第156話 RPG!
いつもなら夜中までどこかしらの電気がついている『司法局実働部隊男子下士官寮』は完全に闇に覆われていた。
その路地に四台の黒いバンが止まった。
「おかしくないか?まだ9時だぞ……すべての電気が消えている……不自然すぎやしないか?それとも連中は仕事熱心で9時には消灯と言う寮則でもあるのか?そんな指示はあのサイトには無かったぞ」
先頭のバンを運転していた男はそうつぶやくが、慣れない銃を撃って大金がもらえると言う話に彼の理性はすでにおかしくなっていた。
「いいじゃねえか。おねんねしてるならそれだけ仕事がやりやすくなる。さっさと済ませちまおう……実銃で人が撃てるんだぜ!いいじゃねえか!眠っていて動かない敵の方が撃ちやすい」
助手席の男がドアに手をかけた時、目の前を光の線を放ちながら飛んでくる飛翔体に気が付いた。
「RPG!」
男の叫びはフロントグラスにRPG7の弾頭が命中し炸裂していく中に消えていった。運転手も、バンの前の座席に座っていた兵も弾頭の爆発に巻き込まれて血まみれになって倒れた。
「神前、見てみろ!連中いきなりRPG撃たれて慌てふためいてるぞ……いい気味だ」
草むらの中でRPGを構えていた菰田は隣でHK53を構えている誠に向けて得意げにそう言った。
「菰田先輩……こんな市街地でロケットランチャーを撃つなんて……どうかしていますよ……外れて後ろの民家にでも当たったらそれこそ始末書どころか僕達が犯罪者ですよ」
4台の火を噴くバンを見ながら誠は困った顔をして菰田を暗視ゴールぐ越しに見つめた。
「連中は犯罪者だ。俺達は警察官。しかも『殺人許可書』を持った特殊部隊の一員なんだ。そんなところに喧嘩を売る。当然そこには死が待ち構えている。当たり前の話だ」
菰田はRPGの発射筒を置くと銃をHK33に切り替え、生き残ってバンから降りて来る敵兵に向けて射撃を開始した。
しかし、敵兵は誠達が撃つまでもなくなんとか燃えさかるバンから脱出した襲撃犯たちをの頭を寮の屋上からの狙撃によって撃ち抜かれて倒れていった。
「さすが、西園寺さんとアメリアさんだ。これじゃあ僕達の出番は無いですよ」
隊の一番狙撃手のかなめは愛銃STV40で、二番狙撃手のアメリアは狙撃銃H&KMSG90で正確に敵兵を屠っていった。
バンの周りに動くものが無くなると寮からの銃撃が止んだ。
「掃討作戦だ!立ち上がれ!」
門柱の影で様子を伺っていた島田はそう言うと寮生全員にバンに近づくように命じた。
誠も立ち上がってそのままバンに銃を向けたまま歩み寄っていった。
ロケットランチャー弾頭の着弾による硝煙の匂いが道中に充満している。ようやく騒ぎに気付いた近くの住民が恐る恐る顔を出していた。
「とりあえず、僕が様子を見ます!」
そう叫んで駆けだしたのはいつもこういう時は気が回る西だった。西は先頭のバンを覗き込んだ。
「あれだけの銃撃を受けたんだ……生存者なんて居るわけないじゃないですか……本当にもう無茶苦茶なんだから」
誠はそうつぶやきながらバンを取り囲むように銃を構える先輩たちの後に続いた。