第152話 沈黙する車内ともうどうしようもない誠
「アメリア……そうだな……アタシ等にはアタシ等のやり方がある。アタシがどうかしてた。カウラはどうだ?いいぞ、オメエが神前を本気で好きなのは知ってるから。それにオメエは初めてでアタシやアメリアみたいに穢れてねえ……オメエがあの変態から神前を救ってオメエが法術師になる。それも神前の為にもオメエの為にも良いことかもしれねえから」
かなめは突然俯いてそう言うとハンドルを握るカウラに目をやった。
車はそのまま国道から高速道路のランプを進んだ。
「私は……そんなきっかけは嫌だ。それに今の神前はどうかしている。そんな時に……それと私が神前を好きだ?それは何かの思い違いだ!先ほどの言葉は気の迷いだ!そんなことは絶対ない!絶対だ!」
顔を真っ赤にして否定するカウラをアメリアは温かい視線で見守っていた。
「それじゃあ決まりね。このまま寮に戻りましょう。それより……誠ちゃん大丈夫?さっきから顔が赤いしなんだか痛そうな表情してるんだけど……」
アメリアは隣に座る誠に向けてそう言った。
誠は理性が吹き飛びそうになっているのは事実だった。そして股間がパンパンに張り詰めていてその先がズボンと擦れて痛いのも事実だった。
「大丈夫……です……きっと……たぶん……」
誠にはそう答えるのがやっとだった。
「あれよね……こういう時の為にかえでちゃんの『愛の手紙』の無修正動画を使うのよ。たぶん今晩は一睡もせずにそれを使用してもまだ足りないかも……なんなら私の部屋に来る?そこですっきりさせて……ああ、あれの効果は三日三晩続くんだったわよね。三日共相手をして……いいえ、有給取って三日共付き合ってあげてもいいわよ」
アメリアのあさっりとした言葉にかなめの怒りの視線がアメリアに向いた。
「結局オメエが独り占めしたいだけじゃねえか!さっきは良いこと言っといて結局それが狙いか!そんだったらアタシの部屋に来い!三日三晩天国を味合わせてやる!」
かなめはそう言って銃に手をやった。
「いいです……僕は女性用大人のおもちゃじゃないですから……自分の事は自分で出来ます……」
誠はうつむきながらそう言った。
『僕はこの『特殊な部隊』に居る限り一生童貞なのかもしれないな……いや、それ以下の存在。まさに『女性用大人のおもちゃ』なんだ。童貞でなくなる結果がおもちゃという現実……ついに僕は生物扱いさえされなくなったのか……』
誠の脳裏によぎるのはそんな諦めにも近い心境だった。
「そうだ、神前。今日は私の『愛の手紙』を使ってくれ。ちゃんと撮れているか自信は無いが……お前の携帯端末に送っておいた……日野でなく私で自分を慰めてくれると嬉しい。私の大事な部分を丹念に解説付きで移しておいた奴だ。男というものはあそこを見るのが大好きだという。私は『ラスト・バタリオン』だから日野の使用済みのアレよりも奇麗だと思っている。きっと神前を興奮させられる。これだけは自慢できる」
運転しながら突然そんなことを言い出したカウラに一同の視線が向いた。
「おい!カウラ!オメエそんなこと考えていたのか!うぶな顔してやることがえげつねえな!直接やらなきゃいいんだろ!今日はアタシがお前の部屋に行ってアタシのいい物を見せてやる。だからそれを見ながら自己発電しろ!それが妥協点だ」
かなめが部屋に来ると本当に何をされるのか分かったものでは無いので誠は全力で首を横に振った。
「西園寺さん。僕を何だと思ってるんですか?嫌ですよそんなの。それじゃあまるで隊長じゃないですか。それにそんな現場を島田先輩に見つかったら殺されますよ」
誠は興奮して銃を振り回すかなめをみながら力ない笑みを浮かべた。