね。私達は襲撃された被害者よ!当然、あの役立たずの傭兵を雇った雇い主の事を知る権利がある。あのちっちゃいランちゃんを徹底的に問い詰めてやりましょう!」
アメリアはそう元気よく言い放つ。カウラの車はいつも通り本部裏手の駐車場に向った。