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第140話 真の強国となった甲武がもたらす遼州圏の変化

「そうなれば甲武国は真の強国となる。生活水準が上がった平民達の消費が経済を押し上げ、豊かになった甲武はその経済力でも東和を脅かす存在になる。誠君。そうなると甲武国は……僕が宰相を務める甲武国は何を目指すと思うかな?」


 かえでは真顔で誠にそう尋ねてきた。


「遼州圏統一ですか?野心家のかえでさんならそう考えそうだと思ったので」


 誠は恐れていた。この遼州圏で最も多く戦乱をまき散らしてきた国である甲武の暴走。それは戦争に違いないと誠は考えた。


「それは男性の考え方だね。力で何もかもが上手く行くと考える。しかし、歴史はそれを許したかな?そんな事なら地球はとうに統一されているよ。でも地球には多くの国がある。多くの民族がまだ併存している。あの民族浄化で地球人以外をすべて皆殺しにして来た地球人でさえ、同じくらいの力を持つ者同士の国家や民族間ではそんなことは出来なかったんだ。それを学べばそんな事をしてせっかく生まれた遼州同盟というこの星系の宝を壊してしまうのは愚の骨頂だよ。僕は女だ。そのような力任せの名誉欲に塗れた暴力に走るつもりは無い。それにそんなことをしてもいずれ甲武は行き詰まる。丁度地球圏の大国たちが今行き詰まっているのと同じように。だから、甲武はより強い結束を遼州圏に訴えかける。遼州同盟により力を与え、その権限を拡大することを提案するつもりだ。そして、地球圏からの真の独立を勝ち取ることを目指すことを宣言するつもりだよ」


 かえでの笑顔はどこまでも女性的で柔らかかった。


「地球圏は『支援』の名目であの荒れる大陸ベルルカンの失敗国家に資金を投入してきた。そして甲武の不安定さや西モスレム首長国連邦と遼北人民共和国と遼帝国三国の宗教紛争、ゲルパルト連邦共和国と外惑星連邦のアステロイドベルトでの勢力争いを理由に艦隊を派遣し、軍を駐留させてきた。しかし、連中の本当の目的は遼州圏がいつまでも不安定で国家同士が真の結びつきを強めない為に圧力をかけることに有るんだ。事実、ベルルカンの失敗国家の支援の見返りに多くのレアメタルが地球に持ち去られた。遼帝国の遅れた軍事装備を支えるためにアメリカ軍が軍を駐留させると言う見返りに表には出ない形で遼帝国の莫大な金がアメリカに流れている。僕が宰相になった暁にはこの流れをすべて遮断する。その為に遼州の紛争を甲武の強くなった国力で抑え込む。軍事力は戦争の為に使うものでは無く、圧力として政治の舞台に相手を引き出すためにのみ利用する。それが僕の考え方だ」


 そう言うかえでには決意の色がにじみ出ていた。


「でも恐らくはそうなるのは僕の代では無理だろう。でも、その傾向を見せるだけで、その目的を僕が宰相として語るようになるだけで遼州圏の方向性は変わっていく。僕が出来ることはそれだ。僕の目指すことはそれなんだ。君の協力さえあれば、僕は真っすぐにそれを目指すことが出来る。まあ、快楽至上主義者である僕をその身体で慰めてくれると僕としてはよりその理念に集中できることになるんだがね」


 誠は真面目な話をしていても必ずエロで落ちを付けなければいけない発想があるかえでを見てなににでも落ちを付けないといけないと考えているアメリアの事を思い出していた。


「そうして君の力を得た僕は遼州圏を変えていく。そして君と僕の子供の時代には遼州圏から地球圏の影響力は消えている事だろう。遼州圏は真に独立を達成できる。見せかけだけではない真の独立した遼州がそこにはあるんだ。素敵なことだと思わないかい?」


 かえではまた少女の笑顔で誠に笑いかけた。

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