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第141話 なすすべもなく封じ込められる地球圏

「その時代には地球圏は力を失っている事だろうな……いや、今でも遼州圏が一つになれば一部の金を持った人間達に支配された地球圏は必然的に没落の運命をたどることになるんだがね」


 かえでは誠の理解を超えたことを言い出した。


「それってどういう意味ですか?地球圏は強大ですよ。その軍事力が遼州圏の50倍くらいあることくらい僕だって知ってます。いくつもの植民惑星を抱えて、多くの植民地と軍事力を持ってる」


 軍で教えられたことをオウム返しに繰り返すだけの誠にかえでは優しい笑顔を向けた。


「軍はね、国力に支えられているんだ。植民惑星を維持するには多くの物資を輸送するための資金を必要とする。それもまた国力に酔って支えられている。その国力そのものが奪い去られる事態が起きたら……さあ、地球圏はどうなるんだろうねえ……」


 かえでのいたずらっぽい笑いに誠は誠が『特殊な部隊』に来た時にアメリアが教えてくれた東和のアナログ式量子コンピュータを使用した経済戦争の話を思い出した。


「東和共和国が地球圏の経済を麻痺させるんですか……あの『アナログ式量子コンピュータ』を使って」


 誠はつばを飲み込みながら覚悟を決めてそうつぶやいた。


「それだけでは不十分だね。現物として地球には『金』や『ダイヤモンド』と言った資産がある。しかし、これも遼州にとっては攻めどころなんだ……地球圏にとってはこの最後の砦もただの落とし穴に過ぎないんだ」


 かえでは再び真面目な調子に戻ってそう言った。


「遼帝国に埋まる『金』その量は半端ではない。遼帝国が本気になって金の採掘を開始すれば金の資産価値は鉛以下になる。ダイヤモンドもしかり、遼北は相当量のダイヤモンドを国庫に保管している。それが放出される。地球の多くの物的資産は何の価値も持たないただの炭素の結晶体に成り果てる。その事実を事前に察知した東和の企業は地球圏の資産をすべて現金化して地球に行ってきた多くの投資をすべて引き上げるだろう。そうなればどうなるか……コンピュータ上の資産であった債券や株式が何の意味もなくなり、現物として保有していた資産である金やダイヤモンドに価値が無くなった時。地球圏の今権力を握りメディアを操りネットを操作している特権階級たちはどうやってその強大な軍事力と長大に伸び切った植民惑星との物資の輸送にかかる経費を支えるつもりなんだろうねえ……」


 かえでの顔に冷たい笑みが浮かんだ。それは敵が追い詰められて死んでいくときのかなめに浮かぶ残忍な笑みに似ていて誠はかえでとかなめが姉妹なんだと改めて思った。


「誰もがお金を持たない国ばかりになる。燃料も買えない、壊れた宇宙戦も修理できない。地球圏は……地球から出られなくなりますね」


 誠にもそのことは分かった。軍事力も無い。物資を運ぼうにもその手段が動かない。そうなれば地球圏は地球から離れることは出来なくなる。


「そうだよ。地球圏は再び地球に張り付いて生きていた時代に戻ることになる。しかも、それは遼州圏の軍事力の血によるものでは無いんだ。自らが信じてきたデジタルシステムに依存する経済社会と、自分が価値があると信じてきた資産に裏切られて自業自得で訪れた世界だ。そこには血の一滴も必要としない。地球の特権階級は自分の握っていた特権をすべて放り出し、再び歴史のネジを逆に回すしかなくなる……それが遼州人の地球人がこの星で行った悪行に対する復讐が完成する時だ」


 真面目な表情を笑顔に変えながらかえではそう言った。かえでのその言葉に迷いはなかった

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