第158話 荒事に慣れた幼女と非情な『元少年兵』
「西園寺。むやみと死体を蹴るんじゃねー!もうコイツは仏さんなんだ。死んだ敵には敬意をもってちゃんと大事にしてやれ……だからオメエは配慮が足りねーって言うんだ。それにこれはこれから押っ取り刀で駆けつける警察の証拠物件だ。下手に弄るんじゃねーぞ。後で県警から文句を言われるのはアタシなんだ。面倒ごとはこれ以上御免だ」
横柄な態度を取るかなめをランは注意するとそのまま焼け焦げたバンに乗り込み中を覗き込んでいた。
「それにしても馬鹿よね。この程度の装備と練度でうちを襲撃するだなんて。まるで使い捨ての駒じゃない。まあ、スコープで動きを見てたけど全員実戦経験ゼロの素人よ。銃を持ってもどう使っていいか分からないような動きだったし……まったくご愁傷さまとしか言えないわ。闇バイトって怖いのね」
アメリアはそう言いながら銃を構えたままの姿で最後尾のバンに向けて歩き出した。
その時、最後尾のバンの後部ドアが突然開き、男が一人飛び出して駆け出していった。
男は時々銃口を向けて来るアメリアに怯えたような表情を向けて振り返ったが、アメリアは発砲することは無かった。
だが、その男は一発の遠くからの銃声とともに倒れて動かなくなった。そのはるか向こうには少女が一人、男達と同じカラシニコフを構えて立ち尽くしていた。
「アンの馬鹿。せっかくの生存者を殺しやがった。だから元少年兵は嫌なんだ」
呆れたような調子でそう言うとかなめとカウラはそのまま倒れた男に向けて小走りで移動した。
少女に見えたのは常に女装している『男の娘』アン・ナン・パク軍曹だった。
「駄目ですよ。敵は一人も生かして返すな。それが戦場の常識でしょ?」
どうやらいつもの彼氏との情事の後で、それを邪魔されたことにかなり不機嫌そうにそう言うとアンは手にしていたガンケースに銃を仕舞った。
「アン、こいつはここの襲撃犯の唯一の生存者だ。情報は多分取れないと思うが警察に引き渡して裁判にかける。それが東和共和国のルールなんだ。分かったか?これからは敵を見かけても許可が無い限り射殺するな」
カウラは教え諭すようにアンに向けてそう言うが、アンは理解できないことを聞いているとでもいうように首をひねっているばかりだった。
そうこうしているうちにパトロールカーが数台路地を封鎖するように停車した。
「こりゃあ大事になるな。県警の偉いさんとの対応はアタシと島田が対応する。他の連中には寮に戻るように伝えろ」
ランはアメリアに向けてそう言うとそのまま嫌な顔をしながら小走りにバンに向けて近づいてくるトレンチコートを着た刑事らしき男の所へと近づいていった。
「まあ、連中は銃を撃つ余裕も無かったからな。寝床は無事。朝までしっかり寝るか……明日も勤務なんだ。神前はどうせ自己発電の続きがしてえんだろ?カウラのアレ……どんなだったか後で感想を聞かせてくれ」
かなめは冗談交じりにそう言うと銃を片手に誠達を置いて寮に向った。
カウラはうつむき加減に誠を見つめた。
「見て……くれたのか……少し恥ずかしいな……興奮したか?私の中はどうだった?開くのに苦労したんだ。しっかり奥まで見てくれていると嬉しい。ちゃんと開いて奥の奥まで見せたんだ。たぶん興奮してくれると思う」
恥ずかしがりながらそうつぶやくカウラに誠は照れ笑いを浮かべながら寮に向い、カウラの『愛の手紙』の無修正動画の肝心なところの続きを見ようと気持ちを切り替えた。